大学入学共通テスト国語 2022本試[3(古文)]解説

目次

解説

ご留意
選択肢の吟味において、「×・△・?」を選択肢の該当箇所に付けていきます。×は「これはちゃうやろ」、△は「ちゃうかもしれん」、?は「びっみょ〜」って感じです。結局は△と?がついた箇所の吟味となることがほとんどです。
あと、私が解答作成前に解いて間違えたところは正直に言います(かなしいけど)。ちょっとご参考にください。

問1

(ア) 正答②

品詞分解すると、「まどろま/れ/給は/ず」で、「まどろむ」は眠気等でうとうとする意味です。「れ」は、ここでは可能の助動詞「る」の連用形で、打消が付随しているので不可能です。全体を直訳すると「お眠りになれない」となります。ということで②です。

(イ) 正答②

ちょっと難しかったです。「ねぶ」は「おとなびる」という意味で、傍線部の直前に「二十に余り給ふ」とあることもちょっとだけヒントになります。さらに、「ねびととのひたる御さま」が「神もなごり慕ひ給ひけるもことわりに(神も斎宮が近くを離れるのを名残惜しく慕いなさるのも道理であって)」と言われるほどベタ褒めです。よって、「⑤年相応の」も年齢に関しては述べていますが、より褒めていると捉えられる「②成熟した」が正答となります。

(ウ) 正答③

「おほかた」は「普通の、並の」という感じですので、傍線部の直訳としては「並一通りであるように」となります。その後の文脈としては、「『御対面うれしく。御旅寝すさまじくにや』などにて、忍びつつ文あり」と手紙を書いているようですので、あくまで普通な書き出しで手紙の挨拶を書いたということだとわかります。

問2 正答③

傍線部Bは、「思す」とありますので、尊敬語が使われる対象の心情です(つまり、院か斎宮です)。ただ、その直後に「けしからぬ御本性なりや」と述べており、これは好色な院へのややの揶揄(批判とも言えましょうか)かと思います。よってこの箇所を院の心情として、選択肢を絞っていきましょう。

選択肢の吟味

①「斎宮の気持ちを表している」が×です。「つつましき御思ひも薄くやありけむ、(つつしむお思いも薄かったのだろうか、)」と続きますので、おそらくここも斎宮ではなく院の話をしていると思います。

②「斎宮の心中を院が想像していることを表している」が×です。地の文にある疑問の投げかけは基本的に筆者から読者への投げかけであり、院の心中を筆者が想像しているものです。

③正答です。「いぶせし」は「気が詰まる」「詰まるように苦しい」という感じです。

④「『む』は意思の意味で」が×です。婉曲か仮定だと思います。「やはりひたすら気が詰まる気分のまま終わってしまうようなことは」もしくは、「終わってしまったならば」みたいな感じかと。

⑤「院が斎宮の態度を物足りなく思っている」が△です。ここの「口惜し」は、④にもかかわりますが、「気づまりのまま終わってしまうと残念だ」という文脈ですので、「物足りない」とは読めません。

問3 正答④

「せちにまめだちて」は、「急いで(焦って)真面目ぶって(真剣そうに)」のような意味合いです。セリフの内容は「かく折よき事もいと難かるべし(このようにタイミングが良いことも到底ないだろう)」ですので、時機を逃すまいと切羽詰まった様子が伺えます。

選択肢の吟味

①「二条と斎宮を親しくさせてでも」が×です。文章Ⅰの二段落目に「(二条は)かの斎宮にも、さるべきゆかりありて睦ましく参りなるる」とあるので、院が二条を斎宮に近寄らせたのではなく、元々なんらかの縁があったものと思われます。

②「斎宮の身分と立場を気遣う院の思慮深さ」が×です。そんなこたぁない。

③「斎宮に対する院の誠実さ」が△です。「まめだちて」は真面目なので「誠実さ」に繋がるかもしれませんが、セリフの内容から純真な誠実さのように捉えるのは△です。

④正答です。好色さから来る性急さという感じです。

⑤「斎宮の利益にもなるのだと力説する」が△です。院のセリフにそのような内容がありません。

問4(i) 正答①

文章Ⅱにおける院の様子に関する言及ですので、文章Ⅱに照らして正しいものを考えます。

選択肢の吟味

①正答です。文章Ⅱ七行目の「いかがすべき、いかがすべき」が該当します。

②「恋心と葛藤が院の中で次第に深まっていく」が?です。葛藤が深まっているとはあまり読めません。

③「斎宮の気持ちを繰り返し思いやっている」が△です。あまり思いやっている感じはありません。

④「斎宮から期待通りと返事をもらった院の心踊る様子」が△〜×です。斎宮は「何と申すべき方もなくて」という返事でしたので、あまり院が満足する感じではなさそうです。

問4(ii) 正答①

間違えました! 私は②を選びました。う〜ん。

文章Ⅱは二条が書いたものですので、ところどころに二条(筆者)の見解が挟まる箇所があります。それに関してそれぞれ成否を考えるのですが、読むべき箇所が明らかにされているので、その周辺を読み込む形になります。

選択肢の吟味

①正答です。しかし私がこれを外したのは、「二条が〜好色の虫が起こり始めたであろうことを感づいている」が違うかな〜と思ったからです。というのも、該当箇所の後の「よそも御心苦しくぞおぼえさせ給ひし」を誤読しまして、「他の(院の周りの)人たちも、院の好色さから物思いが始まり、面倒なことになると心苦しくお思いになっていた」のような感じかな〜と思い、じゃあ「〜物思ひの種にか」は二条の心情じゃなくね?と思ったという算段です。これは間違いでした。「よそも御心苦しくぞおぼえさせ給ひし」は二重尊敬が含まれるので、おそらく主語は院です。とすると、「いつしかいかなる御物思ひの種にか」と思っている主語は、「よそも御心苦しくぞおぼえさせ給ひし」院とは別の人になります(結論としては二条です)。というわけで、「〜種にかと」と「よそも御心〜」の間で主語が切り替わっています。ここから概ね、「そのうちどんな物思いの種になることだろうかと(二条が思っていた通りで、院は)見るからに心苦しそうにいらっしゃった」という感じになるかと思います。よって当該箇所はあっている感じです。

②私が間違えた選択肢です。結果的に、「世間離れした斎宮には全く通じていないことを面白がっている」が△なのかと思います。斎宮が世間離れしているという記述が明瞭でなく、また「をかしくてあれば」の対象は、「いかがすべき、いかがすべき」でわたわたしている院の様子と捉える方が適切そうです。

③「斎宮を起こしてしまったことに恐縮している」が×です。斎宮がまた寝てしまったので、二条は「う〜ん」と思っている場面です。

④「導く手立てが見つからずに困惑している」が×です。焦点になっている「むつかし」は、「気づまりだ、気持ちがふさぐ」のような意味合いになります。よって、斎宮の元に連れて行けと院に責められて、むっとしている二条の様子になります。

問4(iii) 正答④

また間違えました〜! ①を選びました。

文章Ⅱを踏まえて文章Ⅰが書かれており、かつ文章種(というより筆致)が違うため、文章Ⅰの方がおもんなくても仕方ないという話です。じゃあ文章Ⅰはどのように書かれているか、という設問ですが、これも文章Ⅰ・Ⅱの両方を広く読み、誤りを断定していかないといけないので割と大変です。

選択肢の吟味

①私はこれを選びましたが誤りです。「院を理想的な人物と印象付けて」が△かもしれません。文章Ⅰにおいても、第一段落終わりの「けしからぬ御本性なりや」など、普通に院のこともディスっていますので、あんまりです。

②「複雑に絡み合った三人の恋心」が×です。二条はなんも恋心に絡んでいていません。おもろがっているくらいです。

③「いつかは私になびくことになるという歌」が△です。文章Ⅰで省略されている歌(「知られじな〜」)は、シンプルに院が「斎宮のことが気にかかっている」ということを詠んだ歌ですので、「なびくことになる」はややズレます。また、「神に仕えた相手との密通という事件性」も?です。そうかもしれないのですが、そうとは書いていません。

④正答です。私は「斎宮の心情に触れている」を△としていましたが、書いてあるんすね……。文章Ⅱの終わり頃の「夢うつつともなく近づき聞こえ給へれば、いと心憂しと思せど」の「いと心憂し」がおそらく斎宮の心情です。よって否定する箇所がなく、正答となります。

読解後のつれづれ

久々に間違えました。いや〜。こういう対話文の問題、傍線部が引かれているわけでもなく、一つ見逃すと間違えるというヒリヒリさがありますね。

今回の大問は、文章Ⅰと文章Ⅱの関係をある程度俯瞰しておくと解きやすかったかと思います。文章Ⅱには問1以外の傍線部が全く引かれていないことにはお気づきでしたでしょうか。文章Ⅰは文章Ⅱを踏まえて書かれているということも鑑みて、問2や問3は、文章Ⅱも参考にしつつ文章Ⅰの傍線部を考えるという構造になっていそうです。こういうのが最近の共通テストでは求められている感じがありますね。頭の働かせ方を再認識しておきましょう〜。

というわけで今回はこのくらいで。お疲れ様でした!

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