大学入学共通テスト国語 2023 本試[1(評論)]解説

目次

解説

ご留意
選択肢の吟味において、「×・△・?」を選択肢の該当箇所に付けていきます。×は「これはちゃうやろ」、△は「ちゃうかもしれん」、?は「びっみょ〜」って感じです。結局は△と?がついた箇所の吟味となることがほとんどです。
あと、私が解答作成前に解いて間違えたところは正直に言います(かなしいけど)。ちょっとご参考にください。

問1

(i)

(ア)冒頭 / ①感冒 ②寝坊 ③忘却 ④膨張

感冒のボウは「冒される(おかされる)」と訓読みできます。あんまり出ないけど知っといて損はない。

(エ)琴線 / ①卑近 ②布巾 ③木琴 ④緊縮

共テ漢字に出がちな漢字語句ベスト10には入るのではないかと(私の中で)言われている「琴線」。「卑近」もよく出るのでこれを機に知っておきましょう!

(オ)疎んじる / ①提訴 ②過疎 ③粗品 ④素養

正直「疎んじる」はパッと出てこなかったんですが、一通り選択肢の熟語はかけたのでそこから選びました。そういう解き方でもいいか。

(ii)

(イ)行った(おこなった)
①行進 「いく」の意味です。
②行列 「ある向きの列」みたいな意味な気がします。
③旅行 「いく」の意味です。
④履行 「おこなう」の意味で、正答です。

(ウ)望む
①本望 「願い希望する」の意味です。
②嘱望 これも「願い希望する」の意味です。
③展望 「風景などをみはらす」の意味で、正答です。
④人望 なんて言えばいいんでしょ。人が信じられている度合い? ③がとても正答らしいので大丈夫です。

問2 正答③

いきなりですが私は間違えました。②を選んだので……。残念ですが私が間違えた理由も含めて見ていきましょう。

傍線部を含む段落、「ガラス障子の向こうに見える庭の植物や空を見ることが慰めだった」「視覚こそが子規の自身の存在を確認する感覚だった」が判断素材となります。

選択肢の吟味

①「現状を忘れるための有意義な時間になっていた」が△かな〜と思います。慰めとなるのは必ずしも有意義な時間というわけではないですし、子規の当該の時間が有意義か無意義かは言及がありません

②私はこれを選んじゃったわけですが、「ガラス障子から確認できる外界の出来事」がやや外れるのかもしれません。本文における「見ること」「視覚こそが」という要素が、選択肢では「確認できる」とされており、「見る」にかかわる大事なポイントを外している選択肢のようです。「自己の救済」はちょっと大袈裟かな?と思って△をつけていましたが、「慰め」から広げられるという判断らしいですね。

③正答です。「生を実感する」が大袈裟かなと思って?をつけていました。②が△で③が?なのなら③選べるはずやん……。まぁ結構悩んだんですが、②の「視覚」要素の外しを見逃し続けてしまった感じですね。。。

④「外の世界への想像をかき立ててくれた」を×としました。「見ること」自体が慰めであって、「想像をかき立てる」とはちょっと距離があります。

⑤「作風に転機をもたらした」が×です。作風の話はしていません。

問3 正答②

傍線部Bの直前から、ガラス障子は「外界を二次元に変えるスクリーンでありフレーム」であり、ガラス障子によって子規の書斎には「プロセニアムがつくられた」とされています。引用文から、「プロセニアム」とは舞台と客席を区切る額縁状の部分であり、視界を制限する「フレーム」と、外界を二次元の平面へ変える「スクリーン」の両方の働きをもつことがわかります。よって、視界を制限したり、外界を二次元の平面へ変えたりするのが「視覚装置」であることがわかります。

選択肢の吟味

①「見る楽しみを喚起する仕掛け」が△かなと思いました。「視覚装置」の主眼は「楽しみを喚起する」ところまで言及されていません。

②正答です。ただ、「〜範囲を定めることで、外の世界を平面化された〜」の「ことで」には?を付けていました。「フレーム」としての働きによって「スクリーン」としての働きが現れるという繋がりはないように見えたからです。まぁ許されるんでしょうか。

③「切り離したり接続したりすることで」に?を付けています。「スクリーン」としての働きは「切り離したり接続したり」で説明できているとは言えなさそうです。

④「新たな風景の解釈を可能にする」が△です。ここで言う「視覚装置」において、そこまでの効果が言及されている訳ではありません。

⑤「絵画に見立てることで」が△です。「プロセニアム」は「額縁状の部分」とされていますが、「絵画に見立てる」とは言われていません。ガラス障子は絵画として見られていたのではなく、あくまで外界を二次元に変えているだけです。

問4 正答⑤

子規のガラス障子は「操作されたフレームではない」とされていますが、傍線部はそれとと「他方」で繋がれていますので、ル・コルビュジエの窓は「操作されたフレーム」であると言えます。「窓は採光のためにあり、換気のためではない」なども言及としてありますが、その後の引用文に「壁を建てることによって視界を遮ぎり、次に連らなる壁面を要所要所取り払い、そこに水平線の広がりを求める」とあるところが判断根拠となります。

選択肢の吟味

①「外界に焦点を合わせる」を?としました。「カメラ」という比喩はされていますが、ここで言うカメラに「焦点を合わせる」という主眼があるかは微妙です。「焦点を限定する」なら言えると思うんですが、「焦点を合わせる」は「ピントを合わせる」のような話になりそうで。また、「壁を枠として視界を制御する」もちょっと△かなと。「壁で遮り、窓で限定しつつ広げる」がル・コルビュジエの窓なので、厳密に言えば構造がズレています。

②「居住性を向上させる」「生活環境が快適なものになる」が△です。「操作されたフレーム」という主たる視覚効果の説明となっていません。

③「アスペクト比の変更を目的としたものであり」が×です。本文にも「その結果、窓の形、そして『アスペクト比』が変化した」とあるので、あくまで結果的な変化であり、ル・コルビュジエがそれを目的として行ったとは書かれていません。

④「囲い壁を効率よく配置する」が?です。「効果的に」は言える気がしますが、「効率よく」は微妙です。また、「風景への没入」も何とも言えません。限定されない風景に比べて、限定することでしっかりと(ル・コルビュジエにとって「本当の意味で」)景色を眺めることができるとは言われていますが、それが「没入」であるとは述べられていません。

⑤正答です。「かえって広がりが認識されるようになる」はちょっと気になるところですが、引用文中の「水平線の広がりを求める」から繋がるところかと思い、まぁ許せる範囲かと思います。

問5 正答③

難しめです。全体的に、文章Ⅱの方が何言ってるのかわからないがち。こちらでは「壁による限定」により焦点が置かれていること、「動かぬ視点」による「沈思黙考」の空間が住宅の価値だとされていることは最低限押さえておきましょう。あとは選択肢から怪しい部分を削いでいきます。

選択肢の吟味

①「三方を壁で囲われた空間」は×です。「北から東にかけて、さらに部分的に南から西にかけて視界を閉ざす」とあるので、三方ではありません。また、「住宅は仕事を終えた人間の心を癒す空間になる」を?としました。「仕事の時間」との対比は用いられていますが、対比されているのは「心の琴線に耳を傾ける〈瞑想の時間〉」です。「心を癒す」と「心と向かい合う」はちょっと違うかなと。

②悩んだ選択肢です。強いて言えば「住宅はおのずと人間が風景と向き合う空間になる」が?かな……と。「人間が風景と向き合う」は「沈思黙考」という要素が含まれていない感じがします。

③正答です。本文内容に照らして最も無難な感じですね。

④「一箇所において」を?としました。視点が限定されていることと、「動かない」ことは事実なのですが、必ずしもそれが一箇所であるとは述べられていません。また、「住宅は風景を鑑賞するための空間になる」も△です。沈思黙考要素が抜けています。

⑤「内部の人間を瞑想へと誘導する構造」が△と思いました。正答である③の「視界を制限する構造」と比べ、当初から住宅の「瞑想目的」が強く書かれている選択肢になります。その点で無難じゃない選択肢と言えます。

問6(i) 正答④

いや〜本文内容についての問題だけでなく、ややメタい「読むこと・読み方」についての問題が出てるんですね共通テスト。これはえらいなぁと思いました。

引用文は、引用者によってどこを切り取るかが恣意的に選択できます。同じ部分を取り出すにしても、自分の文章で言いたいことを補強してくれる箇所を(中略)なども使いながら取り出すわけです。今までの問題で見たように、文章Ⅰは「壁による限定→窓による開放」で、文章Ⅱは「壁による限定」です。引用文もそれに合わせて引用の仕方がチューニングされています。

選択肢の吟味

①「壁の圧迫感について記された部分が省略されて」が×です。文章Ⅱの引用で省略されているのは窓による開放についての箇所です。

②「その壁によってどの方角を遮るかが重要視されている」が△〜×です。「北から東にかけて、さらに部分的に南から西にかけて視界を閉ざす」とあり、割と全部遮ってます。よって「遮る方角が大事」というわけではなく、「遮ることが大事」という方があっています。

③「圧倒的な景色とそれを限定する窓」が△です。「景色」は引用文の主眼ではありませんし、ここで「限定」の働きを担っているのはどちらかと言うと(窓ではなく)壁です(少し留意ですが、子規のガラス障子→プロセニアムの話にもあるように、窓に限定の働きがないというわけではありません。ただここでは別の話として捉えています)。

④正答です。とても無難な選択肢ですね。特段言うこともありません。。。

問6(ii) 正答②

端的に言えば、ル・コルビュジエと子規には直接関係はありません。文章Ⅰの筆者の中で順番に取り上げることによってどういう理解が促進されるかを考えるのが良さそうです。そんなの考えながら読んでないと思いますので、選択肢から考えましょう。

選択肢の吟味

①「ル・コルビュジエの建築論が現代の窓の設計に大きな影響を与えたことを理解しやすくするために」が?です。影響を与えたことは多分事実なのですが、子規の例からそれがわかりやすくなるとは言えません。

②正答です。子規とガラス障子の関係は、「ガラス障子を通して外界を見る」という視覚的な関係が成り立つというものです。ル・コルビュジエの窓・壁の設計も、人間と外界の関係についてであるという点では共通しています。その上でル・コルビュジエはその視覚を操作し、沈思黙考の空間を作ろうとしたという点で発展的と言えるかもしれません。

③「子規の芸術に対してガラス障子がもたらした効果」が×です。問2⑤の選択肢にもありましたが、子規の芸術(作品)にガラス障子が影響をもたらしたとは書かれていません。

④「換気と採光についての考察が住み心地の追求であった」が×です。ル・コルビュジエの窓は換気のためのものではありません。

問6(iii) 正答③

間違えました……これはやられた〜!って感じです。思考を惑わせる設問ですね。

「子規の話題」は文章Ⅰの中のものであり、正直言ってそのままでは文章Ⅱとは繋がりません。なので、子規の例に関する解釈を、文章Ⅱをベースに広げてあげないといけません。文章Ⅱは、壁による限定と沈思黙考の空間が主題であることを改めて押さえておき、選択肢を見ていきましょう。

選択肢の吟味

①「子規の書斎もル・コルビュジエの主題化した宗教建築として機能していた」が△です。ル・コルビュジエの主題は宗教建築ではなく、視覚の限定等にあります。

②「ル・コルビュジエの指摘する仕事の空間」が×です。ル・コルビュジエの言及において、「仕事」は住宅と対地的に書かれています。

③正答です。この設問、各選択肢中にある「そう考えると」がとても大事な気がします。「そう考えると」は仮定の話なので、この「そう考えると」以降は本文に含まれない内容でもOKなのですね。ていうかそもそも、「文章Ⅱと(文章Ⅰに含まれる)子規の例を結びつけるとすると」という仮定からこの設問が始まっているので、全体的に本文内容を飛び出す解釈(ただ、あくまで問6の会話文から出る解釈)を求めているという設問なのか。なるほど。(なんかちょっと納得した)

④誤りですが私はこれを選びました。。。文章Ⅱではなく文章Ⅰに関する言及しか含まれていません。文章Ⅰに関して言っていることはとても正しいですが、文章Ⅱと子規の例を絡める話としては不適格です。

読解後のつれづれ

いや〜恥ずかしながら共テらしい共テの問題をしっかり解いたのが初めてだったので、問6は「そういう頭の使い方するのか〜!」と思ってしまいました(間違えた言い訳)。でも、こういう「読み方」に関して考えることも確かに大切だよな〜と思います。今まで、「どのように読むのが正しいか」が問われていたわけですが、「どのようにも読めると考えるのが正しいか」を問われている感じで。

また、引用に関する問題も非常に示唆的で、引用者による切り取り方によって、引用文の印象は結構変わるということがわかります。これ、論文とかだけじゃなくメディアの切り取りとかにも言える話で、その辺はちょっと気をつけた方がいいよってメッセージもチラ見えしますね。

さすが共通テストといったところか。私も引き続き読み解きをがんばっていきたいものです。今回もお疲れ様でした!

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