解説
選択肢の吟味において、「×・△・?」を選択肢の該当箇所に付けていきます。×は「これはちゃうやろ」、△は「ちゃうかもしれん」、?は「びっみょ〜」って感じです。
問1 正答④
「鼻白む」ってイマイチピンと来ない表現ですが、選択肢と前後の文脈でなんとかしていきましょう。とりあえず、選択肢を一通り見ると「なれなれしい態度で話しかけてきたから」「邪魔するように話し出したから」といったように、全体的に男にとって気に食わないことがあったから「鼻白んだ」というような設問になっています。ここから、「鼻白む」はまぁ〜「気に食わないことがあって、フンって鼻を鳴らす感じに思う」って感じだと推測できます。
そのうえで、傍線部前後の文脈としては、男が社長から「会社をやめてまで鳥の撮影にうちこむのはちかごろ見上げた生き方だとわたしは思ったな」と言われ、「会社をやめたのは鳥のためではなかった。しかしそれを説明するのも億劫だった」と思っている形です。数回しか会ったことがない社長から、「見上げた生き方だ」と言われ、別にそれも実際に即しているわけでもないので、フンって思ったって感じでしょうか。
選択肢の吟味
①「鳥の観察と撮影についてなれなれしい態度で話しかけてきたから」が△です。男が「鼻白んだ」のは「見上げた生き方だ」と言われたことが直接のきっかけであり、「話しかけてきたから」だけではありません。
②「鳥の観察と撮影に集中している時に邪魔をするように話し出したから」が△です。ほぼ①と同じですが、「鼻白んだ」のは社長が言ってきた内容が自分に即していなかったからであり、話しかけてきたこと自体が原因ではありません。
③「退職しか理由について職場の裏事情を知っているかのように接してきたから」が△です。「職場の裏事情」のような内容は明示的ではありません。
④正答です。「見上げた生き方だ」と言われ、「いやいやそんなこと言うほど俺のこと知らんやろ、そもそも辞めたの鳥のためでもないし……」って感じですね。
⑤「自分の生活を詮索しようとしたから」が△です。結果的に社長が男の生活を詮索した形にはなっているのですが、その点に対して男が嫌がっているような記述がありません。
問2 正答②
なぜか④を選んで間違えました……。ちゃんと読んだら確かに②だなと思いました。
傍線部AとBが離れていないため、かなり短い該当箇所で判断しなければいけません。「写真集を出したい、と訪問者はいった。それは結構だ、と男は如才なく相槌をうった。」「いや、あんたの写真集を出したいといってるんだよ、わたしは」くらいが判断箇所のほぼ全てかと。この箇所に一番即しているのが②ですかね。全体的に、「読み取れる気もするけど明瞭には読み取れない要素を含んでいる選択肢は誤り」という雰囲気の設問かと。
選択肢の吟味
①「強い意志を感じ取り自分も企画に正面から向き合おうとしている」が△です。「強い意志」と言えるほどの明確な記述根拠がありません。
②正答です。「如才ない」は私も本問で初めて知りましたが、「気が利いている」といった意味のようです。「失礼にならない」となっており、適切です。
③「写真集を出す長年の願望が実現しそうだとわかり」が△です。男が写真集を出すことを「長年の願望」としていたとは読み取れません。
④微妙ですが、「意外に感じながら積極的に説明を求めている」が?かと思います。「説明してもらいたい」と言った際の男の様子がほとんど描かれていないため、②の「企画の内容を詳しく聞こうとしている」よりは余計な要素が入っているって感じです。
⑤「男は当初、企画を受け入れる返事を即座にするのをためらっていたが」が△です。「いや、あんたの写真集を出したいといってるんだよ、わたしは」というセリフから、これより前の時点では、男は「写真集」が「自分の写真集」だと思っていなかった(と社長は思った)と読み取れます。そのため、「企画を受け入れるのをためらっていた」とは言えません。
問3 正答②
これもまた「余計なことを言っていない選択肢が正答」という感じの設問ですね。解答根拠となる箇所がえれえ短いです。社長のセリフと「社長は昂奮した」という記述くらいしかないので、ここから読み取れないことを書いていない選択肢が正答になります。
選択肢の吟味
①「自然界のバランスが壊れてきていることを写真集で訴えたい社長」が?です。四十四行目に「ここへやってくる鳥たちの記録写真」という記載はあるので、「記録する」は言えそうですが、「自然界のバランスが壊れてきていることを写真集で訴えたい」はちょっと言いすぎな気がします。また、「いら立った様子」も△です。「昂奮」とは書かれていますが、昂奮が必ずしもいら立ちであるとは言えません。社長のこの昂奮がいら立ちであると断定するには根拠が足りない印象です。
②正答です。とても無難な選択肢です。「昂奮」は「冷静ではいられない様子」と言い換えられています。
③「鳥の生態系を保護する決意をした社長」が△です。写真集で鳥と干潟の様子を記録しようとはしていますが、「鳥の生態系を保護する」という意図は読み取れません。
④「写真集の企画に賛同してもらう機会を得たことに、興奮を抑えられないという様子」が△です。社長が興奮しているのは「だれも鳥の世界でおこっている異変に気づかない」という直前のセリフと密接に関わっていると思われ、写真集の企画に賛同してもらう機会を得たという点にあるわけではなさそうです。
⑤「鳥に異変が起こっていることに焦り、困惑した思いを抱えている様子」が△です。傍線部までの記述から、「昂奮」という語を焦りや困惑として判断することが難しく、正答である②の「冷静でいられない」に対して部が悪い選択肢です。
問4 正答⑤
「どのように変化したか」を問う設問なので、変化の前と後でそれぞれどうだったかの両方が適切である必要があります。「前」の説明が適切そうな感じであっても、「後」があんまりであれば適切ではない点に気をつけていきましょう。
変化の「前」は社長と話している当時の男の認識で、変化の「後」は今というか、写真集の格好ができなくなった現在の男の心境です。「芝居気たっぷりのせりふ」「にがにがしく」の二点をどう解釈するかで各選択肢は分かれる気がしますので、選択肢ごとに見ていきましょう。
選択肢の吟味
①「自分の価値観を見せつけているだけだったと捉え直し」が△です。「芝居気たっぷり」という形容から読み取るにはやや正答の⑤に比べてズレています。
②「他人の人生に関わる場面でも自分の善意に酔う自己顕示的なふるまいだったと捉え直し」が△です。写真集が出るか出ないかが、男の「人生に関わる」とまでは言えません。
③「思ってもいない出まかせを言っているだけだったと捉え直し」が△です。社長と男が初めて出会った日の時点で、写真集の話が「出まかせ」だったかは不明です(その後二回は打ち合わせをしているので、当初の社長は本気で写真集を出したいと思っていたと推察する方が自然です)。
④「会社の厳しい状況を隠す演技にすぎなかったと捉え直し」が△です。社長の言動が「会社の厳しい状況を隠す」ものであったかは不明です。後で結果的に会社は厳しい状況なのですが、③と同じく当初の時点で社長がそれを隠すために「芝居気たっぷり」の言動をしたということにはなりません。
⑤正答です。「芝居気たっぷり」は「空疎でわざとらしい言動」とされ、「にがにがしく」は「社長の提案に同調してしまったことを不愉快に感じている」としています。前半の「社長の姿勢に引き込まれた」も、五十九行目の「男は社長が鳥に化身したのではないかと一瞬いぶかった」から、社長の様子に引き込まれている様子が読み取れます。
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問5 正答③
「自分は群から脱落した鳥の一羽かもしれぬ」「しかしまだ飛ぶことはできる」を、男の状況と本文中に出てくる鳥の描かれ方から考えます。男は「百日の休暇」として、仕事を辞めて一人で鳥を観察する生活を送っていました。その間に、水辺に墜落した鳥を目にしたり、傷ついた渡り鳥を保護したりしています。自分は墜落した鳥のように、群れ(社会生活)から離脱した鳥のようなものであるが、渡り鳥が途中で翼を休めたり、保護した鳥が回復するように、自分もこの休暇で少しずつ状態が良くなり、再び社会生活に戻ることになることを予感している……という感じでしょうか。
選択肢の吟味
①「自分を奮い立たせて、とどまることを知らない渡り鳥のように新しい仕事のために出発しようとしている」が△です。「新しい生活」とはありますが、それが必ずしも「仕事」に限定されるかは微妙です。また、「飛ぶことはできる」は「飛び立ちたい」「飛び立とう」とは違い、そこまで積極的には読み取れません。「まぁ〜社会、帰れるか」ってくらいじゃないですかね?笑
②「出発期限の間際まで休暇を取ることに後ろめたさを感じながらも」が△です。もしかすると「後ろめたさ」はあるのかもしれませんが、それが「ギリギリまで休むこと」からくるとは読み取れません。
③正答です。「挫折感」は少し言いすぎな気もしましたが、「群から脱落」を挫折と結びつけるのはまぁそこまで無理もないかなと。
④「社会で評価される機会を奪われたことに喪失感を覚えながら」が△です。男にとっての写真集は、出せるなら嬉しいだろうがそのために写真を撮っていたものでもなく、そこまで写真集に強い思いを持っていたとは読み取れません。
⑤「他人から離れて孤独に生きることにむなしさを覚えながらも、やはり一人で生きる道を求めなければならないと自分に言い聞かせ」が△です。孤独であることに男がむなしさを感じているとは読み取りづらく、併せて「やはり一人で生きる道を求めなければならない」も根拠薄弱です。
問6(i) 正答④
落ち着いて時間軸を捉えていければ大丈夫かと。「十一月一日」は男の回想の中の時間軸(社長から声をかけられた日)であることに気をつけましょう。十四行目の「その日、ここを訪れたのはヒレアシシギではなかった。(中略)その男が近づくのを知らなかった」から、十一月一日に社長が河口にやってきたことがわかります。
選択肢の吟味
①「1行目『男は空を見あげた』から61行目『生きることになるんだよね』までで社長との関わりが始まった十一月一日の場面について叙述され」が×です。十一月一日に場面が映るのは概ね十五行目からで、明瞭な切れ目は微妙ですが、十七行目の社長のセリフ「何か見えるかね」以降は少なくとも確実に十一月一日ですね。
②全体的に誤りです。冒頭の時間は十一月一日ではないし、冒頭の時間に戻るのも六十八行目ではなく六十三行目です(六十五行目の段落のみ、再び回想的なので時間が少し戻るとは言えるかもしれません)。
③「63行目『男はあの日』で十一月一日に戻る」が×です。男の「今」と言える冒頭の時間軸は十一月一日ではありません。
④正答です。十一月一日に時間が移るきっかけとして、「1st. Nov. という日付のページ」を使っています。
問6(ii) 正答⑤
全体的な設問です。まぁ〜そうなんじゃねって感じの選択肢を選び、そうじゃないんじゃねって箇所を外していくしかないですね……。
選択肢の吟味
①「人間の本質を受け入れていった」が△です。あくまで全体的に男の範囲でしか描かれておらず、「人間の本質」とまで言えることはありません。
②「男が受動的な考え方に陥って、周囲の状況に埋もれていった」が△です。特に最後の方は、男の積極的な意図性が感じられるので、「埋もれていった」とは言えないと思います。
③「男がこれまでの生き方を悔い、自分が抱える執着を断ち切った」が△です。これまでの生き方の後悔」「執着を断ち切る」というほど、強い心情変化が男にあったとはなかなか読み取れません。全体的に落ち着いてる感じです。
④「自然と人間の関係を再認識したことが描かれている」が△です。自然は多少テーマになっていますが、男を通して「自然と人間の関係」を積極的に読ませるような描かれ方にはなっていません。
⑤正答です。「冷静に捉え直した」がちょうどいい塩梅かと思います。
問7(i) 正答④
「潮流が変わる」「鳥も翼を休める」は、文字通り男が目にする自然の様子を描くとともに、「男を取り巻く状況が変わる」「男が休暇を取る」のように、男の様子も比喩的に表しています。これに合うのは④で、それ以外は相対的に不適です。
問7(ii) 正答③
なんとも言えない設問ですね。笑 積極的に根拠を指摘することも難しいので、消去法で解くより他ない設問かと思います。
選択肢の吟味
①「Rさんの文章は(中略)、Qさんに比べて登場人物の心情を重視した読み方である」が△です。Rさんの文章の結論に近いのは「自然環境の問題についても思いを寄せることになる」なので、「登場人物の心情を重視した」とは言い難いです。
②「Rさんの文章は虚構世界と現実世界の対比で捉えることで文学の社会性を示していて」が△です。あくまで文章中から「自然環境の問題についても思いを寄せる」ことができるということであり、「現実世界との対比」とは言えません。
③正答です。「ともに根拠を明確にした読み方である」という共通点の指摘もかなり抽象度が高い共通点になっていて、否定することが難しくなっています。
④「Rさんの文章は自然と人間を描いた作品の価値について一つの方向を示して社会的に結論づけている」が△です。Rさんも、「この作品を読むと読者は自然環境にも思いを寄せることになる」と言っているだけで、「自然と人間を描いた作品の価値について方向性を示す」という大きな話にまではなりません。
読解後のつれづれ
全体的に盛り上がるという感じでもなく、落ち着いた文章が続いていました。最後のQさん・Rさんの文章に関する設問は、本文に対する文章に対する設問なので、少し頭の働かせ方を変えないといけない点には注意してください。
また、文章中の時間軸に関する設問もありました。文章での時間の移り変わりの表現はあまり明示的でないこともあり、さまざまな文章を読み慣れていない人にとっては難しい設問になるかもしれません。こればっかりは訓練です。間違えた人は時間の移り変わりを意識して、もう一本文を度読み直してもいいかもしれません! それでは、お疲れ様でした!



