大学入試センター試験 国語2019本試[4(漢文)]解説

目次

解説

選択肢の吟味において、「×・△・?」を選択肢の該当箇所に付けていきます。×は「これはちゃうやろ」、△は「ちゃうかもしれん」、?は「びっみょ〜」って感じです。

問1

(ア) 正答③

知識として押さえておきたい設問です。「対」は「対曰」の形で「こたへていはく」になり、「(言われたことに)返答して言うようには」という意味合いになります。文脈的にも、「或人」が杜甫に向かって言った言葉に対して、杜甫が返事しているところなので問題ありません。

(イ) 正答④

たぶん「すなわち」です。「すなわち」と読む語は複数あるかと思いますが、「即」や「則」の方がよく見る気がしますね。私も正直なところ、このそれぞれの「すなわち」の使い分けとかがバッチリわかっているという温度感ではないのですが、文脈でなんとかしました。「後に(のちに)」のあとに続くため、「後になってやっと(ようやく)」という感じかなと。叔母が自分の息子を犠牲にして杜甫を助けてくれたことを、後になってようやく使用人から聞いた、という感じですね。

問2 正答②

傍線部Aの少し前から注釈を含めて直訳すると、「あの孝童さんの甥ですよね、どうして(叔母への)孝行に努めることをそのように(程度高く)するのですか」となります。これに対して杜甫は(傍線部Bですが)「敢えてこれをしているわけではなく、(恩義への)報いをしているだけです」と言っています。また、注釈部は「甥っ子ですよね?(≒実子じゃないですよね?)」という発言と捉えられるので、杜甫の叔母に対する孝行は、他の人から見るとちょっと程度が過ぎているということが推測できます。この状況から、傍線部Bのような発言が出たと考えられます。

選択肢の吟味

①「若いにもかかわらず」が特段意味を持ちません。

②正答です。

③全体的に誤りです。

④こちらも全体的に誤りです。

⑤「正義感が強いので、困窮した叔母に」が根拠薄弱です。

問3 正答⑤

問2の解説でもやや触れましたが、「亦た報ゆるを為すなり」から、杜甫は叔母への恩義に報いるために孝行をしているとわかります。その恩義がどういうものかというのはこの後に続きますが、とりあえずここまでで本設問の判断は付くかと思います。

選択肢の吟味

①「より謙虚でありたいと願った」が?です。杜甫が自身の謙虚さについて言及するような箇所は見当たりません。

②「まだその段階にまで達していないと意識している」が△です。ちょっとよくわからない選択肢です。

③「今は喪に服することでしか彼女に恩返しできない」が?です。多分このやり取りがあった時点では叔母さんが死んでいるわけではないのではないかと思うんですが……。

④「叔母も亡くしてしまい、孝行する機会を永遠に失ってしまった」が△です。同上です。

⑤正答です。「養育してくれた」とありますが、この後の病気のエピソードを含めて、叔母に恩義があるから、ということかと思います。

問4 正答③

「楹」をどう読むのかわかりませんでしたが、ちゃんもふりがなが付いていてよかったです。どちらかというと、書き下し文よりは解釈の整合性で考えた方が解きやすい設問かと思いました。

傍線部Cは、祈祷師に叔母が言われた言葉ですが、それを聞いて叔母は「子の地を易へ以て我を安んず(子供の場所を替えて私を良い場所にした)」ということをしています(その結果、傍線部Dですが杜甫は生き残り叔母の子は死んでしまいます)。よって、祈祷師の言葉は場所の吉凶に関わるものであり、杜甫を運気の良い場所に寝かせた、と考えると文意が通ります。

選択肢の吟味

①④⑤は柱の位置に主眼があり、その後の叔母の行動と整合しません。

②は「向かってゆく」という移動?に吉凶が込められていますが、これもその後の叔母の行動や杜甫の回復と繋がりません。

問5 正答⑤

それほど難しくなく「卒す」の意味を知っていればほぼ当たります。残念ながら人生からの卒業なので「死ぬ」です。これは覚えておきたい語の一つですね。

選択肢の吟味

「卒す」の意味から、①と⑤に絞られます。②も悪い意味ではありますが、「卒す」はやはり死が伴う語かと思いますので、「重病となる」では不適です。①は「杜甫は女巫のお祓いを受けたことで元気を取り戻した」が×です。そんな文脈はありません。よって残る⑤が正答となります。

問6 正答②

設問の意図を辿るのが難しく、あんまり深く考えない方が合うかもしれません。

傍線部Eを直訳すると「叔母もこれがあった」となります。「これ」とは、注釈9にある魯の国の女性の行動にあったような心のことであり、「其の携える所(=兄の子)を抱き、其の抱く所(=自分の子)を棄て、以て私愛を割つ」という行動ができる心です。

なんか私情を捨てるのがちょっと良いように書かれてる感じで読めるのもヤですが、その辺は中国古典なので。

選択肢の吟味

①「一族の跡継ぎを重んじる考え方に反発していた」が△です。「一族の跡継ぎを重んじる考え方」が影響していたかは不明ですが、少なくとも「反発していた」では、兄の子を助けるという行動と齟齬があります。

②正答です。

③「いつも甥の杜甫を実子と同様に愛した」が△です。杜甫の叔母はもしかするとそうかもしれないんですが、魯の義姑のエピソードからはそうとは言えません。

④「魯の義姑のように、愛する実子を失ったことを甥の杜甫に黙っていた」が?です。魯の義姑が実子の死を兄の子に黙っていたかは判別できません。

⑤「暴徒をも恐れぬ気概を持っていた」が△です。杜甫の叔母がそんなパワフル系叔母さんだったとは読み取れません。

問7 正答③

やや難しいかもです。「銘して韻せず」は注釈にある通り「銘文は作るが韻は踏まない(韻を踏むのが普通なのだが)」です。「蓋し」「(私が)思うようには」であり、「情至れば文無し」がよくわかりませんが、これを推測しないといけません。おそらく、「気持ちがちゃんと水準に達していれば、(技巧的な)言葉なんてなくてもええんや!」みたいな感じかと。というのも、実際にその言葉は「ああ、唐の義姑は長安の杜氏の墓に。」であり、「唐の義姑」は(問6のエピソードにある通り)杜甫の叔母のことですから、本当に「叔母さんここに眠る」みたいなことしか言っていません。杜甫は叔母のエピソードをこの文章で書き、記銘には言葉はいらないという姿勢を示したという感じですね。

選択肢の吟味

①「人知れず善行を積んでいた叔母の心情に背く」が?です。本文中で述べられている叔母の善行は、実子を犠牲にして杜甫を救ったエピソードとなりますが、これが果たして「人知れず善行を積む」と言えるかは微妙です。

②「取り乱しがちな自分の感情を覆い隠し、飾り気のない文に仕立て上げてこそ、叔母の人柄を表現するのにふさわしい」が△です。杜甫が感情を取り乱しがちだったかは判然としませんし、叔母が毅然としていたかも明瞭ではありません。

③正答です。「情至れば」を含めています。

④「巧みな韻文を整えられなかったため」が△です。そうだとすればもうちょっとがんばれ杜甫!

⑤「長文になるため、韻は割愛してできるだけ短くした」が△です。そんな理由で割愛しちゃダメ……というか、これだけ世話になった叔母の記銘に際して真摯ではありません。

読解後のつれづれ

本問に限らず、漢文は注釈の理解を上手いこと本文に組み込んで読んでいくのが難しいですね。注釈4の「あの孝童さんの甥ですよね」とかもそのまま当てはめてもよ〜わからん感じですし、結局どういう文脈なのかというのを自分で補って当て込んでいかないといけません。逆に言えば注釈の情報を上手いこと噛み砕きつつ読むことができれば、かなりスムーズに解ける問題でもありました。古文もそうですが、注釈や設問・選択肢の内容と本文を並行的に保持して読み進めていくような感覚を付けていくことができれば、共テの古典は割と素早く正答率を上げていけるのではないかと思います。こればっかりは訓練です……頑張っていきましょう。。。

それでは今回も大変お疲れ様でした!

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