このページは、2024年度大学入試共通テスト本試験 国語 大問2(小説)の解説です。
この年度の全体概説を見ておきたい方はこちら
解説
選択肢の吟味において、「×・△・?」を選択肢の該当箇所に付けていきます。×は「これはちゃうやろ」、△は「ちゃうかもしれん」、?は「びっみょ〜」って感じです。
問1
(ア)正答④
間違えました〜! これはすみません。ちゃんと辞書的な意味を厳密に知りませんでしたとしか言えません。
「落ちぶれた」「惨めな」といった意味だそうです。私は「みすぼらしく」に関して、そこまで行くかなぁと思って外してしまいましたが、辞書的な意味からして④以外は選べないという感じです。
(イ)正答④
「もっともらしい」の「もっとも」は、「彼が怒るのももっともだ」のような「当然だ」といった意味合いのものです。①とちょっと迷いましたが、「悪びれず」はやや離れるかなと思い、④を選びました。
(ウ)正答②
「やにわに」は「時間をかけないで一気に」という意味です。これも知っているかどうかという感じです。
問2 正答①
そんなに難しくないかと思います。「子どもたちは的外れなせりふを連発するが、おばがいる限り世界は崩れなかった」とあるので、おばによって、子どもたちの的外れなセリフも帳尻合わせが行われ、ままごとの世界を進めることができていたのだろうと推測できます。
選択肢の吟味
①正答です。「雰囲気によって」としてあり、具体性も低くいい感じです。
②「参加者全員を夢中にさせるほどの完成度に達していた」が△です。「世界が崩壊しない」は「完成度が高い」とまでは言えないかと思われます。
③「子どもたちに退屈させない劇になっていた」が△です。「子どもたちが退屈しない」が主眼ではないと思います。
④「奇抜なふるまいを子どもたちに求めるものだった」が△です。設定を詳しく説明されておらず、また設定自体もやや難しいものだったので、子どもたちは「的外れなせりふを連発」しますが、おばが「奇抜なふるまいを求めた」とは言えません。
⑤「おばが状況に合わせて話の筋をつくりかえることで、子どもたちが楽しんで参加できる物語になっていた」が?です。「世界は崩れなかった」との不一致もそうですが、おばが具体的に話の筋をつくりかえていたかは明瞭ではありません。
問3 正答④
前後のイチナと友人のセリフから、正答となる内容を推測するとともに、述べられていない内容を含むものを外していきましょう。
傍線部Bの少し前(二十九行目)で、イチナは友人に「おばさんと話すのは億劫?」と聞いています。これは、友人が「結構です」と言い、イチナが「拭いきれていない沈黙」(おそらく、何らかの違和感や口ごもっている印象)が交じっているように感じたため、友人がおばさんに対してどう思っているのかを問うものです。
それに対して、友人は(別におばさんのことを嫌がっているわけじゃないんだけど、でもこれ言っていいのかわからないんだけど、、、という思いで)おばさんと同居していたことを話し、まぁ〜もう言っちゃったし、おばさんのこと嫌がってるわけじゃないことはイチナにわかってもらえただろうし、という気分になったのかと思います。
選択肢の吟味
①「同居していたことをおばに口止めされていた友人」が×です。「これ言っていいのかな」と言っていますので、おそらく「言っちゃダメ」とは言われていません。
②「イチナに隠し事をしている罪悪感に耐えきれず」が△です。友人が「罪悪感に耐え」ているような心理描写がなく、根拠薄弱です。
③「おばと親密になった友人」が△です。おばと友人は同居していた時期はありますが、結局「なぜかはっきり思い出せない」共同生活になっており、関係が親密になったとは言えません。
④正答です。
⑤「おばと同居していたことをイチナには隠そうとしていた友人は、おばがイチナにうっかり話してしまうことを懸念して」が△です。そのような意図・懸念の根拠となる記述がありません。
—–スポンサーリンク—–
————————
問4 正答②
糸屑を拾うイチナの描写が注目されるのは以下の二点です。
①友人から、おばと同居してきたことを明かされて、「空いている方の手で絨毯の上の糸屑を拾っていたイチナの動きが止まる」
②(おばの呼称に関する次の話題に移ったため)「イチナは狼狽を引きずったまま再び手を動かし始める」
基本的には、びっくりして手が止まり(①)、うろたえを引きずりながらも再び手を動かし始める(②)という理解です。あとは本文記述から推測できない心情を含んでいる選択肢を外していきましょう。
選択肢の吟味
①「自分とおばの関係に他人が割り込んでくることの衝撃をなんとか押さえようとするイチナの内面」が△です。友人とおばが同居していたことを知って「マジかよ」とは思っているかと思いますが、「自分とおばの関係の間に他人が入ってくる!」という驚きではないと思います。
②正答です。「揺さぶられるイチナの心のありよう」としており、まぁ〜いい具合にボカしていて良いと思います。
③「おばの居候生活を厚かましく迷惑なものと捉えていた見方」が△です。イチナがおばとの同居を「厚かましく迷惑なもの」と捉えていたとは読み取れません。
④「友人とおばの関係が親密であった」が△です。問三の選択肢の吟味③と同様です。また、「現在とは違いおばに懐いていた頃を思い返すイチナの物寂しい思い」も△です。この場面でイチナが過去のことを思い返しているかは不明です。
⑤「おばに対して同じ思いを抱いていたことにあらためて気づいたイチナ」が?です。この時点でイチナがそこまで込み入った理解をしているかはかなり微妙です。この時点では「マジかよ」くらいかと思います。
問5 正答②
「私はごまかされたくない」ということは、他の人はおばにごまかされてしまっているということになります。例えば、同居したのに共同生活のことをあまり思い出せない友人、(わかめの戻し方にも厳しいくらいの)母がおばの居候を許していることなど。これをイチナは、おばの「果てのなさに途中で追いつけなくなってしまう」と表現します。これは、六十二行目の「おばは、どこからどこまでがおばなのかよくわからない様子があった。氷山の一角みたいに」という表現から繋がるものかと思います。
これらを踏まえて、イチナはこのおばの果てのなさに置いてけぼりにされることなく、おばという存在をしっかり見定めたいと思っていると理解できます。
選択肢の吟味
①「自分だけは迷惑なものとして追及し続けたい」が△です。さすがにおばの迷惑さを責めたいという話ではないでしょう……笑
②正答です。
③「自分だけはおばを観察することによって記憶にとどめておきたい」が△です。「観察日記でも付けない限り、おばとの生活を記憶できない」とは読めますが、イチナが具体的にそれをしたいと言っているわけではないと思います。
④「自分だけは個々の言動からおばの本心を解き明かして理解したい」が?です。やや悩みましたが、②に比べてちょっとおばの内面に寄せ過ぎな気がします。正直「おばの内面」はイチナにとってもまだまだ距離がありそうで、とりあえずイチナがここで目指しているのは「おばの有り様」をちゃんと掴むということなのかなと。
⑤「おばの居候生活の理由は隠し通されてきたが、〜観察を通して明らかにしたい」が△です。「おばの居候生活の理由」のみに焦点を絞るのは、傍線部前の内容からして適切ではありません。
問6 正答②
適当でないものを選ぶので、適当でない②だけを解説します。
選択肢の吟味
①、③〜⑤適切です。
②「子どもたちの意識が徐々に変化していく様子が表現されている」が△です。遊具の影の動きは、正直なところ「日がだんだんと暮れていく」ことを表しているくらいで、ここに「子どもたちの意識」を込めていると読むことは難しいかと思います。
問7(i) 正答④
Yから絞っていくのがやりやすいかと思いました。教師の説明にもあるように【資料】では、「我々は普段、己の枠を持たずに生活している」ため、「〈私〉を枠付けたいという欲求」を持っているとされます。しかし、イチナからしておばは、その有り様の全容を掴めないことから、そのような「枠」を持とうとする様子が見えないと感じられます。Yを「己れの枠を持たずに生活し」にしてしまうと、おばにそのような様子が見られないということになってしまうので、本文の内容と乖離してしまいます。
選択肢の吟味
上述の解説に代えさせていただきます。
問7(ii) 正答③
「おばは様々な役になりきることで自分であることから離れている」というイチナの理解から、【資料】において人が持つとされる「〈私〉を枠付けたいという欲求」を、おばはそれほど持っていないと捉えられます。
その方向性に合う①と③で結構悩みましたが、まぁ③の方が無難でした。詳しく見ていきましょう。
選択肢の吟味
①「演技を通して『枠』を隠し」を微妙に△にしました。おばの戦略は「枠を隠す」というよりは、「その時その場合に応じて多様な枠を自分の表面に据え付ける」という感じかと思ったためです。これはイチナの「演じるごとに役柄に自分をあけ払う」(六十九行目)という理解を踏まえたものです。
②「内容を常に更新しながらその欲求を実現している」が△です。「〈私〉を枠付けたいという欲求」をおばが持っているように見えることになってしまいます。
③正答です。上述の通り、私の理解は「その時その場合に応じて多様な枠を自分の表面に据え付ける」なのですが、これに一番近いかなというのが③かと。
④「『自分になりたい』という『欲求』に基づいて」が△です。これまた「〈私〉を枠付けたいという欲求」をおばが持っているように見えることになってしまいます。
読解後のつれづれ
良〜い文章だったなぁ〜と感じています。五十八行目以降の、おばに対するイチナの分析と言語化がとても好きです。また、おばの「私の肉体は家だから」という比喩もなかなか感覚的で、それをイチナが「演じるごとに役柄に自分をあけ払う」と理解するのすげ〜なぁ〜と思いました。
もちろん入試問題だから読んでるわけですが、こういう風に文章を通して別の人間を体験することができるというのも、国語を学ぶ時間の中では必要な要素なんじゃないかなとかねてより思っております。入試はそんな余裕ないと思いますが、授業の国語とか過去問を解いた後とかに、ふとそういうところもあったなぁと思ってくださると、私としてはこの上ないことです。ではではお疲れ様でした!




