京都大学 2023[三]解答例と解説

目次

総評

ところどころ理解が難しいところもありましたが、全体としては難しくない大問なのではないかと思いました。課題文全体を全て踏まえるというよりは、傍線部の前後をしっかり訳し下ろしていければ問題ない印象です。厄介な感じの和歌もなく、最後の漢詩もそんなに難しくはありません。文系の皆さんであれば、手堅く得点したい大問かと思います!

解答例と解説

問一(1)

それにしてもこの眼前の雪景色を共に楽しんでくれる心を持つような友がここにいて欲しいと、人恋しく思ったその時に

逐語訳でほとんど大丈夫かと思いますが、「心ある」だけ「この雪景色を共に楽しんでくれる心を持つ」と補っています。

「もがな」は願望の終助詞で、「〜てほしい」と訳します。また、「ゆかし」は通常「見たい・聞きたい・知りたい」ですが、「人ゆかし」とされているので「人恋しい」とまとめて訳しています。

部分点

〈それにしても〉〈この眼前の雪景色を共に楽しんでくれる心を持つような〉〈友がここにいて欲しい〉と、〈人恋しく思った〉〈その時に〉

細かく分割すればもうちょい分けられると思いますが、大体こんなもんでしょう。細かいところで少し、訳し漏らしていないかチェックしていただきたいのは次の三点です。

①訳出に現れなくても良いですが、「心あらん」の「ん(む)」は、体言の上にいるので婉曲の助動詞の「む」です。明示的に訳すとすれば「〜ような」ですが、わざわざ訳出しなくても問題はありません。

②「思ひし」の「し」は(直接)過去の助動詞「き」の連体形です。「思った」と訳出しましょう。

③「折ふし」は「その時」「ちょうどそのタイミングで」といった意味合いなので、パッと訳出できた方がよいです。覚えときましょう。

問一(3)

私は足腰も衰えてしまったため、歩き回ることもできないが、来客を饗応しようとする心だけは、来客の酒肴を求めて歩き回るのに劣ることはないでしょうよ、なぁ皆様。

優しいことに、和歌に続く翁のセリフの中で、和歌の大意が説明されています。この箇所を参考にしながら、和歌の順番に訳していけば大丈夫です。

「あるじする」は、「家主として来客をもてなす」という意味合いになります。記述に役立つ言葉ですので、これを機に「饗応する」という訳語を覚えておきましょう。

全体的に、「来客をもてなす心だけは、急いで歩き回るのに劣らないよ」という意味ですが、傍線部後に触れられている「足たち侍らねば〜心ばかりはそれにもおとり申し候ふまじ」から「足腰も衰えてしまったので」といった前提を補って訳すのが良いかと思います。

「こゆるぎの」という枕詞ですが、訳出には反映しなくて良いかと思います。掛詞は情景と心情の両側面を訳出することが原則になりますが、枕詞は音を整えつつ続く言葉を導出するだけなので、似たような印象は持ちますが訳出への反映の仕方は異なります。

部分点

〈私は足腰も衰えてしまったため、歩き回ることもできないが〉、〈来客を饗応しようとする心だけは〉、〈来客の酒肴を求めて歩き回る〉のに〈劣ることはないでしょうよ〉、〈なぁ皆様〉。

「いそぎありく」も、直後に「御為に肴をもとめてありく」とありますので、「酒の肴を求めて歩き回る」としています。「酒肴(しゅこう)」という言葉は私も初めて使いましたが、覚えておいていい気がします。

「おとらめや君」は最初わかんなかったのですが、後続する翁のセリフから「おとら/め/や/君」なのだと理解できました。ここの「や」は終助詞(もしくは間投助詞)の「や」で、詠嘆や呼びかけを表しています(疑問・反語の係助詞の「や」ではありません!)。となると、「や」は文末にくっついているだけで、「め」が文法上として文末になります。で、「め」は推量の助動詞「む」の已然形ですが、多分「ばかり」と擬似的な係り結びが起こっている気がします。通常、文末を已然形にする係り結びは「こそ」ですが、「こそ」の意味は取りたてつつの強意です。意味合いとして「ばかり」もかなり近く、この和歌の中では「ばかり〜已然形」で、翁が和歌全体として気持ちを込めて詠みあげていることを感じることができます。まぁ結局のところ「め」は推量の「む」なので、「〜だろう」と訳しましょう。

「君」は「主君」のような意味合いですが、この場では翁が来客たちに呼びかけているものとして、「皆様」とするのが良いかと思いました。

問二

兼好が、雪の朝に人に手紙を送った際、用件のみで雪のことに触れなかったのを咎められたこと踏まえ、今回届いた手紙においても送り主はこのことに気をつけて言ってきているであろうところ、こちらから雪についての返事がなければ、恨みがましく思うのではないかという意味。

傍線部を直訳すると「これは、あちらよりこのように気をつけて言ってきたのを、こちらより返事がなければ、恨むだろうか」という具合です。これに、兼好の挿話を反映していきましょう。

兼好の挿話は、「かの兼好が、〜口惜しきことといひこせし事(あの兼好が、雪がとても風情良く降った朝に、人のところに伝えることがあって手紙を送るに際して、雪のことを何も言わなかったところ、この雪はどう見ているかと一言書かないのかと言って、残念なことだと返事が来たこと)」です。これを翁はふと思い出して、相手もこのことに気をつけているのだろうと思った感じですね。この内容と、逐語訳の内容をがっちゃんして解答を作ります。

部分点

〈兼好が、雪の朝に人に手紙を送った際〉、〈用件のみで雪のことに触れなかった〉のを〈咎められたこと〉踏まえ、〈今回届いた手紙においても送り主はこのことに気をつけて言ってきているであろう〉ところ、〈こちらから雪についての返事がなければ〉、〈恨みがましく思うのではないか〉という意味。

「口惜しき事といひこせし」を「咎められた」としていますが、「残念なことだと言ってきた」などと直訳調でもまぁ大丈夫だとは思います。

「うらみやせん」は「恨むだろうか」ですが、そこまでキツい物言いではない気がしたので、「恨みがましく思うのではないか」と少しマイルドにしています。

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問三

来客たちに漢詩を求められ、昔の翁は風情に触れる度に漢詩を作っていたものの、長らく詠まずに歳をとってしまい、もうすらすらと詠み出すことはできないが、今回の来客はとても心に深く残るものであるため、どうにか詠み申し上げてみよう、という意味。

設問指示に「この考えに至る経緯を含めて」とあるので、少し前の衆客のセリフあたりから踏まえていきましょう。衆客の「けふの雪には、翁のから歌なくてやはあるべき」は、「今日の風情ある雪には、翁の漢詩がなくていいはずがない(絶対に必要だ、詠んでほしい)」という意味合いです。それに対して翁の答えを訳していくと、「いやいや、昔は風情ある雪月花に見えれば、すぐに詩なども思いつきましたが、今は年老いてその心もございません。詩も長い間作っていないので、口も動かず言い出すべきこともわかりません。しかしながら、今日のご来訪が忘れがたくございますままに、どうにかして申し上げてみましょう」という感じになります。ここまでの内容を一通りまとめると良いかと思いますので、まぁ〜スタンダードな読解問題でしょうか……。

部分点

〈来客たちに漢詩を求められ〉、〈昔の翁は風情に触れる度に漢詩を作っていた〉ものの、〈長らく詠まずに歳をとってしまい、もうすらすらと詠み出すことはできない〉が、〈今回の来客はとても心に深く残るものである〉ため、〈どうにか詠み申し上げてみよう〉、という意味。

厳密な字数制限がないのをいいことに、ちょっと長くなってしまっていますね。「昔の翁は風情に触れる度に漢詩を作っていた」は優先度が最も低いと思います。「長らく詠まずに歳をとってしまい、もうすらすらと詠み出すことはできない」も、「もうすらすらと詠み出すことはできない」の箇所を含めるのは丁寧すぎるかもしれません。

細かいところを言えば、「から歌」の「から」は「唐」であり「中国」の意味です。「翁のから歌なくてやはあるべき」も「やは」が入っていますので、反語として捉えましょう。「翁の漢詩がなくてよいだろうか、いやそんなはずがない」です。また、「いかさまに」は「どのようであっても」→「なんとかして」という感じです。

問四

私は歳をとってしまい、もう戴安道になぞらえることも恥ずかしい限りだが、雪の風情を共に愛でるため今日この場に来てくれた客人たちは、皆まさに王子猷のような風流心の持ち主である、という意味。

戴安道と王子猷の説話は割と有名なお話なので聞いたことがある人もいるかもしれません(知らなくても説明されているので解答には影響ありません)。

傍線部を訓読すると「吾老いて安道に愧づ、来客皆子猷」で、概ねの直訳は「私は年老いてしまい、戴安道にしては恥ずかしいが、来客はみな王子猷である」となります。今回の話全体として、趣深い雪の日を愛でるために、わざわざ客人たちが来訪してくれたことは、雪の月夜を愛でるために王子猷が戴安道を訪ねたことと重なります。途中で述べられているように、翁は足腰も弱って歩き回れないほど年老いていますので、自分を戴安道と並べるのは恥ずかしいが、今回の来客を王子猷に喩え、称揚していると捉えられます。

部分点

〈私は歳をとってしまい〉、〈もう戴安道になぞらえることも恥ずかしい限り〉だが、〈雪の風情を共に愛でるため今日この場に来てくれた客人たち〉は、〈皆まさに王子猷のような風流心の持ち主である〉、という意味。

客人たちが王子猷になぞらえられる理由は明確にしておいた方が良い気がします(客人たちが王子猷と同じように、風情を共有するためにわざわざ来訪してくれたという点)。それ以外は漢文の解釈がちゃんとできていれば、そんなに問題ないはずです。

読解後のつれづれ

ところどころ読み取りづらいところもありましたが、何度か読んでいけば注釈や設問も手伝って、ほぼほぼ理解し切れるのではないでしょうか。的確に文法事項がふくまれるかしのが設問になっている印象でした。理解が及ばなかったところがあった人は、現代語訳と照らして品詞分解してみてくださいね。

戴安道と王子猷みたいな関係の友達がいるといいですね。私も雪を眺めてる時に友達来てほし〜。でもほっといても王子猷は来てくれないと思うので、私が王子猷になればいいのか……。誰か戴安道になってください。

そんなことばっか言ってないで。今回もお疲れ様でした!

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