大学入学共通テスト国語2023追試[4(漢文)]解説

目次

解説

選択肢の吟味において、「×・△・?」を選択肢の該当箇所に付けていきます。×は「これはちゃうやろ」、△は「ちゃうかもしれん」、?は「びっみょ〜」って感じです。

問1

(X) 正答①

マジでこの設問分からなかったです。間違えましたし答え合わせしても「なるほど!」ともならなかったのであまり解説のしようがないくらいです。どうしよう。笑

答えから逆算してかろうじて考えられたことを解説します。空欄Xの直後の「而」は置字ですね。この字は書き下し文においては送り仮名に吸収されてしまうため「読まない=置字」と捉えられていると思いますが、ちゃんと古典中国語において存在する意味はあり、何らかの接続関係を表すことが多いです。「何らかの」と言うように、単純接続(「〜て」)だったり逆接(「〜ども」)だったり、併置(「〜と」)だったり、いろいろです。今回は併置〜単純接続で、「[X]なりて(して)公」みたいな感じなのではないかと。「廉」は「清廉」という語のように、「いさぎよい」「欲が少ない」などの意味があります。ワシントンが政治を行う姿勢が「潔くて公平である」みたいな感じなのかもしれません。が、あんまりこの解説に自信がある訳ではありません(すみません)。

(Y) 正答⑤

「人君は一人の身を以て、四海の広きを御し、万務の[Y](に)応ず」なので、「君主は一人で広大な天下を治め、大挙する務めを果たす」みたいな内容かと思います。「一人之身」と「四海之広」「万務之衆」の対比ですね。

問2

(ア) 正答②

そんなに難しくないと思います。ワシントンが任期を終えた後、故郷に帰ってひっそりと暮らし、「寿を以て家に終はる」なので、「天寿を全うして家で亡くなった」でしょう。ここに含まれる置字の「于」は場所などを表して「〜において」のような感じです。

(イ) 正答④

「苟しくも」から始まっているので、「もし〜ならば」か「たとえ〜としても」の仮定表現です。今回は「天下に先だてば」と送られている箇所があるので、「もし〜ならば」で取りましょう。「至誠を以て賢と与にせずして其の独習を役して、以て天下に先だてば」とあり、「賢(賢者、他者の知恵)とともに(政治を)しないで」に続き、各語の意味からしても「己が一人で学んだことだけを使って」となります。(傍線部Bの話になりますが)そうするとあんまり広い範囲のことが見えないよって言ってます。

問3 正答⑤

④を選んで間違えました。「話聖東感憤す」しかヒントがないので、傍線部A自体の内容がよく分からなかったですし、答え合わせをしてもよく分かりません。う〜ん。

ただ、④は漢文法的に誤っているという点は理解できました。「人或いは議有りて」なら、「人或有議」ではなく「人或議有」の順番でなければいけません(主語→述語の順番です)。漢文法的に誤りがないという点で⑤とも言えますが、いまいち内容が分からないのでちょっとこれ以上の解説ができません……(すみません)。う〜ん、誰か教えてください。

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問4 正答①

問2(イ)の続きです。「賢(賢者、他者の知恵)」とともに(政治を)しないで、己が一人で学んだことだけを使って治世を行うと」に続きます。直訳すると「耳目や心が届くところは、どれほどの範囲とできるだろうか(いや、広い範囲には及ばない)」という反語的表現です。一人の力だけでは広い範囲をカバーできないよ〜ってことですね。

選択肢の吟味

①以外の選択肢は上記の内容に合いません。あまり消去法で選ぶ設問でもないので、悪しからず割愛させていただきます。

問5 正答③

「是の故に人君必ず心を清めて以て之に涖み、己を虚しくして以て之に待すること鑑の明なるが如く、水の止まるが如くなれば、則ち物至るも罔ふること能はず」の一文から考えればそれほど難しくありません。「人君も一人の力には限界があるので、清らかな心をもって治世に臨み、謙虚に治世と向き合う様子が、鏡のように明瞭で、波の立たない水面のようであれば、さまざまな物事があっても心が惑わされることはない」という感じですね。

選択肢の吟味

本問も正直なところ、消去法で解いていくという感じではないのですよね……。③以外は全体的に何も根拠がない記述となります。消去法で解いていく場合とは、本文の記述に照らして「ここは合ってる(もしくは微妙だ)けどここが違うからこの選択肢は違う」という判断を繰り返していく場合なわけですが、本問も正答の選択肢以外は根拠の取りようがないので、上述の一文をしっかり捉えられていれば吟味するまでもないという感じですね……。

問6(i) 正答①

省かれている送り仮名を推測して書き下すとすれば、「嗚呼、話聖東、戎羯の生まれと雖も、その為人(ひととなり)多く足る者有り」でしょうか。「為人」は現代日本語でも使えんことないですが、その人の人間性や性質といった感じのものをまるっと言う語です。直訳すると「ああ、ワシントンは異民族の生まれではあるが、その人間性は十分なものである」という感じですかね。

選択肢の吟味

①正答です。「戎羯の生まれと雖も」だけで「艮斎は西洋の人々に対する偏見から完全に脱却していたわけではないものの」としているのは、そこまで読み取れるんや……この生徒どうなっとんねん……と思いましたが、まぁそうなんでしょう。「為人」は「人柄」と訳していますね。

②「異民族の生まれだと言うものもいるが」は「戎羯の生まれと雖も」を厳密には訳せていません。「雖も」は普通に逆接です。

③「ワシントンの政策には肯定的に評価すべき面がある」が△です。大元の本文(【文章Ⅱ】)においては、艮斎はワシントン(ないしハミルトン)の政策を評価していますが、【資料】においては「為人」を評価しているのでややズレます。

④「異民族の出自であることを問わずに」が△です。こちらも「雖も」を厳密に訳せていません。

⑤こちらも「異民族の出身でなかったとしても」が△です。「だけれども」の意味である「雖も」で仮定みたいな読みをしてしまっています。

問6(ii) 正答⑤

【資料】のようにワシントンが評価されているというのは、すなわち「話聖東伝」の作者である艮斎の視点からして、ワシントンが優れていたと認識できるということです。また、大問とリード文にある通り、艮斎は儒学者ですので、当時の儒学における「優れた治世者像」を持っていたと捉えられます。今回の大問においては、【文章Ⅱ】がそういった「優れた治世者(=人君)像」を考える根拠となりますので、ワシントンと【文章Ⅱ】の人君像の共通点を考えましょうという設問となります。

選択肢の吟味

①「ワシントンが人々から反発されても動じなかった」が△です。そんなこと書いてあったっけ? もしかして「人或いは其の為す所を議する者あれば、話聖東感憤す」を逆に取っている?(どちらにせよ間違いなのですが)

②「個人の力より制度を重視する儒学の伝統的な君主像」が△です。【資料Ⅱ】において重視されているのは「制度」というより、他者の知恵を借りることや謙虚でいることなどです。

③「ワシントンが信頼する部下に自分の地位を譲った」が△です。ハミルトンは適材適所として登用していますが、地位を譲ったとは書かれていません。

④「ワシントンが政策の意図を率直に文章で示した」が△です。文章執筆に長けているハミルトンを登用していますが、「政策の意図を書かせた」とは明言されていません。

⑤正答です。ワシントンがハミルトンを登用したことと、【文章Ⅱ】で「君主一人では限界があるので、賢者の知恵を借りるべきだ」とされていることが共通しています。

読解後のつれづれ

なんか追試って厄介ですね。設問の意図が判然としないものや、うまく消去法的に解けない(てんで違う選択肢が多い)設問が含まれていた感覚がありました。

漢文といえば古典中国語なイメージがあるかと思いますが、今回は江戸末期の文章ですから、ワシントンが既に過去の人として描かれていますね。わざわざ漢文で書かんでも……というのが皆さんの感想かもしれませんが、こういうパターンもあるのね〜と皆さんの漢文世界が広がるのであれば、問いた甲斐もあるというものでしょう。笑 今回もお疲れ様でした!

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