解説
選択肢の吟味において、「×・△・?」を選択肢の該当箇所に付けていきます。×は「これはちゃうやろ」、△は「ちゃうかもしれん」、?は「びっみょ〜」って感じです。
問1
(ア) 正答③
「いづくにか」は「どこに〜だろうか」で、疑問または反語を表します。傍線部直前の「思ひ寄るまじきものの隅々などまで尋ね求めたてまつるに」は、「(女君が居るだろうとは)思いつかないであろうところの隅々に至るまで探し求め差し上げても」という意味合いですので、ここでは反語で「どこにもいらっしゃらない」となります。
(イ) 正答③
「都がちに」は「都の方にばかり」という感じで、おそらく現代語の「〇〇しがち」に近い意味合いですね。「あくがる」は「ふらふらと出歩く」のようなイメージです。直前の文脈として注5も併せて考えると、「都にいる女性のことを念入りに扱って、ここ(女君のいる宇治)には寄り付かずに、都にばかり出かけていた」です。
(ウ) 正答①
第三段落では、いなくなってしまった女君のことを(女君の痕跡から)恋しく思って、権中納言(殿)が人の目を気にすることができないほど乱れてある様子が描かれています。注7の「足摺り」は「幼児が足を動かして激しく泣く時のようなしぐさ」であり、「足摺りといふらむこともしつべく、泣きてもあまる心地して沈み臥したまひぬる御けしき」は、「(幼児が泣き喚く)足摺りと言えるようなこともしてしまいそうなほどで、泣いても足りないくらいの気持ちで落ち込み伏せっていらっしゃるご様子」です。傍線部はこの箇所に先立つ「(他の)人がをこがましと見て思うであろうことも想像できないで」という箇所ですので、幼児のような行動を「おろかしい」と周りの人が思うであろうことを気にして遠慮することすらできないほど、権中納言の悲しみが強いものであるとわかります(そんなに悲しむくらいなんやったらちゃんと宇治にも通えばよかったのにね)。現代語の「おこがましい」にも比較的近い意味です。
問2 正答③
適当でないものを選ぶ設問ですね。前半が文法に関する言及で、後半が内容に関する説明になっています。前半箇所で誤りがあればわかりやすいのですが、今回は正答である③以外は特に誤っていないので、文法知識で差がつくというわけでもないかもしれません。ただ、各助動詞の意味を忘れてしまっていたなどがあれば、これも機にしっかり復習しておきましょう。
正答である(誤っている)③について、ここでの「あはれ」は感動詞的に使われており、「ああ」のように訳します。おそらく直後の「かかる人を見捨てたまひけむ心強さこそと思へど」に繋がっていて、権中納言が、若君をおいて宇治を離れた女君の覚悟の強さを感じ入っている様子です。女君は、別れがたいであろう若君とお別れしてまでも宇治を去りました。それに対して、「ああ、この人(若君)を見捨ててしまいなさるほどの意志の強さがあったのだな……」という感じです。よって③は全体的に誤りとなります。
ちなみに、この箇所は課題分上は地の文になっているので、権中納言の直接話法ではなく筆者からしての間接話法のようになっている気がします。そのため、「あはれ(ああ)」と言っているのも権中納言その人自身というよりかは、権中納言の様子を描写している筆者が権中納言の言葉を代弁しているという構図に近いように思われます。
選択肢の吟味
③以外は合っているので、割愛です!
問3 正答②
波線部a以降の乳母のセリフを解釈できれば大丈夫です。乳母は女君が兄弟に会う場所として自室を提供しており、捉えようによっては女君の脱出を助けたかのような感じになってしまうので、権中納言にはそれを隠して言っています。ただし、冒頭で「帰りたまはねばあやしと思ふに」と書かれているように、乳母も女君の脱出については知らなかった様子です。
選択肢の吟味
①「若君の世話もできないほど思い沈んでいる様子」が×です。「一ところおはしますほどは、若君を目も放たず見たてまつらせたまひつつ(一緒にいらっしゃる時は、若君のことを目を離さないでお世話し申し上げなさりながら)」とあります。
②正答です。「うち忍び泣き明かし暮らさせたまひしをば、世の中に恨めしくもおぼつかなくも思ひきこえさせたまふ人やおはしますらむなどこそ(隠れて我慢して泣き暮らしなさっている様子は、この世に不満にも気がかりにも思い申し上げなさる人がいらっしゃるご様子なのだろうかなど)」とあり、これはもちろん権中納言のことのように読み取れます。
③全体的に△です。記述が重なりそうな箇所として、「心苦しく見たてまつりはべりしか」というところもありますが、ここは女君が(権中納言のことを恨めしくも気がかりにも)思い煩っている様子について、乳母が「心苦しく見申し上げておりました」と述べている箇所であり、女君が心を痛めている様子ではありません。
④全体的に×です。乳母のセリフの冒頭に「さる御けしきもえ見えはべらず。見たてまつらせたまふほどはさりげなくて(そのようなご様子は見えませんでした。拝見するご様子はいつも通りで)」とありますので、宇治から去ろうとする強い意志・ためらいのない様子とは言えません。ただ、この箇所はちょっとだけ乳母の誤魔化しが含まっているかもしれませんが。
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問4 正答③
傍線部の少し前から見ていき、敬語がどのように当てはめられているかが手掛かりになります。「泣きてもあまる心地して沈み臥したまひぬる御けしき」には「たまふ(〜なさる)」や「御けしき(ご様子)」といった尊敬語が用いられていますので、これは主語が敬意の対象(権中納言)です。
一方で「見たてまつり嘆かる」は「たてまつる(〜し申し上げる)」という謙譲語はありますが、尊敬語はありません。よって、敬意の対象ではない主語が、敬意の対象となる目的語に対して「見申し上げて嘆かれる」という様子を描写しているとわかります。よって、「(女君が居なくなってしまい)泣いても足りない気持ちで沈み伏せっていらっしゃる(権中納言の)ご様子が、とても可哀そうで常軌を逸しているのを、(周りの人々は)見申し上げて嘆かわしく思わざるを得ない」のようになります(最後の「嘆かる」は、自発的意味での「(自然と)嘆かれる」です)。
選択肢の吟味
①・②ともに「権中納言が嘆いている」が×てす。嘆いている主語が権中納言なのであるならば、を「嘆かれたまふ」のように尊敬語が入るはずです。
③正答です。特に言うこともありません!
④「都を恋しがってばかりで権中納言や若君のことを少しも考えなかった女君の振る舞いに対して」が△です。文中で「都がち」であったのは女君ではなく権中納言です。また、女君は若君のことを見捨て難く思っていたであろうことへの推察も描かれています。
問5 正答④
本文全体にかかっている設問になりますので、順番に見ていきましょう!
選択肢の吟味
①「乳母は、権中納言が宇治にやってきたと聞いて、叱責されるのが怖くなり暗い気持ちになった」が△です。第一段落においてそれらしいところは「うち聞きたまふよりかきくらし心まどひだひて」ですが、これは女君が見当たらないと聞いた権中納言が慌てている様子です。乳母は自分の仕業になるのは避けたいので答弁を変えてはいますが、「暗い気持ちになった」とは読み取れません。また、「女君の行動にも道理があったのだと考えている」も?です。第二段落の末尾に「人の御つらさも限りなく思ひ知らる(女君のおつらさも、この上なく思い知られる)」とはあり、権中納言が女君のつらさを思い知る描写はありますが、「道理があったのだ」からはやや外れます。
②「乳母がその原因を隠しているのではないかと疑っている」が△です。乳母の報告に対して、権中納言は「言はむ方なし(どのように言うこともできない)」と絶句しており、疑っている様子はありません。また、「手のかかる育児を女君に任せきりにしていたことを振り返り」も?です。第二段落において根拠が見当たりません。
③「若君は、権中納言も女君を探すために宇治から立ち去ろうとしているとも知らずに、無邪気な笑顔を見せている」が△です。権中納言はとりあえず嘆きっぱなしで、「女君を探すために宇治から立ち去ろうとしている」という記述は読み取れません。また、「実は自分をひどく恨んでいたことを知って」も?です。権中納言が女君のつらさを思い知る場面はあるものの、「自分をひどく恨んでいた」とまで言えるかは微妙です。
④正答です。全体的に女君が居なくなってから恋しく思ってばかりの権中納言です。
⑤「女君の強情さにあきれている」が△です。「かかる人をを見捨てたまひけむ心強さこそと思へど、あさましく」とありますが、これは若君を置いてでも宇治を離れた女君の決意の強さに(権中納言が)驚いている場面です。また、「華やかな女君の姿が夢に出てきた後に脳裏から離れなくなり」も△です。第三段落の「かばかりのことを夢に見むだに覚めての名残ゆゆしかるべし」は、「このようなことは夢に見るのでさえ、目覚めた後の名残恋しい思いは大層甚だしいものであろうのに(権中納言は現実として女君に去られてしまったのでなおさらだ)」という意味合いで、女君か夢に出てきたわけではありません。
読解後のつれづれ
女君が居なくなってからの権中納言の嘆きようが半端ないですね。そんなに悲しむんなら最初から大事にしとこうよ……という教訓を与えてくれそうなものですが、いわゆる「It is not until 〜 that 〜.」ってやつですかね。
また、問4のように敬語が読解の助けになってくれる場合もあります。これもあるので文法は油断なりません。読解力全般はなかなか急激には伸びませんが、文法はピンポイントでの復習を繰り返していけば、次回はすぐ使える部分もあります。いつかどこかで助けになってくれるはずです。



