大学入学共通テスト国語 2022追試[3(古文)]解説

目次

解説

選択肢の吟味において、「×・△・?」を選択肢の該当箇所に付けていきます。×は「これはちゃうやろ」、△は「ちゃうかもしれん」、?は「びっみょ〜」って感じです。

問1

(ア) 正答②

品詞分解すると「みな/し/はて/つ」です。「みな」は「全て」、「し」はサ変動詞「す」の連用形、「はて」は下二段動詞「はつ」の連用形(現代語の「果てる」です)、「つ」は完了・強意の助動詞「つ」の終止形です。直訳でも「全てし終わった」となるので、語の切れ目さえ分かればなんとかなります。文脈(葬式やその後始末なども、世話をする人が多いので、全てし終わった)も注釈を使えば取りやすいので、合わせておきたい設問です。

(イ) 正答⑤

頻出の「さらに〜打消」で「全く〜ない」です。これで①と⑤に絞られます(④もちょっと残るかもしれません)。「おぼゆ」は「思われる」「わかる」なので、⑤の方が適切です。ちょっと残った④ですが、「もはや〜ない」は「さらに〜打消」から少し離れるのと、傍線部の後には「悲し」が続くので、「もはや何も感じないくらい悲しい」となり、何も感じないのか悲しみを感じてるのかちょっとよくわからない感じになります。「悲しみ(それ)以外何も感じないくらい」なら大丈夫でしょうが、そのようになっているわけでもないので、やはり⑤に比べて不適であるには変わりません。

問2 正答③・⑤

これ以降、特定の傍線部がない設問が続きますね。ちゃんと逐一読めないといけないので、難度としてはやや高まります。基本的には消去法で、本文の該当箇所を特定し、本文に反する選択肢を外したり、本文に書かれていないことが含まれる選択肢を外したりしていきましょう。

選択肢の吟味

①「その不真面目な態度に作者は悲しくなった」が△です。第二段落の一つ目の和歌の前に、「悲しう覚えて」とありますが、これは僧たちの不真面目さに対して悲しく思っているわけではありません。僧たちの話は、「亡くなった人(作者の母)の姿を見られる、みみらくの島というところがある」というような内容で、作者はそれに対して「いと知らまほしう、悲しう覚えて(とても知りたく、悲しく思って)」いますので、母が戻ってこないという悲しみは明らかであるが、せめて姿が見られるという(ありもしないかもしれない)みみらくの島について知りたい気持ちは抑えられない……という気持ちかと思います。

②「知っているなら詳しく教えて欲しいと兄に頼んだ」が△です。二段落目一つ目の和歌は作者が詠んだものですが、これは兄に対して詠んだものではありません。悲しみを晴らすために詠んだ和歌を、兄が聞いて続けて和歌を詠んだという流れです。

③正答です。二段落目二つ目の和歌の「島がくれにし人」は「(みみらくの)島に隠れていってしまった人」のため、亡くなった母親を指します。「かくれる」は「死ぬ」の隠語として使われることも多い語です。「雲隠れ」とかはよく言いますよね。

④「兼家にいつ会えるかははっきりしないと伝えた」が?です。兼家からの手紙に対して筆者は「ものおぼえざりしほどのことなればにや、おぼえず(何も考えられない時のことであったからだろうか、覚えていない)」と述べており、「いつ会えるかはっきりしない」には該当しません。

⑤「兼家は、(中略)だんだんといい加減な態度になっていった」が?です。第三段落の記述の限り、兼家は立っての面会を求めたり手紙を送ってきたりなど、特段いい加減な態度とは言えません。「ものおぼえざりしほどの〜」の主語は作者なので、これも該当しません。主語の切り替わりに注意しましょう!

⑥正答です。「わずらわしく」は微妙かな〜と思いましたが、「むつかしきまで書きつづけてあれど」から、多少は取れるかなと。「むつかし」は「気が詰まる、ムッとする」という感じなので。

問3 正答⑤

個人的に第四段落がめちゃエモでした。「来し時は、〜道すがらいみじう悲し」は大体以下のような内容です。(山寺に)向かっていた時は、膝に寝かせていた人(母)が何とか良くなるようにと思いつつ、自分は汗だくで、そうはいっても母親が良くなるかもしれないと思って心も気丈だった。今回(山寺からの帰り)は、(車の中は)とても快適で、呆れるほどくつろいで乗ることができているのも、(母親の不在がかえって感じられて)道中とても悲しいものだ……という感じですね。

帰りの車の中が快適なことで、行きの車との対比が浮かび、かえって母親の不在が感じられるという内容です。エモくないですか!

選択肢の吟味

正答である⑤以外は、少しずつ本文には書かれていない内容が含まれています。本問は、消去法ではなく⑤を積極的に選びました。つきまして選択肢の逐一の吟味は割愛させていただきます。

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問4(i) 正答⑤

傍線部引いてくれればいいのに(いちいち該当箇所を探すのがちょっと大変)。簡単そうな見た目をしていますが、ややよくわからないところもちらほらある設問です。選択肢を見ていきましょう。

選択肢の吟味

①「『なり』は伝聞を表し」が×です。「人も住まずなりにける」は「人も住まなくなってしまった」なので、「なり」は助動詞ではなく動詞の「なる」の連用形です。

②「思わず見てしまったところという意味である」が△です。「見入れければ」は「覗き込む」ような感じがしますので、「思わず」ではないかと。

③「庭を囲むように造った垣根のことである」が多分×です。「前」なので、囲むようには造ってないんじゃないかなと思いました。それに加えて⑤が言えそうだったのでこちらを外しました。残念ながら「前栽」という語を私も暗記していたわけではありません。

④「時の経過に対する驚きを表している」が△です。⑤にも関わりますが、「はやくそこに侍りければ」は「かつてそこでお仕えしていたので」ですので、「時の経過が早い」という意味合いではありません。

⑤正答です。「侍り」は「あります、ございます」といった丁寧語に加え、「お側にいる、お控えする」という謙譲語もあります。荒れ果てた利基の曹司を見て、かつてそこ(利基のところ)にお仕えしていたので、昔を思い出して歌を詠んだということですね。

問4(ii) 正答④

間違えました! ②を選んでしまったのですが、確かに④で良さそうです。比喩の読み取りが難しい気がします(そこが読めてなかったので私も間違えました)。

本文第五段落の和歌前後と【資料】の和歌は、各人物が死別した人に残された庭を眺めながら詠んでいるという共通点があります。本文中で作者はその点を捉えて「ひとむらすすき虫の音の」を引いています。この点は①〜⑤全て問題はないかなと思います。あとは各選択肢ごとに見ていきましょう。

選択肢の吟味

①「母が亡くなる直前まで手入れをしていた」が△です。本文に「わづらひしよりはじめて、うち捨てたりければ」とあるので、母が病気がちになって以降、あまり手入れがされていなかったことがわかります。

②「荒れ果てた庭のさびしさが『虫の音』によって強調されている」が△です。【資料】中の和歌は「虫の音のしげき野辺」としているので、虫の音は割とにぎやかめな方です。私はこれを選んでしまったのですが、これは勝手に「しげき」がすすきにのみ係っているように捉えてしまったためです。

③「虫の美しい鳴き声を利基に聴かせたいという思いが詠まれている」が?です。【資料】の和歌は「昔を思いやりてよみける」としか書かれていないため、「利基に聴かせたい」とまでは読み取れません。和歌の内容としても、庭の様子を眺めて坦懐しているまでなので、利基へのメッセージ性は薄いです。

④正答です。が、私は「亡き母が生前に注いだ愛情のおかげで花が咲きほこっている」に?を付けていました。そんなん書いてあるか?と思いまして……。ただ、第五段落の和歌の下の句「とどめおきける露にかかりて」がそれに該当するんだな〜と答え合わせをして気づきました。母が残した花々への愛情を「とどめおきける露」と喩えているわけです。露は水分なので、草花にとっては良いイメージのものです(必ずしもそうではないのかもしれませんが……)。作者は「花々への母の愛情の残滓」を感じて、それを「露」と喩えて和歌に織り込んでいる感じですね。

⑤「花が庭に咲き残っていることへの安堵が表現されている」が△です。母が残した花々に関する和歌ですが、「安堵」は読み取れません。

問5 正答③

適切でないものを選ぶので、まぁ比較的間違いなく違うものを考えます。逆に言えば、③以外はまぁ合ってるということになります。?を付けた選択肢もありますが、まぁ見てまいりましょう。

選択肢の吟味

①「めり」は推定の助動詞で、細かくいえば視覚情報からの推定を示します。「らしい」「ようだ」「ように見える」といった訳出をしますが、ここでは「ようだ」が他人事感を出している感じですね。第六段落には「めり」の活用形が複数含まれていますので、問題ないかと思います。

②「おのがじし」は「それぞれ」といった意味合いですが、第六段落の中でも「おのがじし」の後に「我」の記述をする場面が二度あります。「他の人はそれぞれ間仕切りをして過ごしている中、自分だけ気が紛れることもなく」「皆それぞれ帰って行った。私の気持ちはますます心細くなって」というように、「他のそれぞれの人」と作者自身の対比と言って良いかと。「作者の理解されない悲しみ」は正直微妙かなと思って?を付けていましたが、③よりはマシかと思います。

③「兼家が仏の姿を描いてくれたことへの感謝の気持ちが、係り結びを用いて強調されている」が△です。「ぞ〜ける」で強調されているのは「仏を」の箇所であり、「感謝の気持ち」を強調しているとは言えません。

④「いとど」は「一層」「ますます」という訳出になります。②にも関わりますが、服喪を終えて親族がそれぞれ帰っていき、作者は一層心細くなってしまったということです。

⑤「人」は注釈にある通り兼家のことですので、「人はかう心細げなるを思ひて、ありしよりはしげう通う」は「兼家はこのように(私が)心細そうなのを心配して、今までよりは頻繁に(私のところに)訪れる」となります。

読解後のつれづれ

なかなか描写に手が込んでいる文章でした。設問としても、文法もあり、和歌もありという感じで、総合力が試された設問となっています。第四段落の記述や第五段落の和歌など、直接的な心情表現ではなく、シチュエーションの描写や引き歌などで自身の心中を浮かび上がらせる書き方は読み取りが難しいものではありますが、振り返ってみるとはえ〜ってなります。力がつく大問ではありそうなので、忘れた頃に解き直してみるのもおすすめです(しかし追試をやるような時期なら、本番までに忘れることはないのかもしれませんね……)。今回もお疲れ様でした!

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