共テ小話 Vol.1「えまねびやらず」の意味を解説(2021本試 古文問1(ア))

「共テ小話」は、共通テストの中でつまづきやすい語句問題を詳しく解説しつつ、ちょっとした言葉のお話をするコーナーです。

目次

「えまねびやらず」とは

品詞分解

「えまねびやらず」は「え/まねび/やら/ず」もしくは「え/まねびやら/ず」と品詞分解できます。

前者は「まねびやら」を「まねぶ」と「やる」という二つの動詞として捉えたもので、後者は「まねびやら」を「まねびやる」という複合動詞として捉えたものです。

解釈

「え〜ず(打消)」が入っているので「〜できない」という不可能の意味が含まれます。

「まねぶ」は「学ぶ、真似をする」が核となる意味ですが、「写し取る」「写して表す」といったように、「表現する」に近い意味もあります。

「やる」は「遣る」なので、ぽーんと投げかける、相手の方に送り出すといった意味合いです。

これらを踏まえて、「まねびやる」と複合動詞として捉える場合は、「表現して(相手に)見せる」「映し取って相手に見せる」といった感じになりそうです。

選択肢の吟味

①信じてあげることができない
②かつて経験したことがない
③とても真似のしようがない
④表現しつくすことはできない
⑤決して忘れることはできない
→正答④

概ねの解釈より、③と④に絞られるのではないでしょうか。実はこの設問、私も初めて解いたときに③を選んで間違えました。

③は「できない」要素が薄めですが、「〜しようがない」は「できない」に近いかと思い、「え〜打消」は耐えかな〜と。

「まねぶ」を「真似する」とそのまま取るか、迂言的に「表現する」と取るかは、文脈としてどちらが適当かによるものかと思います。

傍線部前の場面は、長家の妻が亡くなり、亡骸を運ぶ車の後に「大納言殿、中納言殿、さるべき人々」がお歩きになっているという記述です。普通、このような行列ができる際に、大納言といった高貴な身分の人々が外を自分の足で「歩く」ことはほとんどありません。長家の妻の死はそれほど嘆かれていたということで、このような悲しみの様子を「いへばおろかにて、えまねびやらず(言っても言い尽くせず、表現しあげることができない)」と述べています。

ことばのお話

「え〜打消」は「〜できない」と訳すことを覚えているかと思いますが、この「え」は「得(る)」と理解するとわかりやすいと思います。現代語でも「〜しえない(〜し得ない)」という表現があると思いますが、これも概ね「できない」ですよね。

「○○や〜(連体形)」といった疑問・反語の係り結びもそうですが、現代語では文末に疑問の助詞を一つ配置すればOKな疑問文も、古語では疑問の係助詞を文中に配置するとともに、文末で係り結びを起こすという二つの操作が必要でした。「え〜打消」も、古語では二つのパーツが分かれていますが、現代語では「〜えない」と後ろの方に一つでまとめられています。これは何かしら同じ言語変化なような気もしますね。

そんな変化に思いを馳せたところで、今回はこの辺で。またお会いできればと思います。

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