大学入学共通テスト国語 2021本試[3(古文)]解説

目次

解説

ご留意
選択肢の吟味において、「×・△・?」を選択肢の該当箇所に付けていきます。×は「これはちゃうやろ」、△は「ちゃうかもしれん」、?は「びっみょ〜」って感じです。結局は△と?がついた箇所の吟味となることがほとんどです。
あと、私が解答作成前に解いて間違えたところは正直に言います(かなしいけど)。ちょっとご参考にください。

問1

(ア) 正答④

間違えました〜! よくわからんでした。「え/まねび/やら/ず」なので、「え〜打消」が入っており、「〜できない」です。「まねぶ」は「真似る」や「学ぶ」なのですが、ここでは「その様子を真似る」→「表現する」としているのでしょう。傍線部前の「さるべき人々は歩ませたまふ」は、大納言や中納言といった身分の高い人たちも自分の足で歩いていたということで、そんなことは普通あり得ないので、その様子を書き尽くすことはできない……という文脈でしょうか。

(イ) 正答③

長家が亡くなった妻のことを思い返している場面で、傍線部も妻に関する言及です。「めやすし」は「良い感じ」で、ここで絞るのは難しいですが、「おはせし」を「いらっしゃった」とちゃんと訳している点で②か③に絞れます。その上で、「めやすし」に近いのは③です。

(ウ) 正答①

やや難しめでした。直訳すると、「里に出たならば」です。「なば」は完了の助動詞「ぬ」の未然形+ばなので、順接仮定条件で、「ならば」を外れてはいけません。よって、③〜⑤はやや外れます(⑤はいけんことないですが、「すぐに」がどこから出てきたのかが説明できません)。あとは「里」なので「旧都」は合わないかな〜と思いまして、①です。かつての都であっても、さすがに都のことを「里」とは言わないかなと。

問2 正答①

本文を読んだだけでは「今みづから」の意味がわかっていなかったのですが、設問文に「長家がそのような対応をしたのはなぜか」とあり、ここから逆に考えていけました。

「今みづから」は、「すぐに私の方からお返事(ご連絡)します」の意味かと思います。前の文脈から辿ると、「宮中にいる女房も、(長家に)さまざまなお悔やみの連絡を差し上げたけれども、まぁほどほどに良い関係の人には、『すぐに私から連絡します』とだけ返事にお書きになった」という感じですね。

選択肢の吟味

①正答です。傍線部直前の「よろしきほどは」の「よろし」は、「まぁ良い」なので、「並一通りの関わりしかない人の場合は」ということになるのかと思います。心の余裕がない様子は、傍線部少し前の「ただ今は〜過ぐしたまふ」に現れています。

②「妻と仲のよかった女房たち」が△です。「内裏わたりの女房」は「宮中に姿を現すことがある女房」でしょうし、「妻と仲が良かった」というわけではなさそうです。

③「心のこもったおくやみの手紙に対しては」を?としました。「よろしきほど」を、「心のこもったおくやみの手紙」と読むとこうなりかねないですが、この時点で長家が「丁寧に返事をするから待っててね」という心中とは思いづらいです。

④「ほんの一言ならば返事を書くことができたから」が△です。長家の状況説明にとどまり、意図・心中に触れていないため、あんまり説明になってない気がするのですが……。

⑤「すぐに自らお礼の挨拶にうかがわなければならないと考えた」が△です。文面としては読めそうですが、前後の悲しみようから、そこまで他者に気を遣っている様子は読み取れず、①よりも適切な説明になっているとは言い難いです。

問3 正答①

よくわからん設問でした。傍線部前後は長家が亡くなった妻の生前の様子を思い返している場面ですが、妻は絵を描くことに熱心で、夏の絵を枇杷殿に献上していたというエピソードに関する部分です。あんまりそうじゃなくねってところを外していく感じで、①が残りました。

選択肢の吟味

①正答です。「よくぞもてまゐりにける」は「よくぞまぁ差し上げておいたものだなぁ」という感じで、まぁ合ってる気がします。

②「妻とともに過ごした日々に後悔はない」が△です。ここまで悲しんで生前の様子を思い返しているので、そんなにスッキリした気持ちではないでしょう。

③「『ままに』は『それでもやはり』という意味で」が△です。さすがに「ままに」から「やはり」は出せません。「そうは言ってもやはり」と訳すのは「なほ」ですね。

④「妻の描いた絵物語のすべてが焼失してしまったことに対する長家の悲しみを強調」が△です。ここの「よろづにつけて」は「何かと」の意味合いであり、「すべて焼失」にかかる部分ではありません。

⑤「『させ』は使役の意味で」が×です。尊敬の意味だと思います。長家(中納言)に二重尊敬が使われているかはまちまちですが、ちらほらあるので違反ではなさそうです。

問4 正答⑤

本文全体に関わる問題ですが、概ねの該当箇所が想定されるので、その辺りを読み直して考えていきましょう。

選択肢の吟味

①「『大北の方』だけは冷静さを保って人々に支持を与えていた」が△です。課題文冒頭で、大北の方も「おしかへし臥しまろばへたまふ(何度も身体を起こしたり倒したりしなさった)」とありますので、そうでもないです。

②「『僧都の君』は〜気丈に振る舞い亡骸を車から降ろした」が?です。亡骸を車から降ろしたのが僧都の君であるかは断定できません。

③「妻を亡くしたことが夢であってくれれば良いと思っていた」が△です。厄介ですが、該当しそうな箇所「ただ今はただ夢を見たらんやうにのみ思されて過ぐしたまふ」は、「今はもうただ夢を見ているようにばかりお思いになって過ごしなさる」であり、「夢であってくれれば良い」とはやや違うの、お分かりいただけますでしょうか。

④「自分も枕が浮くほど涙を流していると嘆く歌を贈った」が△です。進内侍の歌には「や〜らん」で疑問・反語の係助詞・係り結びが入っていますので、「〜ているでしょうか」という訳になります。よって、進内侍が長家のことを思いやって、「涙は身を沈めるほどで、枕だけが浮かんで見えているような悲しみのご様子でしょうか」と推察を投げかけていると読めます。

⑤正答です。問1(イ)や問3の内容とも被りますが、亡くなった妻の様子に合致します。

問5 正答③・⑥

各和歌の関係を整理しておきましょう。和歌Xは、悲しむ長家に対して「東宮の若宮の御乳母」が送った歌です。それに対して長家が返事をするわけですが、『栄花物語』では和歌Y、『千載和歌集』では和歌Zがその返事として記されているということですね。よって、和歌Y・Zはともに長家の返歌ですが、内容や表現が異なっている点を設問としています。

選択肢の吟味

①「その誠意のなさが露呈してしまっている」が?です。「誰もつひにはとまるべき世か(誰も永遠に留まることができる世ではない)」から、慰めはそれなりに真剣なものなんじゃないかな〜と思います。

②「和歌Zはその内容をあえて肯定することで、妻に先立たれてしまった悲しみをなんとか慰めようとしている」が△です。和歌Zは、「誰もずっと留まれるってわけじゃないのはそうなんだけど、死に遅れてしまうのはやはり悲しいよ」という形で、悲しさを改めて表明しています。

③正答です。①・②で解説した内容に合致しています。

④「悲しみを癒してくれたことへの感謝を表現している」が×です。②で言及したように、和歌Zは「やはり悲しい」という表明です。

⑤「私の心を癒すことのできる人などいないと反発した歌」「長家が他人の干渉をわずらわしく思い」が△〜?です。和歌Yは、「自然と悲しみが慰められる方法が(今は)全くないので、(この悲しみから考えれば)世の中に常に変わらないものがないというのも、今の私とってはわからないものだ」という意味です。よって、「私の心を癒すことのできる人などいないと反発」とはちょっと違う気がします。

⑥正答です。私も気づいてなかったのですが、和歌Yの後に続く文脈として、長家が亡くなって妻の生前の様子を思い返す場面が来ています。和歌Xで、「世の中無常なんだから」と励まされ、長家は「この薄れない悲しみからすれば、無常なんてないやい」と反発したものの、「もしかするとこの悲しみや妻への思いも薄れていってしまうのかもしれない」(次段落冒頭)と意識され、妻の様子を思い返すこれ以降の場面に繋がる……というわけですね。

読解後のつれづれ

人物関係図を書いておいてくれるの、優しいですね。あまりメインとしては登場しませんでしたが、彰子は紫式部が仕えた人です。平安時代は人間関係が狭いので、概ねの人間関係や性格を理解しておけると役に立つ部分もあるかもしれません(まぁそこまでせんでも良いですが)。

妻を亡くした長家の悲しみが中心に描かれていましたが、「この悲しみも薄れていってしまうのかもしれない」ということに一種の恐れを感じている様子が、とても人間的な感じがします。悲しみは薄れていった方がいい場合が多いですが、長家にとっては「妻を亡くした悲しみが薄れていくこと」は「妻への思いがその程度であったということ」と表裏一体であり、「そんなことはないはずだ」と長家自身も思っているのかもしれませんね。

とまぁそんな感じで、今回もお疲れ様でした!

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