京都大学 2023[五]解答例と解説

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総評

理系設問にしてはというと失礼ですが、なかなか歯応えのある大問だったかと思います。本文も短く記述量もそれほど多いわけではありませんが、本文もするっと読めるわけではなく、記述も本文内容をしっかり理解していないと難しい感じがします。全体的に物語調ではなく論説文に近いためでしょうか。がんばっていきましょう!

解答例と解説

問一

新しい君主は、先代君主である亡父の喪に一年間服さず、五十日の服喪で済ませて政治を改めたため、先代君主が誤っていたような印象や、自分が君主になることを待ち侘びていたような印象を与えてしまうから。

直前の「のどけき心おはしまさで(のんびりとした、落ち着いた心がおありにならないて)」から広げて考えていきましょう。

そもそも、ここで言う「新しい君主」とは、本文冒頭付近の「この頃かしましくほめののしる君」のことで、リード文における「当時の為政者」に該当します。「かしましくほめののしる」の「ののしる」は現代語の「罵る」とは異なり、「大声で騒ぎ立てる」といった意味合いですので、めちゃくちゃ褒められてるってことです。この新しい君主は、基本的にめちゃ良い感じなんだけど、「のどけき心おはしまさで、急なるがわろきなり」とのことで、落ち着いて泰然とした態度を持ちきれず、性急なところがあるのがあまり良くないところだ、と筆者は批評しています。

その具体的な行動として、「先考の服、一年も過ぐさず、五十日の服をはるを待ちて、先考の世のおきてを改め(先代君主の喪に一年を過ごさず、五十日の服喪が終わるのを待ったのみで、先代君主の治世の決まりを改めて)」とあります。この論調からして、筆者としては一年くらいは父である先代君主の喪に服すべきだと思っていることがわかります(実際、最終文でそう言っています)。ここを取れていれば最低限OKなのではないかと思います。

そのうえで、傍線部(2)を挟んでしまうので入れるかがかなり難しいですが、傍線部(2)の後の内容も含めています。これは、「新しい君主の性急さによる望ましくない点」として述べられているからです。長いですが「全て古き名残はあながちになき様にして、〜罪深げなり。」までをざっくり訳出すると、「古い名残を全てやたらとないものとして、自分の才能を賢ぶってあからさまにひけらかせば、考える力がない人は新しい君主を褒め申し上げて、先代の君主の誤りが世の中に流布するようなものだ。そうすれば、(新しい君主は)自らの治世になることを待ち侘びていたように思われてしまうことも、そうではないのだろうが、残念なことである」という感じです。新しい君主が先代君主の決め事をすぐに改めてしまうと、先代君主が間違っていたかのような印象をもたらすのと、新しい君主が権力を握ることを待ち侘びていたような印象をもたらし、それってあんまりよくないよねってことですね。

部分点

新しい君主は、〈先代君主である亡父の喪に一年間服さず、五十日の服喪で済ませて政治を改めた〉ため、〈先代君主が誤っていたような印象〉や、〈自分が君主になることを待ち侘びていたような印象を与えてしまう〉から。

一つ目の部分点がしっかり取れていれば、まぁ〜最低限は大丈夫なのかなと思います。細かい話ですが、「喪服」は服ですが「服喪」は「喪に服すこと」です。熟語の構造を考えるとわかりますね。

問二

先代君主の時代に並びないほど権勢を誇った者は落ちぶれたようになり、一方で、谷の埋もれ木のように埋もれていた人材が翻って重用されるようなこともある

「指示語と比喩の指す内容を明確にしつつ」という設問指示がありますので、傍線部冒頭の「その世」と、「谷の埋もれ木の引きかへて花やぐ」を説明しましょう。

「その世」は直前の「先考の世」に対応しますので、「先代の君主の治世では、並ぶ者なく権勢を誇っていた者」というような訳し方ができます。「時めく」は「時流に乗る」なので覚えておきましょう! そういった人も「いたずら人の様になり」なので、おそらく「何もない人のようになり」という方向性です。

「また、」で繋がるので「一方で」のように訳し、概ね対になるようなことを言ってるんじゃないかな〜と考えます。「谷の埋もれ木の引きかへて花やぐ」なので、「(時流に乗っていた人が落ちぶれる一方で、)埋もれていた人が活躍する」といった感じかと推察できます。

部分点

〈先代君主の時代に〉〈並びないほど権勢を誇った者〉は〈落ちぶれたようになり〉、一方で、〈谷の埋もれ木のように埋もれていた人材〉が〈翻って重用されるようなこと〉もある

現代語訳なので、ちょっと細かめに振ってみました。「その世」の訳出と「またなく時めきし者」「いたづら人」「谷の埋もれ木」「引きかへて花やぐ」をそれぞれちゃんと訳せているかという分け方です。「権勢」「重用」は覚えておけると古文で役立つことが多い現代訳語です! あとは「勤行」「寵愛」とかもそんな感じ。

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問三

当初は賢く改革的だった新しい君主も、時が経つとだんだんと安易に流れ贅沢もするようになり、最終的には先代の君主と同じように、世によくある平凡な君主になっていってしまうのは残念だということ。

「さて、このかしこき新君たちも在りふれば、」以降で考えます。「さて、この賢い新しい君主たちも在位してしばらくすれば、だんだんと安易な方に流れて、風流や贅沢もまた良しとしなさって、ついには先代君主と違うところも少なく、世のいつものことになっていってしまうのも残念だ」という感じです。あんまりそれ以上のことはないかもしれません。笑

部分点

当初は〈賢く改革的だった新しい君主〉も、〈時が経つとだんだんと安易に流れ〉〈贅沢もするようになり〉、〈最終的には先代の君主と同じように〉、〈世によくある平凡な君主になっていってしまうのは残念だ〉ということ。

「改革的」は「世によくある平凡な君主」の対置として補っています。「賢い」だけではちょっと本文を踏まえきれてない気がしたので(なくても全然良いと思います)。

「風流妖艶」「美酒佳肴」を「贅沢」としてまとめちゃっていますが、「女色」「酒食」などと具体的に書いても良い気もします。でもそれにあんまり文字数使ってもなあと思ったので「贅沢」で包含できるかな〜と思ってこうしました。

訳さないでいいのですが、傍線部には「なん」が入っているので強調の係り結びが入っています。「口惜しき」の対象である「賢い新君が平凡な君主になっていってしまうこと」の語気をちょっと強めていて、筆者の言葉に気持ちが込められていることが感じられますね。「賢い新君が平凡な君主になっていってしまうことマジで残念」ってイメージです。笑

読解後のつれづれ

全体的に論理も通っていて、論評文という感じでしたね。傍線部に限らず、文法と語彙を押さえつつ逐語訳ができることが大事な気がしました。てか江戸時代後期なのに割と硬派な古文な感じしますね。江戸時代の古文は割と口語に寄っていて読みやすいものも多い気がしますが、これは論評文ということで、硬い文体を意識しているのかもしれません。

「五十日の喪」は現代で言えば「四十九日が明ける」に当たるってことなのでしょうか。一年も喪に服して改革を待っていたら、なかなかそれはそれでどうなんだとは思いますが、当時の感覚と今の感覚も違うのでしょう。今で言えば、行動や変化が早いことは割と称揚されることが多い気がしますが、当時は治世が血縁である程度引き継がれていく都合上、亡くなった先代君主に気を遣った方が印象良い場合もあるって感じですね。それもまたわかる。今と昔の違いですね。

そんなところで。今回もお疲れ様でした!

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