大学入学共通テスト国語2023追試[3(古文)]解説

目次

解説

選択肢の吟味において、「×・△・?」を選択肢の該当箇所に付けていきます。×は「これはちゃうやろ」、△は「ちゃうかもしれん」、?は「びっみょ〜」って感じです。

問1

(ア) 正答①

直訳では「そうでもないほどの場所」です。「さらぬほどの所にだに、心殊なる用意のみおはする人なるに、ましておろかならむやは。」で、「そうでもないほどの場所でさえ、必ず並々ならぬ気を遣って支度する人であるのに、(三条院に行くのであれば)なおさら適当にすることはない」という感じです。「まして、三条院という重要な場所ならなおさらだ」なので、傍線部は比較(比況)対象として「それほど重要でない場所でさえ」です。「だに」は「さえ」と訳すことを必ず覚えておきましょう。

(イ) 正答③

「いつしか」は「早く」で覚えてしまった方がいい気がしました。「ゆかし」は頻出ですね。「見たい、知りたい、聞きたい」です。割と知識問題かもしれません。

(ウ) 正答①

「おくれる」は割と複数の文脈を持ちますが、今回は「(年齢に対して)成熟し遅れているところがなく」という意味合いです。「おくれたるところなくうつくしき人のさま」というように「うつくしき」と単純接続で並んでいるので、傍線部もポジティブな記述であると推測できます。②の「物怖じするところがなく」も近いですが、「うつくし」という外見寄りの判断と並べられているので、①の「未熟なところがない」という同じく外見寄りの判断の方が繋がりが自然です。

「おくれる」はそれ以外にも、「死に後れる(この世に残される)」の意味で使われることも多いですので覚えておきましょう!

問2 正答②

半分文法問題なので、選択肢の吟味にて詳述いたします。

選択肢の吟味

①「『ものの』は接頭語『もの』に格助詞『の』が接続したもので」が×です。格助詞の前は体言か連体形かと……。この「もの」は形式名詞の「もの」と言えば良いでしょうか。ちなみに接頭語の「もの」は「もの悲しい」とかの時のやつです。また、内容としても「女二の宮と結婚しても良いのだろうか」というよりは、異母妹である木幡の姫君に好意をなんとか薄れさせようとする嘆かわしさ、みたいな感じかと思います。

②正答です。問題ありません。

③「女二の宮に会ってみたいという願いを表している」が△です。ここの「見なし聞こえばや」は、(女二の宮に会うことによって)木幡の姫君への好意が紛れるくらいに、女二の宮は(自分が)好きになれる人だと見なし申し上げたい、という感じでしょうか。ちょっとややこしいですね。木幡の姫君への好意は、異母妹として本来ダメなやつなので、女二の宮のことを「この人こそ好きになれる人だ!」と思い込もうとして、木幡の姫君への気持ちを紛らわせようとしているという判断です。

④「いつのまにか女二の宮に恋をしていたことに対する気づきを表している」が×です。③の解説の通り、気づきの内容が不適です。

問3 正答③

傍線部がないタイプの設問ですね。前後をしっかり読めばよいというわけではなくなるので、やや難度は上がるかと思います。あんまりここを解説すりゃええという場所もないので、こちらも選択肢の吟味に譲ります。

選択肢の吟味

①「男君にあらためて畏敬の念を抱いた」が△です。本文では「よろづすさまじく覚え給ひけり」とあり、「すさまじ」は「おもしろくない」「殺風景だ」といった意味合いですので、「畏敬の念」とは到底言えません。春の中納言は、望んでいた女二の宮との結婚を果たせなさそうな状況になったので、何もかもおもしろくない(不愉快だ)みたいな気分になったということですね。

②「すべての力を注いで女二の宮を奪い取ろうという気持ちで日々を過ごしていた」が△です。これ①と同じ箇所を参照しているのでしょうか? とりあえず「よろづすさまじく覚え給ひけり」にはそぐわない内容です。

③正答です。「大宮おはせましかば、いかに面立たしく思し喜ばむと、殿はまづ思ひ出で聞こえ給ふ(母宮=関白殿の妻がいらっしゃったら、どれほど誇らしくお思いになり喜ばれただろうと、関白殿はまず思い出し申し上げなさる)」に合う記述です。

④「娘が幼かったころの日々が思い出され、あふれる涙を抑えることができなかった」が?です。いまいちどこの記述をもとに作られた選択肢かがよくわかりません。

⑤「院は、女二の宮の結婚相手にふさわしい官位を得るように男君を叱咤激励し」が×です。男君は大納言の官位を得ているので、これより上ってほぼいないです(左右大臣とかくらい?)。また、叱咤激励しているような場面も見当たりません。

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問4 正答②

こちらも傍線部がないタイプの設問ですね。選択肢が五つではなく四つになっているのは優しさなのでしょうか。

選択肢の吟味

①「女二の宮は景色だけを詠んだ歌を返して、男君の思いに応えようとしなかった」が△です。正直、女二の宮からの返歌の解釈は私もよくわからなかったのですが、「今朝」「時雨」「女郎花」といった、男君からの語を捉えて返歌していますし、「御手などさへ、なべてならずをかしげに(筆跡までも、並々ならず風情があり)」と褒めていますので、あんまり女二の宮の返歌はそっけないものではなかったのではないかと考えました(そしてその後②の選択肢を読んで、まぁそんな感じやろな〜って思いました)。

②正答です。第四段落末尾の「よろづに思ふやうなりと思すべし」に一致します。

③「密かに木幡の姫君とも関係を持とうと考えた」が△です。おいおいおい!笑 第五段落終わりの「人知れず心にかかる木幡の里にも並び給ふべしと見ゆるに」は、「(女二の宮のところは、男君が)人知れず気にかかっている木幡の里(=姫君がいるところ)と比べても同じくらい素晴らしいものだろうと思われ」という感じです。がんばって木幡の里(姫君)から離れようとしている心理も垣間見えますね。

④「男君と木幡の姫君の関係を察していた女二の宮は、この結婚の先行きに不安を感じた」が△です。第五段落は、基本的に男君の心中を描いており、女二の宮の心中は不明です。また、男君と木幡の姫君の関係を、(女二の宮含め)周囲の人が察している様子はあまり読み取れません。

問5(i) 正答①

な〜んかよくわからない設問です。[ステップ1]の指示に従い、【学習プリント】内の和歌について考えましょう。とはいえ、[ステップ2]で本文中の傍線部Bに戻るわけですから、男君・木幡の姫君とも連関はあるはずで、それは兄と妹の禁断の恋、みたいなやつです(伊勢物語の当該箇所が実妹なのかはわかりませんが、少なくとも男君と木幡の姫君は異母兄妹なので、ややヤバさは軽減される気も?)。

で、空欄Xは「人」が「若草(=妹)」を「結ばむこと」なので、「他の人が妹と結婚すること」しかなくね、と思いますし、空欄Yも「妹への恋心」で良くね、と思ったので選んだら合ってました。これは、妹が(自分ではなく)他人と結婚することを兄がモヤってるという心情で、設問(ii)につながります。

選択肢の吟味

①正答です。妹への恋心は、普通あってはならないことなので、「などめづらしき言の葉ぞ」にも合います。

②空欄Y「妹への祝福」が△です。妹を祝福するのは普通なことなので、「などめづらしき言の葉ぞ」に合いません。

③空欄X「自分が妹を束縛して結婚させないこと」が△です。「人」は自分ではなく他人のことを指しているかと思います。

④空欄Y「妹への心配」が△です。②の解説に同じです。

問5(ii) 正答③

とりあえず、傍線部Bに含まれる「うたて(なり)」は、「憎らしい」「浅はかで愚かだ」「異様な感じがする」といった意味合いです。これは異母妹への好意を持つ自分に対して、我ながらちょっとキモいと思ってる感じでしょうか。そして、「人の結ばむこと」は[ステップ1]で見た通り、妹が(自分ではなく)他の人と結婚することにモヤる兄の気持ちでした。ここから、男君も「妹が自分以外の他人と結婚するのが嫌だなあとまでも想像してしまうのも、我ながらキモいもんだ」と自認している感じです。

選択肢の吟味

①「これを機に妹への思いを諦めようとしている」が△です。この時点では全然諦められてないです。

②「兄として木幡の姫君の結婚を願うようになり」が△です。[ステップ1]の正答の内容からして合いません。

③正答です。

④全体的に合いません。全然「うたて」ではないので、厳しいです。

読解後のつれづれ

このシーンだけでは、ライバルである「春の中納言」がただ負けた結果しか描かれていないのでちょっとかわいそうでしたね。「春の中納言」ってめっちゃ風情がありそうな呼ばれ名なのに。まぁこれより前の箇所でいろんなバトルが繰り広げられてきたのかもしれません。

全体的にバランスの良い問題だった気がします。的確に文法や語句を問いつつ、内容をちゃんと追えていければ正答できる設問が多かったです。登場人物や呼称が多かったため、迷子にならないように気をつけましょう。ではでは、お疲れ様でした!

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