このページは、2025年度大学入試共通テスト本試験 国語 大問2(小説)の解説です。
この年度の全体概説を見ておきたい方はこちら
解説
選択肢の吟味において、「×・△・?」を選択肢の該当箇所に付けていきます。×は「これはちゃうやろ」、△は「ちゃうかもしれん」、?は「びっみょ〜」って感じです。
問1 正答①
傍線部Aに至るまでの記述から、それほど難しくなく読み取れます。
おじさんがギターを弾いてくれる時は、「いつも途中で、『あれ』と首を傾げる。(中略)いつものことだが、いつも、がっかりする」「気まずくなり、いつも同じ質問をする」「つづきがわからないということは、どちらにもわかっていて、暗黙の了解なのに、おじさんは目を泳がせて、音を探すふりをする」という一連から、おじさんが曲の続きをわからないことを「わたし」もわかっていて、おじさんが一生懸命続きを弾こうとすることも、取り繕いであると捉えていることがわかります。そこまで含めて「いつものこと」であり、「わたし」のおじさんへの心象が概ね固まっていることが伺えます。
選択肢の吟味
①正答です。
②「弾き切ることこそできないが大切な曲であることを『わたし』に伝えるために」が×です。この曲がおじさんにとって大切な曲であるとは書かれていません。傍線部の「心をこめるように」は「わたし」から見た印象ですが、本気で曲の続きを弾こうとするふりをしている(と「わたし」は見ている)ことを表している箇所で、「曲が大切なものだ」とはなりません。
③「追憶にひたっているかのように見せている」が△です。「音を探すふりをする」は「追憶」とは言えないかと思います。傍線部に至るまでのおじさんの様子からして、「追憶」のような余裕のある様子を見せているとは読み取りづらいです。
④「落胆を隠すために、あらためて丁寧に曲を弾こうとし」が?です。おじさんが「落胆」を自覚しているかは不明なのと、「あらためて丁寧に」というほど、おじさんが居直っているとは読み取れません。おじさんは続きがわからなくてずっと一連としてもだもだしている印象です。
問2 正答④
すげ〜設問ですね。人間って感じ。
「母に似たもの」なので、「わたし」の母がどんな要素を抱えているかは踏まえていきましょう。二十二行目の「いつまでも親のスネかじって」というセリフからわかるように、母はおじさんに対して「変なことしてないでちゃんと働け」のような立場を取っています。まぁ〜一般的な社会適応を是とする現実(世俗)派ってことですね。
ほいで、傍線部B前後の文脈です。おじさんはステンドグラスの絵を「わたし」に見せて、「悪くないよね」「悪くないでしょ」と言ってきます。が、そのステンドグラスの鶴は「わたし」の子供目にも「切れがなかったのだ」とバッサリ思われるような出来でした。にもかかわらず「悪くないでしょ」と言って、肯定的な評価を期待するかのようなおじさんに対して、その反動もあってか、「わたし」は「おじさんに現実を突き付けてやりたい」というような気持ちが生まれます(これが母の言動に重なる気持ちです)。「おじさんの作品は一般的な社会からは評価されるものではないよ、現実見ようね」という評価を伝えると、おじさんの顔はあっさりと崩れ、「わたし」はそれに満足感をも覚えます。自己解釈で自己肯定をしておき、「なにか大事なものを自分で探り当てたつもりになり、昂揚」して小屋を後にします。すげ~生々しい心理描写ですね!
選択肢の吟味
①「自分の作品に不足している点がないかを気にしているおじさん」が×です。おじさんはおそらく嘘にせよ真にせよ、肯定的な評価を期待しているような印象をもたらします。
②やや迷いましたが、「よい作品ではないという意見を相手を傷つけてでも伝えたい」が△かと思います。正答の④に比べて、「母に似たもの」とする根拠に乏しくなります。母は別に「おじさんを傷つけてでも正答な評価をしたい」と思っているわけではないからです。
③「自分の作品に自信がない様子であるおじさんにいらだちを覚え」が×です。おじさんが自分の作品に自信があるかどうかは明瞭にはわかりませんが、少なくとも良い評価を期待しているような言動はしており、「作品に自信がない様子」とは言えません。
④正答です。傍線部Bの前では、「いい、と言ってほしいのか。それとも、子どもは思った通りを口にすると期待して、本当の意見を待っているのか、わからない」と思っていましたが、おじさんが重ねた「悪くないでしょ」というセリフへの反動もきっかけに、母がいつもしている「現実見ろよ」をやってみたくなり、率直に良くないと伝える方向に決めた、という感じですね。
問3 正答③
各箇所の内容から、選択肢と本文が対応して述べられている内容はOKですし、そうでなければ誤りということになります。選択肢ごとに外していく形で見ていければと思います。
選択肢の吟味
①「母は生計を立てるために独学でなくきちんと技術として習得すべきと主張している」が△です。母の指摘はもう少し浅くて、「親のスネをかじってないでちゃんと働いて(経済的に自立しなさい)よ」です。また、「祖母はいつかは実力を見せるだろうと期待している」も△です。「期待」とまで言えるような積極的表現はありません。
②「母は家族の負担になっているのだからやめるべきだと主張している」が△です。「親のスネをかじっている」は確かに間接的には「家族の負担になっている」なのかもしれませんが、文面的には①と同様に、もう少し浅い批判をしている気がします。また、少なくとも「祖母はそれほど大きな負担ではないから構わないと認めている」は読み取れません。
③正答です。「祖母は素質が仕事につながっていないともったいなく思っている」は「五十三行目の「あんなに器用なんだったら、少しは活かせばいいようなものだけど」に対応します。
④「祖母はもうどうしようもないのでこれ以上は叱ってもしかたがないと諦めている」が△です。母とのやりとり上では、祖母が諦めている感じもあるのですが、「もっと厳しく叱るべきだ」「これ以上は叱ってもしかたがない」というように「叱る・叱らない」という次元の話ではないと思います。
—–スポンサーリンク—–
————————
問4 正答④
同じく「がっかり」という言葉が用いられていますが、「がっかり」の対象はそれぞれ異なります。
波線部Iの「がっかり」は、ギター弾いても毎度毎度曲の途中で弾けなくなるおじさんへの哀れみが混じっています。大人なのに、毎回同じ曲なのに、やっぱり途中でダメになるおじさん、がっかりだな、かわいそうだな。わ、ワァ…。
波線部IIの「がっかり」は子どもから見て多少魅力的なオカリナを作ることができても、おじさんは(母を始めとする)「まとも」な大人たちから怒られ続けるのだろうと思い、そのような社会の構図に残念感をおぼえているところです。おじさんはオカリナを作れる、オカリナを見せて勝ち誇ったようにわらう。でもおじさんはこれからもオカリナを作れない大人たちから怒られ続ける。そんなおじさんとおじさんを取り巻く社会の構図全体に対して「がっかり」している感じがします。
選択肢の吟味
①「優れた作品を生み出して人を感動させられないために家族から怒られてばかりいる」が△です。おじさんが怒られているのは、「人を感動させられないため」ではなく、世間一般からして「ちゃんと働いて自立していないため」です。
②「おじさんの意志と弱さを情けなく思っていた」が△です。「わたし」ががっかりしているのは「おじさんの意志の弱さ」に限定されるものではありません。また、「何かに絞ってそれを完成させようとはしないために大人には受け入れてもらえない」も△です。おじさんが周りの大人に受け入れてもらえないのは、何かを完成させられないからではなく、(繰り返しになりますが)「ちゃんと働いて自立していないため」です。
③「取り組んでいることが向上しなくてもよいと思っているおじさん」が?です。おじさんが同じ曲を毎度毎度弾ききれないのはその通りなのですが、「取り組んでいることが向上しなくてもよいと思っている」とは明瞭に言えません。また、「人を感心させるものを作る資質を持っているにもかかわらず、それを母や祖母に理解させようとしないために家族から罵られ」も△です。同上です。
④正答です。おじさんのオカリナは子どもの「わたし」からしたら「すごい」と思えるものですが、そんなものを作れても、自活できていなかったら否応なしに(すごいものを作れない大人たちから)怒られるのだなぁ、と思ってる感じですね。
問5 正答①
間違えました!(③を選びました) まぁこれは確かにという感じです。表現の設問なのでそれぞれ見ていければと思います。
選択肢の吟味
①正答です(適当ではない)。一つ目の「繭に籠り」が「不本意な状況におかれている」ではないということかと思います。ちゃんと戻って読み直していなかった私が悪いのですが、十九行目の「繭」は「自分で建てた小屋」なので、自分で作った環境であり、「不本意な状況」とは言えません。
②適当です(正答ではない)。「わたし」の行動と周囲の描写が区別なく並べられているので、時系列を直接的に感じさせ、臨場感の向上になっているかと思います。
③適当です(正当ではない)が、これを選んでしまいました。①か誤ってることに気づかなかったので、まぁ〜なんか異質な感じがしたのでこれを選んでしまった感じです。確かに「そのとき、わたしはなにかを、教えられていたのだ」の箇所は、その当時の「わたし」の時間軸で思っていたことではなく、語り手としての「わたし」か分析的な回顧を差し込んでいるところと読むことができます。
④適当です(正答ではない)。「息を殺して」が擬人法です。「夜明けの玉子のように」という比喩は、当時の「わたし」にとって、オカリナがやや神秘的で価値高いものであることを喩えた表現に感じます。子供にとっての「夜明けの玉子」ってめちゃくちゃロマンありません?
問6 正答①
「触覚の取れた虫。方向感覚を破壊された鳥」というモチーフの提示は、「他の人たちから見れば意味が薄いことを、自分の熱意だけでつづける。どこに繋がっていくのか、わかりもしないまま」というおじさんの様子をなぞらえています。その先を見据えられているわけではなく、とりあえず今の気持ちに従って進んでいくおじさんを心配しつつ、それって自分にも関わることだなぁと。「オカリナどころか、なにも作れない自分は、どうすればいいんだろう」という気持ちにつながります。
選択肢の吟味
①正答です。特に問題ありません。
②「おじさんの苦労に寄り添うことも支えになることもできない自分が、おじさんのためにできることはないか悩んでいる」が×です。おじさんにとっては残念ですが、「わたし」がおじさんに寄り添おうなどと思っているとは全く読めません。
③「おじさんがどこに向かっていくかわからず、それに振り回され続けることになる自分たちのことも不安に思っている」が△です。全体を通して、おじさんに家族が振り回されているとは読み取れません。
④「本当にやりたいことが見つからずにもがくおじさんの苦しさ」が△です。おじさんがそのような苦悩を抱いているとは読み取れません。また、「おじさんの内心を測りかね、途方に暮れている」も△です。「自分も晴れない霧に包まれた」は、「何も作れない自分は、どうすればいいんだろう」につながるため、おじさんに対する気持ちではなく、自分の内面に向いている心情です。
問7 正答④
冒頭のギターと終盤のオカリナの対比が取れるとは、設問を見るまで気づいておりませんでした。笑
とりあえず、ギターに関しては「つまらないというより、不安だった。自分でばら撒いたおかしな音に、自分で不安になるのだった」(三行目)とあり、オカリナに関しては傍線部のように「吹いていると、身体の表面が分厚く剥がれ落ちる気がする。それを拾い集めるべきかどうか、わからない。捨てておいていい、殻のようなものかもしれない」とある点から考えるより他ありません。
選択肢の吟味
①「自分を保護してくれる存在がいることの安心感を恐る恐るではあるものの手放そうとしつつある」が△です。おじさんが「わたし」を保護してくれていて、それに「わたし」が安心感を持っていたとはなかなか読み取れません。
②「居心地のよい場所からあえて抜け出したことで、自分の道を進んでいくことの不安を実感しつつある」が△です。「わたし」にとっておじさんの小屋が「居心地のよい場所」であったかどうかは不明です。多少は楽しかったと思いますが……。
③「オカリナを作り上げたおじさんの熱心さに触れたことで、興味を持てるかどうかにこだわらずに挑戦する必要があるのではないかと迷いつつある」が△です。おじさんがオカリナを作ったことから、そんなにポジティブな気持ちを受け取っているとは読み取れません。
④正答です。「吹いていると、身体の表面が分厚く剥がれ落ちる気がする。それを拾い集めるべきかどうか、わからない。捨てておいていい、殻のようなものかもしれない」から、「わからない」と思いつつも、自身に変化が起こっていることに比喩を通して自覚的であると読み取れます。
読解後のつれづれ
なかなか時事的でしたね。「おじさん」はまさに世間的には「子供部屋おじさん」と呼ばれているような人でしょう。また、それをとりまく「わたし」の心中描写もとてもリアルで、一般社会的には弱者のレッテルを貼られるであろうおじさんに対して、哀れんだり自身を重ねたり、とても示唆的だったのではないかと思います。人間を生々しく描き出すのもまた、小説の力だなあと思いました。いろんな考え方の人がいるこの世界、それぞれか文章を読んでいろんなことを思うことも大切な経験ですね。
それでは、今回もお疲れ様でした!





