大学入学共通テスト国語 2022追試[4(漢文)]解説

目次

解説

選択肢の吟味において、「×・△・?」を選択肢の該当箇所に付けていきます。×は「これはちゃうやろ」、△は「ちゃうかもしれん」、?は「びっみょ〜」って感じです。

問1

(ア) 正答③

「即」は「すなわち」です。現代語でも「即○○する」なら「すぐに○○する」になるかと思いますし、文脈にも合っているので問題ないかと。ただ、文脈に合っていない可能性もあるので辞書的な意味だけで飛びつかないようにはしてください。補論ですが、「すなわち」と読む漢字は「即」と「則」が代表的なものです。「則」の方は訓読みすると「則って(のっとって)」となりますので、「これに則って考えると」みたいなイメージを中心に持っておいていただけると良いかと思います。

(イ) 正答②

「善」に「称賛する」という意味があるかはちょっとわかりません。「良いものとして称揚する」とかいうイメージから広がっているのでしょうか。文脈としては「しかし、太宗はこれ(遂良が雉を吉兆としたこと)を[善]、史官も批判しない」となります。よって[善]は太宗が「遂良は所謂多識の君子なるかな」と言っている箇所に重なりますので、「称賛する」で良いかと思います。

問2 正答③

①を選んで間違えました。「須く〜すべし」を捉え間違えておりました。「須く〜すべし」は「当然〜すべきだ」といった意味合いになりますので、①だと「人は当然学が無いべきだ」となり、主張として不適切です。

③だと「人は学が無くてはならない」となるので、「みんな学がないといかん、(その中でも)遂良はよう知っとる」という意味になります。

選択肢の吟味

それ以外の選択肢も、概ね以下のような意味になるので不適です。

②「人は学が無いに限る(学が無いに及ぶものはない)」

④「人はやはり学が無いようだ」

⑤「人は学が無いだけではない」

問3 正答②

おそらく書き下し文は「豈に常の雉ならんや」であり、反語の句型となります。「豈」は詠嘆や反語など複数の用法をマークし、書き下し文が「ンヤ」ならば反語の可能性が高いです。ただ今回は送り仮名が書かれていませんのでやや難しいですね。傍線部Bを含む一文の解釈は、「私が思うに、秦の雉は童子が変身した雉であり、どうして普通の雉だろうか(いや、普通の雉ではない)」となります。選択肢は反語であることを明言できていないので訳出としてはイマイチですが、②以外はどちらかと言うと雉を普通のものとして捉える方向性なので、その点でも選ぶことができたかもしれません。

選択肢の吟味

上述の通り、正答である②以外は雉が普通なものではないと言えないため、直前の「秦雉珍宝也」と矛盾します。つきまして選択肢の吟味は割愛です。

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問4 正答③

傍線部Cの直後で「此れ乃ち災異なり」と言っていますので、「災異」に当たる内容が傍線部Cとなります。蘇軾(課題文の筆者)は、雉を吉兆とした褚遂良を批判する文脈でこの文章を書いており、雉を吉兆ではなく災厄の前触れとして捉える見方もあるのに、それを述べなかった褚遂良を批判していると考えられます。この文脈に合う形で「災異」の内容として繋げられるのは③のみとなります。これを嵌めると「野鳥が理由なく何度も宮中に入ってくるのは、災異の前触れである」と繋がります。③以外は「此乃災異」の対象として受けられません。

選択肢の吟味

こちらもあんまり選択肢を外していくタイプの問題ではないので、割愛させていただきます。

問5(i) 正答①

「得失」は「損得」や「成功と失敗」というような意味ですが、文脈も見つつ判断しましょう。波線部より前は、「○○を鏡にすれば、〜〜がわかる」の繰り返しです。「銅を鏡にすれば身なりを整えられ、過去の歴史を鏡にすれば過去の盛衰を知ることができ、人(他者)を鏡にすれば得失を明らかにすることができる」となります。選択肢のうち、④や⑤は既に述べられている内容なので外れます。他者を鏡にする(他者に相対化してもらう)ことによりわかることで言えば①か③になりそうですが、「得失」のもともとの意味からして①の方が近いかと。本筋からズレますが、③って「臣下たち(から見た主君に対して)の人望の有無」か、「臣下たち(自身の他者から)の人望の有無」かがはっきりしないですよね。さすがにたぶん前者だと思うのですが、どちらにせよそういう多義的な選択肢は作らない方がいいと思います。

選択肢の吟味

選択肢も短いので割愛させていただきます。

問5(ii) 正答④

【資料】では、太宗から見て魏徴がどのような人物であったかを伺うことができます。【資料】中の三つの「鏡」については、(i)で触れた通りですが、【資料】末尾に「今魏徴殂逝し、遂に一の鏡を亡ふ」とあるため、魏徴は太宗にとって「人(他者)」の鏡だったとわかります。また、その前の一文でも「朕常に此の三の鏡を保ち、以て己の過ちを防ぐ」とあるため、魏徴の存在があって、太宗は自身の過ちを防ぐことができていたとなります。よって、魏徴は太宗の「鏡」として、太宗の過ちを正すことができていたと言えます。この内容を捉えつつ、余計なことを言っていない選択肢を考えていきましょう。

選択肢の吟味

①「事件を誤解している太宗に真実を話しただろう」が△です。リード文より、太宗は「何かの前触れではないかと怪しんで、臣下に意見を求めた」とありますので、「よくわからん」と思っており、「誤解している(誤った考えを持っている)」とは言いづらい気がします。また、「真実」もよくわかりません。この時点で雉を「災異」とする判断の方を筆者は支持していますが、あくまで予兆の話であり、これが果たして「真実」とまで言えるかどうかは微妙です。

②「鏡で身なりを点検する時のように、魏徴は太宗の言動に目を光らせていた」が△です。魏徴は「人」の鏡であり、身なりを点検するために使う「銅」の鏡ではありません。また、「事件にかこつけて太宗の無知をたしなめただろう」も△です。筆者は雉を「災異」とする見方を支持しており、「かこつけて」という表現には当たりません。

③「魏徴は太宗のことを誰よりも深く理解していたから」が?です。魏徴が太宗の誤りを正す助言を行えていたのは事実でしょうが、それが必ずしも「太宗のことを誰よりも深く理解していたから」かは微妙です。また、「事件で悩む太宗に同情して慰めただろう」も△です。太宗はどういうことか知りたがっていたまでで、「事件に悩む」とまでは言えません。

④正答です。「諫める」はここでは「反省を促す」としていますが、「忠告する」というような意味です。

⑤「魏徴は歴史の知識で太宗を助けてきたから」が△です。魏徴は「人」の鏡であり、「古」の鏡ではありません。もちろん魏徴は博識でしょうし、雉に関する過去の逸話も知っているはずですが、魏徴の「人」の鏡としての働きは歴史知識による物が主ではありません。

問6 正答①

本文最後の一文を解釈すると「遂良はこれ(高宗鼎耳祥=雉を異変と捉えた故事)を知らないはずがないのに、この見方を取らないで吉兆とする見方を取ったのは、忠臣とは言えないだろう」となります。筆者(蘇軾)にとっては、魏徴がいたら遂良とは違う見方をしただろう(かつ、蘇軾はそちらの見方を支持する)、という文章内容になっていますので、遂良が雉を吉兆としたのは批判の対象となっているわけですね。

選択肢の吟味

①正答です。褚遂良への批判と、「魏徴だったらこうしただろう」の両方が含まれています。

②「褚遂良は、事件から貴重な教訓を引き出して太宗の気を引き締めた」が△です。褚遂良の見方を取り違えています。後半も割とダメです。

③「褚遂良は、事件は過去にも例があり珍しくないと説明して太宗を安心させた」が△です。これも褚遂良の見方を説明できていません。

④「普段から勉強して主君の求めに備えておくべきだった」が△です。あんまりそういう話はしていません。てかこの選択肢なら褚遂良はそれなりに忠臣と言えるのでは?

⑤「褚遂良は、事件の実態を隠し間違った報告をして太宗の注意を逸らしたが」が△です。褚遂良は別に実態を隠したというわけではありません。

読解後のつれづれ

比較的内容もすっきりしており、あまり難しいという感じではありませんでした。登場人物が複数おり、その点だけちょっとややこしかったですね。

今回は雉について、吉兆と災厄の前触れと両方の見方ができるというところがややポイントでした。こんな感じで、一つの出来事についていろんな見方ができることは往々にしてあるかと思いますし、言ってしまえばどうとでも捉えられるわけです。蘇軾の見方だって批判されうるかもしれませんよね。まあそんなことを言ってみたところで、今回もお疲れ様でした!

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