京都大学 国語2022[五]解答例と解説

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総評

課題文としては短めで、設問の記述量も多くない大問でしたが、難易度としてはそんなに易しくない問題でした。先立つ歌からの内容の取り込みを丁寧に行うこと、要所要所の古語を適切に訳すことが求められます。本文中の和歌は直接の解答根拠にはなりませんが、設問解答の土台となる本文理解においては非常に重要な内容となっていますので、どこも雑には読めません。解釈の可能性を取っ替え引っ替えしながら、短い課題文ですので何度も同じところを読み返しつつ丁寧に答えていきましょう〜。

解答例と解説

問一

雪が多く積もり荒れた庭を見て寂しく感じ、こんな日に恋人が訪ねて来てくれるとさらに思いが募ることだろうと思っている。

問題中に引かれている和歌の解釈から説明します。「山里は雪降り積みて道もなし」は雪が降り積もって道がなくなってしまった隔絶感=寂しさを暗示し、「けふ来む人をあはれとは見む」は適宜訳すと「このような今日に私の元に来てくれる人のことを、しみじみと恋しく思うだろう」みたいな感じになります。今回、建礼門院右京大夫は恋人である平資盛のことを思っていることはリード文から確実なので、「恋人」や「資盛」とすると良いかと思います。

部分点

〈雪が多く積もり荒れた庭〉を見て〈寂しく感じ〉、〈こんな日に恋人が訪ねて来てくれると〉〈さらに思いが募ることだろう〉と思っている。

「荒れた」は引用元の歌の方に無いので、なくてもいいと思います。「思いが募るだろう」は元々「あはれとは見む」の部分です。「しみじみ」とかを入れてもいいと思いますが、「恋しく思う」という要素は欲しいです。私の解答では「恋人への思いが募る」で、「恋しく」と「しみじみ」を織り込んでいるつもりなのですが、いかがでしょうか。

問二

月日は多く経ってしまったけれど、かつての恋人の姿は最近のように覚えており、まったくもって胸が詰まる気持ちだ。

「心には近きも、」をどう取るかでしょうか。私としては、傍線部(2)より前からの繋がり(「人の面影〜常は忘れがたく覚えて、」)を少し重めに見て、「かつての恋人の姿を」を入れています。

「年月は経ってしまったが、心の中では近い」なので、「最近のようだ」となり、「むつかし」は割とそのまま「胸が詰まる」としました。

部分点

〈月日は多く経ってしまったけれど〉、〈かつての恋人の姿は〉〈最近のように覚えており〉、〈まったくもって〉〈胸が詰まる〉気持ちだ。

「返す返す」は「何度考えても」から「まったくもって」としています。「とても」とはちょっと違う気もします。

問三

人のことについても、朝顔の花の方から見て、まさに盛りは短くはかないものだと思ったことだろう。

結構難しめかと思います。本文と注釈にある引用元の歌の両方に関して、ほぼ同じ内容を指してはいるのですが「さこそ」の指示内容があり、両方を盛り込めると最高です。

傍線部としては、普通は人間の方が朝顔の花を見て「朝顔の花は盛りが短くはかないものだ」と思うという文脈が多い一方、「人をも花はさこそ見るらめ」、「人のことも花の方がそのように見ているだろう」つまり逆もまた然りだということです。捉えようによっては、人もとてもはかない存在であり、朝顔とお互い様だという感じですね。

「さこそ」は課題文中の「ただ時の間のさかりこそあわれなれ」と、注釈中の和歌の「はかなし」の両方を受けています。引用元の和歌の意味も乗せているし、課題文中に配置された状態で前の箇所も受けているためですね。

やや情けない話なのですが、注釈中の和歌の「朝顔を何はかなしと思いけむ」を、「何/はかなし」ではなく「何/はwa/かなし」と読んでました……。これでも通りそうなのですが、下の句とのつながりが悪くなってしまいます。
下の句は「人をも花は」で、人が目的語で花が主語となり、「人を花がそう思っているだろう」です。もし、上の句がを「何/はwa/かなし」だとすると、「朝顔のことを、いったい何がかわいいものだと思っただろう」となり、主語が不定の疑問文となります。すると、下の句の「人」と「花」の主客逆転にスムーズにつながらないというわけです。これを「何/はかなし」とすると、「朝顔のことを、(人が)どうしてはかないものと思ったのだろう」となり、下の句の「人のことを、花の方がそう思っているだろうに」という内容としっかり繋がります。まぁ、私は初読でこう読めてなかったのですが……!(ごめんなさい)

部分点

〈人のことについても〉、〈朝顔の花の方から見て〉、〈まさに〉〈盛りは短く〉〈はかないものだ〉と〈思ったことだろう〉。

言ってることはなんとなくわかる気がするけど、わかりやすく訳すのが難しいですね。「人をも」は「人」が目的語になっていることがわかっていればOKです。「花は」は「花」が主語になっていることがわかれば同上です。あとは「げに」がちゃんと訳せているか、「時の間のさかり」「はかなし」がそれぞれ、「けめ(けむの已然形)」がちゃんと過去推量で訳せているかがチェックポイントとなります。

読解後のつれづれ

「透垣(すいがい)」という言葉が出てきました。私もこの語を知らなかったのですが、なぜかすぐに頭に浮かびそうなものです。いかにも朝顔がその蔓を絡めていそうな、透け透け(すかすか?)な格子みたいな垣なのでしょう。

あとこれはちょっとわかんないんですが、リード文の中に「一齣を綴ったものである」という箇所があり、この「齣」っていう漢字も滅多に見ないなと思いました。作問者の趣味なのかしら。知らんけど。

そんなこんなで。今回もお疲れ様でした!

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