こんにちは! 普段は教育系の企業で働きながら、京大国語・共通テストの解説を書いたり、ことば・教育に関するコラムを書いたりしているジョンと申します。
京都大学文学部を卒業→京都大学文学研究科を修了し、言語学の修士号を持っています。しかしアカデミズムで生きていくにしては己の熱狂が足りないなと思ったので就職した、中途半端なヤツでもあります。悪しからず。
今回は、主に言語学に興味がある・学んでいる大学学部生の皆さんを想定して、三省堂『明解言語学辞典』のレビューをしていきたいと思います。結論としては「言語学を専門にするのであれば買っておいて絶対に損はない」なのですが、どういう感じでそう言えるのか、良ければちょっと聞いていってください!
このような人のための記事です
- 言語学に興味があり、将来の専門(専攻)として積極的に考えている方
- 言語学を専門としており、卒論の執筆や大学院入試のために基礎知識を身に着けていきたい方
『明解言語学辞典』とは
本辞典は、現代言語学の重要な概念をできるだけ分かりやすく、しかもレベルは落とさずに解説したものです。言語学を学んでいる方々、またこれから学ぼうとしている方々を念頭において編まれましたが、広い分野にわたる知識が整理された形で簡潔にまとめられているだけでなく、近年急速に研究が進んだ分野の新しい概念も多く取り入れられており、中には日本で出た辞典としては初めて取り上げる項目も含まれていますので、すでに学習が進んでいる方や教室で教えられている先生方にも使っていただけると考えています。
(斎藤(2015)「はしがき」:三省堂『明解言語学辞典』p.ⅰより)
発行は2015年、もう10年前となりましたが、言語学の基礎を学ぶうえでは十分に現役と言える一冊です。各項目は言語学の関連分野を特に専門とする研究者が執筆し、斎藤純男・田口善久・西村義樹3先生が編者となっています。
私も学部生の頃に購入し、教養の言語学の授業でも使い、専門の講義でも使い、院試の勉強でも相当使い、院生になってからも使い、社会人になった今も時々思い出しては引いています。そう考えるとなんというコスパ。
また、上記の「はしがき」の続き部分でも言及されていますが、この『明解言語学辞典』は同じく三省堂の『言語学大辞典』の「術語編」を補うものとしても位置付けられています。『言語学大辞典』は全6巻+別巻にわたる、言語学の超巨大図鑑(すべて揃えると約34万円)ですが、このうち第6巻が「術語編」であり、言語学に関する用語を解説してくれている巻です。
「術語編」はかなり詳細なものですが、発行が1996年でして、近年の言語学の進展(特に生成文法や認知言語学といった分野)を反映できていない部分もあります。この点を補うとともに、さすがにデカすぎる「術語編」に代わって、持ち運びもできるハンディ辞典として、『明解言語学辞典』は発行されました。
『明解言語学辞典』の特長
それでは、ここからは『明解言語学辞典』のおすすめポイントを解説していこうと思います。三省堂の公式サイトから、一部を試し読みすることもできますので、良かったら一緒にご覧ください。
①さまざまな言語学の分野をカバー
言語学の諸分野と言えば、音声・音韻、統語論、形態論、意味論、語用論、類型論、比較言語学、社会言語学……と枚挙にいとまがありませんが、それらの基本的なところは概ねカバーしています(私は形態論が主な専門でした)。
言語学に関して分からないことがあればとりあえず引いてみて、まずは基本的なところを概念として理解してから、もう少し詳しい専門書を参照したり、言語学大辞典で引けばよいのです。
にしても、今の大学生だったらAIに聞いてみるのもいいんでしょうね(私もAI活用派です)。でも、AIにでたらめ言われないか批判的にみられるように、基礎的なところは(足がかりとして)書籍も併用して学んだ方がいいような不安も感じますね……。
②周辺知識と合わせて理解可能
索引で引ける語がすべて項目として立てられているわけではなく、比較的小さな項目に関しては、関連する項目の解説中で統合的に解説されています(解説中に▼マークで示されています)。そしてこのような解説文中解説は、必ずしも1用語につき1つではなく、複数の箇所で同じ用語が現れる場合もあります。

これにより、1つの術語に関する複数の方面からの解説が加えられるだけでなく、周辺知識も一緒に読み取って理解することができます。解説中にわからない語が出てきたら、その語も索引で引いて複数の箇所で立体的に理解し……ということを繰り返していけば、だんだんと用語の理解が強靭なものとなっていく気がします。
③付録が地味に良い
地味にとか言ったらあかんですね。笑
付録には、発声器官の分布図やIPA(国際音声字母)チャート、文字の系統図、英日対照表がついています。
IPAのチャートは音声学をやる際には何度も見ることになるものですし、英日対照表は英語の論文等を読む際にはかなり便利です。
特に私は英日対照表をかなり使いました。というのも、院試では言語学に関する英語の論文抜粋をもとに訳したり設問に答える大問があったので、院試直前にはこの英日対照表を印刷し、必死で専門用語の英単語を覚えたものです……笑
そんなわけで、言語学の諸分野を学んでいると、なんやかんやで見たいものや知りたいことが絶妙に入っている、そういう良さが『明解言語学辞典』にはあると言って過言ではないと思います。
おすすめユースケース
これまで述べてきたところにも重なりますが、以下のようなシーンで活躍すると思います。
①言語学の基礎的な講義を受けている時に引いてみる
②演習など、やや専門的な授業内で引いて理解を深める
③大学院入試の勉強で必死に使う
①→③の順で、専門性は高まっていくものと思います。③に寄っていくにつれて、『明解言語学辞典』だけでは深い理解に及ばない場合も増えていくかもしれません。そんな時は『言語学大辞典』や英語のWikipediaなどを使うようにしていました。
言語学を専門として大学院入試を考えている方は、間違いなく購入をおすすめします(私の研究室では、修士の院生はほぼ持っていました)。一度調べた語句に蛍光ペンを引きながら読めば、学習歴が溜まっていく感じも良いです。笑

おわりです
今回は『明解言語学辞典』のおすすめポイントやユースケースについて書いてみました。学部生の頃に買っておけば、卒論~院試~大学院まで末永く活躍してくれるものと思いますので、特に言語学を専攻する皆様におかれましては、借りるのではなく購入してお手元に置いておくのが良いかと思います。
私はもう社会人なので使う頻度こそ減りましたが、引っ越しても相変わらず持ってきています。またコラム的に言語学の用語解説とかもやってみたいな~と思っているので、その時にも定義を改めて確認する際には活用することでしょう。迷っている方は、これを機に購入してみてはいかがでしょうか?
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました! 大学生向けの記事も過去にちょっとは書いております。良かったらどうぞ!



