大学入学共通テスト国語 2021本試[1(評論)]解説

目次

解説

ご留意
選択肢の吟味において、「×・△・?」を選択肢の該当箇所に付けていきます。×は「これはちゃうやろ」、△は「ちゃうかもしれん」、?は「びっみょ〜」って感じです。結局は△と?がついた箇所の吟味となることがほとんどです。
あと、私が解答作成前に解いて間違えたところは正直に言います(かなしいけど)。ちょっとご参考にください。

問1

(ア)民俗 ①所属 ②海賊 ③良俗 ④継続

「民族」ではありませんのでご注意。

(イ)喚起 ①召喚 ②返還 ③栄冠 ④交換

えらいことなんですが間違えました……うっかり④を選びまして……。

(ウ)援用 ①沿線 ②救援 ③順延 ④円熟

「援用」はなんか漢字問題でよく見る熟語です。自己の主張の補強となる説などを引く時に使います。

(エ)隔てる ①威嚇 ②拡充 ③隔絶 ④地殻

意味的にも似ているので、おそらくそんなに難しくないです。

(オ)投影 ①投合 ②倒置 ③系統 ④奮闘

どれも一般的な語なので、こちらも難しくないはず。

問2 正答①

合ってましたが、全ての選択肢に△〜?が付きました(正答にも?が付きました)。まぁ〜比較的マシかなぁ…というテンションで選んで合ってたという感じです。

「(傍線部A)とは、そうした存在だったのである」とありますので、「そうした存在」を取ります。第三段落から、妖怪は「日常的な因果了解では説明のつかない現象」(=「意味論的な危機」)を「意味の体系のなかに回収するために生み出された文化的装置」です。意味わかんないことが起こった際に「妖怪のせいなのね」とすることで、超因果的な現象の説明を行い、安心するという感じですね。これ、以前にも似たような内容の文章を読んだことがあるので、もしかすると筆者も私と同じ文章を読んでいたのかも(もしくはその逆、つまり本課題文の方が先の可能性もあり得ますね)。

選択肢の吟味

①正答です。が、「日常世界のなかに導き入れる」は?を付けていました。そんな積極的な表現して大丈夫か?(大丈夫だ問題ない、らしい) ここで言う「日常世界」が、本文で言う「秩序ある意味世界」≒「意味の体系」≒「日常的な原因-結果の了解」と考えると、まぁ〜耐えかもしれません。

②「フィクションの領域においてとらえなおす」が×です。「民間伝承としての妖怪」は、「切実なリアリティをともなっていた」ものですので、「フィクション」はダメです。「フィクションとしての妖怪」が立ちあらわれてくるのは後の話です。

③「予測される未来への不安を意味の体系のなかで認識させる」が△です。「意味論的な危機」による不安は、「予測される未来」だはなく「予測できない」ことによる不安です。

④「意味の体系のリアリティを改めて人間に気づかせる」が△です。「意味の体系のリアリティ」という考え方は出てきません。「意味の体系に回収する装置」が「リアリティを伴った妖怪」であるという話です。リアリティがあるのは妖怪であり、意味の体系ではないということです。

⑤「意味論的な危機を人間の心に生み出す」が×です。てんで違います。

問3 正答

妖怪の話はイメージしやすかったので、ここまでサクサク読み進めてきたのですが、第七段落に入って「アルケオロジー」が出てきた途端に雲行きが怪しくなり始めましたね。笑

ここで言う「アルケオロジー」とは、「エピステーメー」の変化として歴史を描き出す試みです。そして「エピステーメー」とは「思考や認識を可能にしている知の枠組み」です。よって、アルケオロジーは「思考や認識を可能にしている知の枠組みの変化として、歴史を描き出す試み」です。この後もいろいろ述べられていますが、この点からブレなければ正当はできると思います。

選択肢の吟味

①「その理解にもとづいて考古学の方法に倣い」が△です。「アルケオロジー」は通常は「考古学」ですが、ここで言うアルケオロジーはその中に(一般的な)考古学的方法を前提とするものではありません。

②正答です。上述した内容から外れません。

③「分類して整理し直すことで、知の枠組みの変容を描き出す方法」が△です。「変容を通して歴史を描き出す」のがアルケオロジーであり、「変容を描き出す」とは少し違います。

④「社会的な背景を踏まえて分析し記述する」が△です。「エピステーメー」の変化として捉えるという内容がほぼ含まれていません。

⑤「大きな世界史的変動として描き出す」が△です。「世界史的」といった話は出てきません。

問4 正答②

「妖怪の『表象』化」を考えるため、ここで言う「表象」という概念について確認しておきましょう。十三・十四段落の内容から、「表象」は「人間の完全なコントロール下に入った記号」であり、「その形象性、視覚的側面が重要な役割を果たす」ものです。それは現代で言うところの「キャラクター」であり、表象となった(キャラクター化された)妖怪は、「完全にリアリティを喪失し、フィクショナルな存在として人間の娯楽と題材へと化していった」とあります。ここまでを踏まえて選択肢を見てまいりましょう。

選択肢の吟味

①「人間が人間を戒めるための道具になった」が△です。そんな話はしていないと思います。

②正答です。「フィクショナルな存在」を「架空の存在」と言い換えていることがわかりますね!

③「人間世界に実在するかのように感じられるようになった」が×です。「表象」としての妖怪は、リアリティを失いフィクショナルな存在となっていますので、「実在するかのように」という内容には反します。

④「人間の力が世界のあらゆる局面や物に及ぶきっかけになった」が△です。あんまりそういう話をしているのではないと思います。

⑤「人間の性質を戯画的に形象した」が△です。ここでいう妖怪が「人間の性質を形象した(人間の性質を描き出している)」とは書かれていません。

問5(i) 正答④

第二・第三段落は、問2で見たように「意味論的な危機を意味の体系の中に回収するための文化的装置としての妖怪」についての箇所です。続く第四・第五段落は「妖怪に対する認識がどのように変容したのか。そしてそれは、いかなる歴史的背景から生じたのか」と言っていますので、問の投げかけといって差し支えないかと。

選択肢の吟味

①Ⅰの「娯楽の対象になったのか」が×です。Ⅱもあんまり合ってません。

②Ⅰが↑と同じなのでダメです。具体的な紹介もしていないのでⅡもダメです。

③Ⅰに「娯楽の対象」が入っているのでこれもダメです。つまりⅠが「文化装置としての妖怪」を述べていることさえ押さえられていれば正答できますね……。

④正答です。「認識の歴史性」とぼかしていますが、「妖怪は歴史的にこういうふうに捉えられていたんだよ」という説明ではあるので、誤りではありません。

問5(ii) 正答③-④

各時期と、その時期と妖怪観の対応に気をつけましょう。近世(ここでは江戸時代)の妖怪は、フィクショナルで「表象」としての妖怪です。よってⅢは③がもっとも適切です。④は「人を化かす」というちょっと余計な要素が入っています。

一方で、近代に入ると「人間」って意外と意味不明じゃね、という認識が現れ始めます(第十六・十七段落)。人間の内面は、人間のコントロール下に完全に置かれているわけではなく、人間はその中に不気味なものを抱えた存在であったと人間が気づき始めたわけです。妖怪も、そんな不可解な人間の内面を投影したものとして現れ始め、それによって改めて「リアリティ」を伴った存在となっていきます。よってⅣは④が正答です。

選択肢の吟味

↑の解説に代えさせていただきます。

問5(iii) 正答②

結構意味わかんない問題やな〜と思ってました。なんかとりあえずノート3を読んで間違ってないことを言ってるやつを選んだら正解でした。あんまり本文と繋がってる感じもしないし、なんだかなぁ。「死はあるいは僕よりも第二の僕に来るのかも知れなかった」から外れなければ概ねOKです。

選択肢の吟味

①「別の僕の行動によって自分が周囲から承認されているのだと悟った」が△です。そんなことを悟っている描写はありません

②正答です。最後の「これは『私』が自分自身を統御できない不安定な存在であることの例にあたる」が微妙〜に成立してるんか怪しいし、むりくり本文と結びつけようとしてる感じもあってちょっと……と思いますが、まぁ完全に否定されるものではない気がします。

③「会いたいと思っていた人の前に」が?です。ノート3中の本文にはそうは書かれていません。また、それに伴って「別の僕が自分に代わって思いをかなえてくれた」も?です。

④「自分が分身に乗っ取られるかもしれないという不安」が△です。ノート3中の本文にそのような内容がありません。

⑤「他人にうわさされることに困惑していた」が△です。「僕」は「K君の夫人」に変な声掛けをされて困惑してはいますが、「うわさされること」に対して困惑しているとは書かれていません。

読解後のつれづれ

「アルケオロジー」が入ってきたところが一番厄介でしたが、そんなに設問自体は難しいものではありませんでした。

個人的には、「私」についてもうちょっと深掘る設問があってもよかったんじゃないかな〜と思っています。本文において、かぎかっこ付きの「私」とかぎかっこがつかない私が併存している点は認識されていましたでしょうか。明瞭なのは第十七段落の「『私』は私にとって『不気味なもの』となり、いっぽうで未知なる可能性を秘めた神秘的な存在となった」です。

「私」って、私にとってもよくわからん部分があって、それに伴ってそんな「私」を投影した妖怪の質も変わっていったということですね。「私」ってわからんよね、っていう感覚、割と面白そうでもうちょっと考えてみたいです。

まぁそれはいつかどこかでそういう課題文にぶつかったら考えてみます。笑 今回もお疲れ様でした!

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