大学入学共通テスト国語 2022本試[4(漢文)]解説

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解説

ご留意
選択肢の吟味において、「×・△・?」を選択肢の該当箇所に付けていきます。×は「これはちゃうやろ」、△は「ちゃうかもしれん」、?は「びっみょ〜」って感じです。結局は△と?がついた箇所の吟味となることがほとんどです。
あと、私が解答作成前に解いて間違えたところは正直に言います(かなしいけど)。ちょっとご参考にください。

問1

(ア) 正答④

「復」は「復た(また)」と訓読して「また、ふたたび」を意味します。知識として覚えておきたい感じです。一度自分の庭で見た蝶を、また瓜爾佳氏の庭で見たということですね。

(イ) 正答②

「審」は「審判」や「審議」という熟語に使いますね。「審視」で、品定めをするようにしっかりと検めつつ見たという感じでしょうか(そんな熟語はなさそうですが)。

(ウ) 正答④

概ねの意味は「つかむ」ですが、さらに目的語から考えましょう。ここでの「得」の目的語は「其の(=蝶の)形色を」なので、「蝶の見た目を」という意味になります。よって「捕獲する」などは不適です。

問2 正答④

今回は読点で繋がっているのもあり、傍線部Aの後を参照するのがわかりやすかったです。「園に至りて之を啓くに及べば、則ち空匣なり(庭にやってきてこれを開けると、空箱であった)」とあるので、傍線部は「蝶を箱に入れて私の庭に帰る・帰そうとする客がいた」みたいな感じになりそうです。これに合うのが④です。

蛇足ですが、「奉じて」という謙譲語をおそらく蝶に対して使っているのはちょっと面白いですね。

選択肢の吟味

各選択肢でどこが間違ってると言うのが難しいので割愛させていただきます。悪しからず。

問3 正答⑤

「苟くも」は仮定の表現なので、それで④か⑤に絞れます。これは覚えておきましょう。その上で、「どうして〜だろうか」みたいな表現がないので⑤です。「我当(まさ)に之を図かんとす」で「私はきっと之(蝶)を絵に描くだろう(描いてやろう)」です。

選択肢の吟味

ほとんど↑の解説で言ってしまったので、これまた割愛します。

問4 正答③

間違えました!! 怪しいと思った。

大学でも漢文に触れることが少ないまま大人になってしまったことにより、律詩における聯の定義の記憶が薄れてしまっていました……。これを機に皆さんは押さえ直しておいてください。

律詩では、前から二句ずつをまとめて「聯」と言い、一つ目の聯を「首聯」、二つ目以降が「頷聯」「頸聯」「尾聯」と続きます。「首」は頭、「頷」はあご、「頸」は首、「尾」はお尻なので、身体の上から順番で覚えられます。高校生の頃、これを習った時は「顔周辺に集中しすぎでは??」と思った記憶があります。笑 これを踏まえて選択肢を見てまいりましょう。

選択肢の吟味

①「七言絶句」が×です。「絶句」は四つの句から成り立つ詩で、「それ以上短くすると何も言えなくなる」という意味で「絶」です。五言絶句や七言絶句があります。今回は八句あるので律詩です。

②「形式の制約が少ない七言古詩」が×です。課題文の詩も、しっかりと律詩の制約を守っています。

③正答です。が、私がこれを外してしまったのは上述した聯の定義が曖昧になってしまっていたのと、「それぞれ」を読み飛ばしていたことによります。「頷聯と頸聯がそれぞれ対句」なので、「頷聯と頸聯が対句」じゃなくて良いんですよね……。

④「絶句」と書かれているので×です。

⑤正答です。が、私はこれを選びました。押韻できてないんですよねェ……。「香」は音読みでは「こう」のはずであり、この詩における押韻「ア音(多→タ、何→カ、羅→ラ、過→カ)」に合致しません。「香」を「か」と読むのは「かおり」から来たもので、たぶん和製な気がします。そうだよね〜。

問5 正答⑤

「奈何・何如(いかん)」は、目的語が一語(一文字)である場合、間にその目的語が挟まります。ので、①のように「春も」では目的語になっていないためそれとの整合性がとれず、⑤のように「春を」で目的語になっているのが正しいです。それ以外の選択肢は「奈何」が違います。

選択肢の吟味

上述の解説に代えさせていただきます。

問6 正答⑤

蝶がとまったところを順番に把握していけば難しくはありません。最初は「蝶の園中に来たる」から「之を呼べば扇に落つ」です。次は「蝶復た余の園の台上に見る」です。最後は「其の袖に落ち」です。したがって⑤が正答です。

選択肢の吟味

そればっかですみませんが、↑の解説で事足りてると思いますので略します。

問7 正答⑤

概ね序文の内容で解けます。本文内容から外れる物を消していくと①と⑤が残ったので、あとは筆者の心情がどちらに近いかで選びました。

選択肢の吟味

①「蝶が扇や絵とともに他人のものとなったことをむなしく思っている」が△〜?かと思いました。懐古はしていますが、むなしさまでは言いづらいかと……。

②「箱のなかにとらえて絵に描きたいと考えていた」が×です。蝶を箱にとらえたのは筆者ではありませんし、絵に描きたいのも筆者ではありません。

③「春の庭園の美しさを詩にできたことに満足する」が?です。満足感は書かれていない気がします。また、「珍しい蝶の模様をあしらった服ができあがった」も×です。そのような内容はありません。

④「都を離れているあいだに人に奪われてしまい」が△です。「是の園も又た他人に属す」とあるので、人のものになったことは確かですが、「奪われた」とは書かれていません。

⑤正答です。「懐かしく思い出している」は「回憶すれば芳叢真に夢の如し(懐かしく思い出せば、穏やかな草花の様子がまさに夢のようであった)」から適切です。

読解後のつれづれ

漢詩の制約の多さは、改めて見るとなかなかすごいものですね。押韻、対句といった決まりをクリアしながら、自分の言いたいことを良い感じに詠まないといけないという。制約に関する概ねの知識は押さえておけると、スムーズに設問理解が進む場合もあると思います。まぁ制約という点では和歌もいい勝負かもしれませんが……。

というわけで今回もお疲れ様でした!

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