解説
選択肢の吟味において、「×・△・?」を選択肢の該当箇所に付けていきます。×は「これはちゃうやろ」、△は「ちゃうかもしれん」、?は「びっみょ〜」って感じです。
問1
(ア) 正答①
「不能○」は「○する(こと)あたはず」で「○○できない」となります。超基本的な句形なので覚えておきましょう! 港に入ってきた魚が、潮が引くことで海から分断された潮だまりになって、そこから出ることができなくなったということですね。冒頭だけでは「海魚」がそんなにバカデカいとは思ってませんでしたが、梯子をかけて登って身を大量に切り出したあたりから「もしかしてこの魚ってバカデカい?」と思い始めました(実際そう)。
(イ) 正答④
訓読したら「此れに過ぐる莫きかな」とかでしょうか。直訳すると「これを超えることはないなぁ」です。文脈としても、「思うに、魚の大きいことで言えば、これ以上のものはいないだろう」のようになります。
(ウ) 正答⑤
訓読は「是を以て(これをもって)」で直訳は「こういうわけで」です。禿翁は大きな海魚のように雄大であることを欲しましたが、竜のように徳を兼ね備えようとはしなかったため、「これが原因で」(海魚が多くの人に身を切り出されたように)周囲から害を加えられたことになった、ということです。
問2 正答⑤
「豪傑の士も亦た是の魚の若き(ごとき)のみかな」ですかね。「豪傑の士」はちょうどこのバカデカ海魚のようなものである、という感じです。海魚は港に入り込んで、潮が引いたために港湾から出られなくなっていたところを、大勢の人が梯子をかけて背中からその身を大量に切り出したにも関わらず、ダメージを負うこともなく、しばらく経って潮が満ちれば悠然と尾を振って去っていきました。この様子を適切に読み替えているのが正答になります。
選択肢の吟味
①「自己の抱く理想を断固として貫くことができる人物」が△です。海魚のエピソードからそこまでの内容が読みとれません。
②「そうした不遇に奮起して研鑽を積む人物」が△です。これも同上で、海魚がそのような感じになっているとは言えません。
③「それに臆することなく堂々と反論できる人物」が△です。海魚も悠然と去っていっただけで、別に反論とかしてません。
④「周囲の人々から奇異の目で見られることもあるが」が△です。海魚が「奇異の目で見られる」とは描かれていません。また、「毅然とした態度によって人々を徐々に心服させる人物」も?です。確かに海魚の悠然とした姿には心服してもおかしくないかもしれませんが、そこまでは書かれていません。
⑤正答です。海魚の様子を順々に読み替えられています。
問3 正答④
意訳的なのでかなり難しめかな〜と思いました。私も一回①を選んだのですが、そうなると後との文意が繋がらないので戻ってきて考え直した結果正答でした。
直前の一文は、「しかし、(禿翁は)ただ豪傑として大きな存在になることができることを知っていただけであって、聖賢として『大きくならないことができる』ということを知らなかった」というような感じです。そのうえで、それに続く傍線部Bの直訳は「このことを竜に見ないのだなあ」です。含意としては、「このこと(=聖賢は大きくならないこともできるということ)は竜のあり方に見て取れるのに、禿翁は竜にそれを見取らないのだなあ」という感じで、選択肢④の内容を含む形で解釈できます。
ここで言う「大為る」は「物理的に大きくなること」という意味もやや含むかもしれませんが、どちらかといえば「他者を威圧できるような、存在感的な大きさ」みたいなものを指しているように思います。聖賢はそのような(雄大な海魚のような)豪傑的巨大さではなく、竜に見て取れるような変幻自在な柔軟さにこそ、その在り方が見て取れるということかと思います。
選択肢の吟味
全体的に意訳的なので逐語訳ではなく、前後の解釈から解く設問な気がしており、あまりそれぞれの選択肢の合う合わないではない気がしますが、直訳すると「これを竜に見ないなあ」なので①に近い気がします(そのため私も間違えかけました)。ただ、文脈に合わないだけでなく、「できる」の要素が傍線部B内に含まれていないので、その点でも不適な選択肢かと思います。それ以外の選択肢は直訳からも外れますし、文脈としても合いません。
問4 正答①
間違えました! ①を選びましたが、これは問3を考え直した後に問4も考え直さなかったためです。聖賢の在り方は竜に見て取れるわけですが、ここの文脈として、喩え先の竜の次元の話をしているのか、聖賢の話をしているのかを読み違えたままにしてしまったということです。
傍線部Bの後、「其の化するに及ぶ、時に人と為り〜」は、「竜が変化する対象は、人や虫、漂う葉や素早く動く梭にまで及ぶ」ということを述べており、そこに続くため二重傍線部Ⅰの「彼」は竜として捉えられます。この文では、「彼(=竜)が大小形状さまざまなものに変化するのには理由がある一方で、人(平凡な人々)は取るに足らない大小形状に理由を求める」という対比になっていると捉えられます。「人」が着目するのが「区区たる(=取るに足らない)」ことである点から、対比対象を推測することができます。
選択肢の吟味
上記の解説で尽くされたとして、割愛させていただきます。
問5 正答③
④選んで間違えちゃったんですが、これは確かに③だなぁと思いました。というのも、文法的に①と③に絞られるためです。
「豈に」は疑問〜反語〜詠嘆を意味として持ちますが、どちらにせよ直後の字句に係ります。つまり、「豈に」は「知る」に係るということで、「豈に〜知らんや」の形を取りそうな気がするということです。
そのうえで、今回の「豈に」は詠嘆っぽい感じで、「これは、竜が竜である理由をなんとも理解していないことよ」のようになります。問4を正答していればわかりやすいのですが、平凡な人々が瑣末な大小形状に拘泥することに対して、傍線部では「竜の本質をなんもわかっとらん」と言っているような箇所です。
選択肢の吟味
②④⑤は「知らんや」の形になっていないので文法的に不適です。
①はちょっと文意がよく分かりません。「是れ豈に竜の之れ竜の為にする」がマジでよく分かりません。「これ」と「竜の」が続き過ぎです。笑
問6 正答②
直訳すると、「禿翁に、魚にならせないで竜にならせていれば、世間の人々はどうしてこれ(=禿翁)に危害を加えることがあっただろうか、いやない」です。「使ム」の使役形と、送り仮名での仮定、「安クンゾ」の「どうして〜だろうか(いやない)」が取れていれば、割とすんなり文法的にも解ける気がします。
禿翁は課題文前半にもあった通り、海魚に喩えられる豪傑でしたが、竜のような聖賢としての性質は持ち合わせていませんでした。筆者である賀貽孫は禿翁がそのような竜としての性質を持っていれば、海魚のエピソードにあるように、周囲の人々から危害を加えられることはなかったはずだとまとめている感じです。
選択肢の吟味
上記の文脈(禿翁は大魚ではあったが竜ではなかった)を踏まえての仮定として適切なのは②と⑤のみです。
⑤は「危害を加えたはずだ」が×で、「安クンゾ」を適切に解釈できていません。
問7 正答①
二段落目二文目の「然るに徒だ豪傑の能く大為るを知るのみにして、聖賢の能く大為らざるを知らざるなり」がほぼ全てです。選択肢から読み取れますが、ここでは「竜」のような在り方を「一定したあり方にとらわれない自在な境地」としています。これは、課題文において竜がさまざまな姿に変化し得る存在として説明されていたことからわかります。禿翁は、海魚のような雄大さを知っているだけであり、聖賢としての(竜のような)自在な在り方を知らなかった……ということになります。
選択肢の吟味
①正答です。上記の通りです。
②「一定したあり方にとらわれない自在な境地を目指したが」が△です。「自在なあり方を知らなかった」なので、「目指した」とは言えません(目的地のことを知っていないと目指せないはずです)。
③「雄大さを体現して生きることはできず、一定したあり方にとらわれない自在な境地を新たに模索した」が×です。禿翁は「豪傑」ではあったので、「雄大さ」は体現していたと言えます。
④「一定したあり方にとらわれない自在な境地を目指し」が△です。②と同様、知らないと目指せないという話です。
⑤「一定したあり方にとらわれない自在な生き方にもあこがれていたが、どちらの境地にも到達できなかった」が×です。あこがれもしていませんし、雄大さの境地には到達していると言えるかと思います。
読解後のつれづれ
比喩が特徴的な課題文でした。「海魚」と「竜」では、今回は竜が上位互換的な語られ方をしてはいましたが、バカデカ魚もそれなりにすごい存在かと思います。背中で剥ぎ取りしても大丈夫なラオシャンロンみたいなものですよね(唐突なモンハンの話)。各喩え先が持つ性質を押さえていくことで、聖賢や豪傑(禿翁)がどのような人物かということを把握していくことができます。
にしても、「禿翁」って現代語で言えば割とダイレクトに悪口な気がするんですが、当時はそうでもないんですかね……笑 知らんけど……というところで、お疲れ様でした!



