東京大学 2023[三]解答例と解説

目次

総評

全体的にわけわかんね〜って思いながら読んでました(すんません)。漢文は文意が取れない場合、前後の辛うじてわかる箇所から解釈の穴を埋めていくようなイメージで何度も読み直すという形で理解しようとしていくのですが、今回はどんだけ読んでもイマイチ腑に落ちる理解ができず、なかなか苦しい解答となりました。正直なところ時間内で受験生が理解し切れる本文とも思えず、割と捨て問寄りの大問なのではないかなと感じます。

解答例と解説

(一)

b これまでの史的言及はこのことを褒め称え
c はっきりと言葉を述べて
d 時の君主の治世を補佐する

b 設問指示は(「説明せよ」ではなく)「平易な現代語に訳せ」なので、「之」という指示語の中身を説明する必要はありません。無理やり直訳すると「これまでの歴史はこれを美しいとし」という感じですが、意訳して「これまでの歴史的言及はこのことを褒め称え」としています。ちなみに「之」は「このこと」と訳していますが、その中身としては「何曽が、自分の子の代までは武帝の治世が保つだろうが、孫の代までは保たないだろうと、先を見通した発言をして、それは的中していたこと」というような感じです。これを、何曽に先見の明があるとして、後の史的言及は褒め称えたということです(が、李世民はそう思ってはいないというのが課題文の後半です)。

c・d それぞれの字の意味合いから推測するより他ないかな〜と思います。文脈としては、李世民の考えとして、「人臣(としての何曽)」が本来果たすべきであることについて述べられている箇所で、「当(まさ)に辞を直し正諫し、道を論じて時を佐すべし」という感じです。それぞれの読み方は正直ちょっとわかりません……。「辞を直し」の「辞」は「言葉」のような意味があります(「謝辞」や「送辞」などの「辞」)し、「直」は「まっすぐ」のような意味合いのため、「言葉をはっきりとさせて」というようにしています。「辞」は動詞の場合「辞職」のように「辞める」という意味になりやすい気がしますが、今回は「直」という動詞の下にあり、目的語になっているような印象なのて、「言葉」という名詞として扱っています。dの「時を佐し」は「補佐」という言葉から捻り出しています。「時の為政者を補佐すべき」という感じです。全体的には、「(何曽を含め)人臣としては、はっきりと言葉を伝えて君主を諌め質し、道理を論じて時の治世を補佐し支えるべきだ(何曽はそれをしていなかったので、私は批判的だ)」という感じです!

部分点

b 〈これまでの史的言及は〉〈このことを褒め称え〉
c 〈はっきりと〉〈言葉を述べて〉
d 〈時の君主の治世〉を〈補佐する〉

漢字一文字に一つの部分点を振っているだけなので、そんなに意味はないかもしれません。笑 必ずしもこの書き方に倣う必要もなく、同様の文脈として捉えられていて、それをアピールできる訳出の仕方ができていれば大丈夫かと思います!

(二)

息子である劭よ、お前の身はちょうど難を免れることができるだろう

ここも正直なところ全然読み取れませんでした。何曽は多分息子に語りかけていそうな感じはしていたのですが、「免」が一体何を免れることを指しているのか全然分からず……。おそらくその直前の「此厥の子孫に貽(のこ)す者に非ざるなり」がよく分かっていなかったことによるものかと思います。ここは「私(=何曽)が主君(である武帝)と対面しても、国を治める議論にはならず、普通のことばかりを話しているので、(このような主君であれば)国はその子孫にまで残るものにはならないだろう、お前まではちょうど大丈夫だろうが、孫の綏の代になれば、必ず政乱に巻き込まれて死ぬだろう」という感じです。確かに無責任やなぁ。

訓読すると「爾が身は猶ほ以て免ずべし」とかでしょうか。「可以」は現代中国語でも「〜できる」を示すので、個人的には訓点で分けないほうが読み取りやすいのではないかと思いました(「爾が身は猶ほ可以(できる)免ず」のような感じで、単に「お前の身はちょうど免ずることができる」という)。訓読点は後で日本人が付けてるだけですからね。

「厥の(その)」になんか特別な意味でもあるんかなぁと思って調べてみましたが、これは普通にただの指示語でした。

部分点

〈息子である劭よ〉、〈お前の身は〈ちょうど〉難を免れる〉〈ことができる〉だろう

「爾」が息子であること、「猶ほ」の訳出、「免」の訳出、「可(以)」の訳出がそれぞれできていればいい感じです。

—–スポンサーリンク—–

————————

(三)

何曽が朝廷の位を辞した後になって、武帝の治世が長続きしないだろうと言った発言。

本文全体の大意にも関わりますが、李世民は何曽のことを良く評価しているわけではありません。李世民としては、人臣(君主に仕える臣下)であるならば、君主の誤りを質し、長所を助けるべきであるのに、何曽は高い位にありながらそれをせず、後になって「武帝の治世は長くは保たないだろう」みたいなことを言うのは無責任なことだと言っています。「後言」はあまり現代語で使う言葉ではないと思いますが、「後ろ指を指される」という表現や、「裏でコソコソなんやら言う」みたいなイメージから推測して考えました。臣下としての責任を果たさないで、後になって朝廷を去ってからそのような発言をしていたのを「先見の明がある」のように言うのはおかしいだろう、というのが李世民の主張です。

設問指示が「誰のどのような発言を指すか」なのですが、本文中で発言しているのは何曽くらいしかいないので、そこから考えていくのもいいかもしれません。

部分点

〈何曽が〉〈朝廷の位を辞した後になって〉、〈武帝の治世が長続きしないだろうと言った〉発言。

おそらく該当箇所が何曽の発言を指しているというのはほぼ他に余地もないので、あまり大きな部分点にはならない気がします。

「朝廷の位を辞した後になって」は、「今乃ち退きては」に相当します。「今」とは言っていますが、「李世民がこの発言をしている時点で」というよりは、「後になって位を辞して」のように理解しています。李世民の時代が何曽の時代よりも後であることは確かですが、どれくらい離れているのか私は知りませんで(すみません)、ただ傍線部bに「前史之を美とし(これまでの史的言及は何曽の発言を先見の明があるとして高評価し)」とあるので、そんなに近いわけではないのかな〜と考えました。

(四)

臣下は自分が仕える国が倒れないよう、君主を質し補佐しなければならないということ。

李世民の主張としては一貫していますので、ここまでの設問で触れてきた内容を踏まえれば理解しやすいかと思います。傍線部を直訳すると「国が倒れてしまってそれを助けないのであれば、どうしてその国を支える者を重用できるだろうか、いやそんなことはできない」のような感じかと思います。李世民は君主側の立場なので、「そんな者は(臣下として)用いることはできない」と言うことで、何曽の評価を下しています。

設問指示に「本文の趣旨を踏まえて」とありますので、「何曽のような態度は良くない」という傍線部の直訳的な書き方よりは、「そうではなく、臣下たるものこうあるべきだ」というここまでの主張を取り込みつつ説明した方が良いかと思い、その結果が解答例になっています。

部分点

〈臣下は自分が仕える国が倒れないよう〉、〈君主を質し補佐しなければならない〉ということ。

「自分が仕える国が倒れないよう」が「顚れて扶けずんば」から取っていますが、上述の通り「臣下ならこうするべきだ」という書き方をしています。「君主を質し補佐しなければならない」は傍線部cやdの箇所から取り出していますが、李世民の主張をちゃんと捉えられていれば概ね大丈夫かと思います。設問指示に応えるための内容です。

読解後のつれづれ

設問としてはひねくれた感じではなかったのかもしれませんが、なにぶん本文を理解することがなかなかできませんでした。絶妙に大事なところが省略されていたりしていて、文意を確定させながら読み進めることがなんともできません。かなりタフな大問だったように思います。短い本文ではありますが、大問一や二の方が手がつきやすいと思いますので、もし本番だったら……という解答戦略的なことも考えてみてください。

李世民の一人称が「朕」なので、いかにも君主〜って感じですね! それくらいしか雑談することがありませんでした。すみません。今回もお疲れ様でした!

この年の他の大問の解説

役に立ったらお友達にシェアしてね
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次