大学入学共通テスト国語 2022本試[1(評論)]解説

目次

解説

ご留意
選択肢の吟味において、「×・△・?」を選択肢の該当箇所に付けていきます。×は「これはちゃうやろ」、△は「ちゃうかもしれん」、?は「びっみょ〜」って感じです。結局は△と?がついた箇所の吟味となることがほとんどです。
あと、私が解答作成前に解いて間違えたところは正直に言います(かなしいけど)。ちょっとご参考にください。

問1

(i)

(ア)過剰 / ①冗長 ②剰余 ③浄化 ④常軌

各語の意味を捉えられていれば勘でも当たるかもしれません。

(イ)傷ついた / ①勧奨 ②鑑賞 ③感傷 ④緩衝

①の勧奨はあまり馴染みがない語彙かもです。勧誘・勧告して奨励する感じです。

(エ)遂げる / ①類推 ②生粋 ③麻酔 ④完遂

こちらもそんなに難しくないと思います!

(ii)

(ウ)襲い
①夜襲 夜に襲う
②世襲 世代を超えて受け継ぐ
③奇襲 いきなり襲う
④来襲 襲って来る

(オ)与える
①供与 そなえ与える
②贈与 おくり与える
③関与 何かと関わる(漢文で「与」を「と」と読むことありますよね)
④授与 さずけ与える

問2 正答①

「次のように思考を展開していく」とあるので、次を読むわけなのですが、どちらかというと引用部ではなく、そのさらに後の筆者の見解に関する段落の方が大事です。設問が「筆者はよだかの思考の展開をどのように捉えているか」ですので。

「よだかは自分の生のどこかに困難を抱えていて」、いずれ食べられる自分が他の生き物を殺して食べている、「それならば自分は何も食べずに絶食し、空の彼方へ消えてしまおう」といった箇所から判断します。

選択肢の吟味

①正答です。上述の内容に沿っています。

②「鷹に殺されてしまう境遇を悲観し」が△です。よだかが苦悩しているのは、鷹に殺されることが理由ではありません。

③「弱肉強食の関係を嫌悪し」が△です。弱肉強食が嫌なのではなく、「いずれ殺される自分が、他の生き物を殺しているのが意味わからん」という感じです。

④「新しい世界を目指そうと考えるようになる」が△です。「空の彼方に消えてしまおう」ですので、新しい世界を目指すといったポジティブな感じではありません。

⑤「遠くの世界で再生しよう」が△です。よだかの理解に関して「再生」を明示するような箇所はありません。

問3 正答②

傍線部は、「それは、」から繋がりますので、「それ」が何かを読み戻しますと、「心が傷ついたよだかが、〜『せなかがぞっとした』『思ひ』をもつという一点」です。よって、問2でも筆者によって解釈されている「よだか」の心の動きを踏まえ、この事実陳列的な記述から最も外れない選択肢を考えます。

選択肢の吟味

①「弱肉強食の世界でいつか犠牲になるかもしれないと気づき、自己の無力さに落胆する」が△です。よだかも「自己の無力さに落胆」したというよりは、「食われるのに食う(食ってしまう)」というところへのキモさがあったという感じです。

②正答です。「強烈な違和感」って何も説明できていないのですが、だからこそ無難な選択肢と言えます(違和感って「どうあるべきだがそれと違う感じ」なのですが、この選択肢では「どうあるべき」も「どう違う」も説明されていません)。

③「自己を変えようと覚悟する」が△〜×です。問2とも被りますが、筆者はよだかの心中を「空の彼方に消えてしまおう」と捉えていますので、そんなに前向きな捉え方はできません。

④「自己の罪深さに動揺する」が?です。少し難しめ。かなりよだかの心中っぽいのですが、あくまでこれは「よだかの心中を筆者がどう捉えているか」に重点がある問題です。皆さんの「よだかはこう思ってそう」という推定に惑わされないように気をつけてくださいね。

⑤「弱肉強食の世界を支える存在であったことに気づき」が?です。「背中がぞっとした」「思ひ」が「弱肉強食」に関わるものであったかは読み取れません。正答である②の「違和感」に比べて具体的過ぎて、正答とは言いづらい感じです。

問4 正答②

「二つ」が何なのかをちゃんと明確にしておきましょう。それは、「どこまでが食べものであり、どこからが食べものでないのか」に対する「二つの極端の見方」です。

一つめは、「人間は『食べて』などいないという見方」であり、「人間は生命の循環の通過点にすぎないのであって、地球全体の生命活動がうまく回転するように食べさせられている、と考えること」です。

二つめは、「循環のプロセスと捉えることです。つまり、ずっと食べものである、ということ」。我々の排泄物(我々にとっての非食べもの)も、微生物にとっては食べものだということでしょう。

これ、油断すると共通点というより、「どう違うの?」と思うくらい似ています。ちゃんと違いと共通点を明確にしておきましょう。捉える対象である物質の巡りに関しては共通で、捉え方だけ違うって感じです。一つめは「食べてなどいない」で、二つめは「ずっと食べものである」です。

選択肢の吟味

①「微生物の活動と生物の排泄行為から生命の再生産を捉えている」が△です。「生命の再生産」が主題ではなく、「食べもの」に関する言及です。

②正答です。二つの見方は「受け渡し」というプロセスに着眼しています。

③「食べられる側の視点から消化と排泄の重要性を捉えている」が×です。食べられる側の視点はそんなに含まれていないと思います。

④全体的に×です。う〜ん。ほとんど本文から読み取れません。

⑤「微生物の働きから消化のメカニズムを捉えている」が×です。「消化のメカニズム」ではなく「どこからが食べものか」についての見方です。

問5 正答④

表現に関する問題です。解答根拠が明瞭なわけではないので、結構難しいと思います。「このラインはOKでこのラインは言い過ぎ」という判断は、「何となくそうだよな」の積み重ねの上に成り立つものです。私の判断基準もご参考にいただきつつ、経験値を積みましょう〜!

選択肢の吟味

①「食べられる生きものの側の心情を印象的に表現する」が△です。文章Ⅱはその生々しさ(?)により、ともすれば情緒的な印象すら与えますが、食べられる側の心情を表現している箇所は特段ありません。

②「消化器官の働きを厳密に描いている」が×です。比喩的な表現が挟まり、厳密性(にはある程度の客観性が伴う必要があると思います)が高いとは言えません。

③「食べることの特殊な仕組みを筋道立てて説明している」が△です。食べることを「特殊」として表現しているわけではありません。擬態語は「ドロドロ」と「くねくね」があるので、判断が難しいですね……。

④正答です。比喩は「歯の隙間に残ったわずかな分身」(暗喩・擬人法)、「酸の海」(微妙ですが比喩寄りの表現)、「胆汁が流れ込み消化をアシスト」(擬人法)、「微生物の集合住宅」(暗喩)などがあります。「軽妙に」は微妙ですが、軽妙じゃないとは言えないかな〜〜という程度です。

⑤「誇張して」が△、「消化の複雑な過程」も?くらいです。比較的判断が難しめの選択肢でした。比喩を使っているので誇張的に読めますが、④に比較すると△寄りかなと……。また、消化の過程は複雑っちゃあ複雑なんですが、あくまで一本道であり順番にいろんなことが起こるという方が近いので、こちらもやや微妙です。

問6(i) 正答②

合ってましたが難しかったです。ちょっとセコいんですが、(ii)から逆に考えた部分もあります((ii)は〈1〉〈2〉を踏まえて〈3〉を書いたとしているので、逆に〈3〉から〈2〉を考えることもできるかと)。

割とスッと外せるのは①(「弱者の生命の尊さを意識させる」が△)と③(「意図的に」が×)ですが、②と④で悩みます。②は、よだかが無意識的に虫を食べてしまうことから言えそうですし、④は「食物連鎖からの解放」という言及がありますし。ただ、文章Ⅱでは「食物連鎖からの解放」という内容は少し捉えづらく、〈3〉で一つにまとめることが難しいかもしれません。(ii)に関わりますが、文章Ⅱは「受け渡しのプロセス」の着目しており、そのプロセスを進める原動力として、「無意識的な捕食・生命活動の存続」を文章Ⅰから取り出しているという感じです。こちらに繋がるのが②ということで……。

選択肢の吟味

上述の通りです。

問6(ii) 正答③

(i)で解説の通り、文章Ⅰと文章Ⅱから取り出せる要素を使って何が言えるかという問題です。ご留意いただきたいのは、これは文章Ⅰ・Ⅱの筆者の主張から離れ、Mさんが新しく述べるものに過ぎないという点です。よって、必ずしも文章Ⅰ・Ⅱで述べられている内容に沿っている必要はありません。が、述べられている内容を曲解してはいけません。大変だ〜。

選択肢の吟味

①「自他の生を昇華させる行為は、地球全体の生命活動を円滑に動かすために欠かせない要素である」が△です。よだかの文脈にある「生の昇華」は「ぞっとした」違和感→「空の彼方に消えてしまおう」という形で現れていますので、生命活動の円滑さに寄与するという主張の素材とすることはできません。

②「よだかが飢えて死のうとすることは、生命が本質的には食べてなどいないという指摘に通じる」が△です。通じていません。笑 よだかの文脈と、「物質の循環」を結びつけるのはかなり難しいです。

③正答です。蛇足ですが、この選択肢中の「しかし」は「逆接」という働きが強くないと感じます。「一方」とか「ちょっと話を変えまして」みたいな感じで、転換性を持っているくらいです。そういう「しかし」もあるよな〜って思っててください。

④「食物連鎖の関係は、命のバトンリレーのなかで解消されるものである」が△です。「食物連鎖の関係」=「命のバトンリレー」なので、解消はされないんじゃないでしょうか。。。

読解後のつれづれ

文章Ⅱ、正直なところちょっと生々しすぎませんか? 試験中にちょっと気持ち悪くなったりする人いなかったんだろうか。。。題材と書き方で、文章は人に感覚をもたらすことができるというのは感じられますね。

今回も全問合ってました。が、昔にこの問題はやったことある気がしており、素直な満点ではないですね……。皆さんも国語で点数取りましょう。共テで点数が取れるってのも良いことですが、きっと皆さんが働くときに、文章を的確に読めることは助けになります(私は今それを実感しつつ働いてます笑)。

そんなこと言われても〜っていう声が聞こえてきそうです。とりあえず目下は点数取れるのが良いことというだけで頑張るのもまた良いかと。笑 今回もお疲れ様でした!

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