センター試験(共通テスト)国語 2020本試[3(古文)]解説

目次

解説

ご留意
選択肢の吟味において、「×・△・?」を選択肢の該当箇所に付けていきます。×は「これはちゃうやろ」、△は「ちゃうかもしれん」、?は「びっみょ〜」って感じです。結局は△と?がついた箇所の吟味となることがほとんどです。
あと、私が解答作成前に解いて間違えたところは正直に言います(かなしいけど)。ちょっとご参考にください。

問1

(ア) 正答③

「ゆかし」「見たい、聞きたい、知りたい」気持ちを表します。また、「おぼしめす」は尊敬語なので「お思いになる」と訳出しているものが適切です。

(イ) 正答②

間違えました〜これはいかん。私は⑤を選びました。

現代語の「やおら」も同じ意味らしいので、ちゃんと覚えた方がいいですね……。「やおら」は「徐に(おもむろに)」と同じく「静かに」「ゆっくりと」を意味する語です。「徐に」と同じ字で「徐ら(やおら)」と書くこともできるようです。文化庁によると、「急に」「いきなり」という意味だと思っている人が一定度いるとのことです(文化庁のソースがリンク切れになっていました……)。

根本的に「誤用」の線引きは難しいものですが、ミスコミニュケーションを生まないよう、一定度の規範性はあって良いのかなと思います。誤用例とともに覚えておくと、さらにコミニュケーション上の誤解を避ける力は付きそうですね。

(ウ) 正答④

品詞分解すると「重なれ/る/あはひ」です。真ん中の「る」は完了・存続の助動詞「り」の連体形です。「り」は、サ変の未然形「せ」と四段活用動詞の已然形「エ段音」に後続しますので、「エ段音+り・る」なら完了・存続の「り」である可能性が高くなります。よって「重なっている」となります。

「あはひ」は「色合い」となっていますが、「色の合わせ、重なり」のような意味合いかと思います。「御衣に、直衣はかなく重なれるあはひ」なので、服を重ね着している色の合わせがとても美しいという描写になります。

問2 正答①

aから順番に見ていきましょう。

aは、(兵衛督を遣わせて)宮が宰相の女房に「庵に入って会えるか」聞いたところ、宰相が驚いて準備し、宮を庵の中に入れる描写です。「奉る」は謙譲語の補助動詞なので、敬意の対象は目的語(対象)となり、「宰相が宮を(庵に)入れ申し上げる」のため、敬意の対象は(筆者→)宮です。よって④・⑤は×です。

bは宮の台詞の中にあります(台詞は「うち笑み給ひて、」に続くので、主語は敬語が使われる対象=宮です)。「ものし給ふ」の「ものす」は「なんかする」「アレする」みたいな感じなので、割といろんな動詞の代用・婉曲表現になります(死ぬとかもいけます)。傍線部前後の訳出は「今回訪ね申し上げたところ、(宰相が)この辺りにアレしなさっていると聞いて、ここまで分け入りました心遣い、斟酌なさってくださいよ」みたいな感じでしょう。「アレする」で仮置きした「ものす」は「通う」「過ごす」などかと思います。ここでの「給ふ」は尊敬語なので、「ものす」主体への敬意(宮→宰相)です。よって③も×です。ここでは宮が宰相に対して敬語を使っていますが、相対的に偉い人が、偉くない人に敬語を使うことは十分あります。偉い人から偉くない人への気遣いの表現、所作の上品さの印象付け、はたまた皮肉などの効果がありそうですね。

cは先ほどの宮の台詞に対する宰相の台詞中です。「侍り」は謙譲語の意味合いもありますが、大体は丁寧語です(今回の「侍り」もおそらく丁寧語なんじゃないかな〜と思います)。よって、敬意の対象は話者が対面している人になり、(宰相→)宮です。これで①が正答となります。

一応dですが、「かうかうの仰せ言こそ侍れ」は「こうこうのお言葉がありましたよ」という感じで、宰相が老いた尼上に向かって、宮の言葉を伝えたものになります。「聞こゆ」は謙譲語ですので、敬意の対象は(筆者→)老い人(=尼上)です。ということでやはり①で大丈夫です。

選択肢の吟味

上記に代えて割愛します。

問3 正答③

やや解釈が難しいですが、記述をしっかり押さえられていればなんとかなるかと思います。傍線部Aの直前に、「このかたは心にとどまることなれば」とあるので、「このかた(この様子、この状態)が心に残ったので」という根拠になります。「このかた」はすぐ前の記述を含み、尼上の庵の様子と「このかたのいとなみも、この世にてもつれづれならず、後の世はまたいと頼もしきぞかし(この場所での営み(仏事)も、この世でも退靴なことはなく、来世でもとても頼りになることよ)」という内容が指されています。よって③が正答です。

選択肢の吟味

①・②・④・⑤は、誤りが含まれているというよりは、上述した「このかた」の内容を捉えられていないため×です。

問4 正答⑤

「つてならでこそ申すべく侍るに」は「人伝いではなく申し上げるべきでございますのに」というような意味合いです。「つて」は「○○さんのツテで」というような時の「伝手(つて)」ですね。本来であれば直接申し上げるべきなのに、と尼上が言っていることになります。傍線部Bが含まれる尼上の台詞の中をしっかり解釈できていれば難しくはありません。

選択肢の吟味

①「直接自分が姫君と宮の仲を取り持って、二人をお引き合わせ申し上げるべきだ」が△です。宮は姫君目当てで来たということはひとまず隠していますし、尼上も姫君と宮の関係の話はしていません。

②「この折に姫君のことを直接ご相談申し上げたい」が△です。同上で、尼上は姫君の話をしていません。

③「宮から多大な援助をいただけることはもったいない」が△です。宮は、尼上のことを気遣う言葉は述べていますが、「援助をする」とは言っていません。

④「仏道について直接お教え申し上げたかった」が△です。尼上が宮に仏道の話をするというような内容はありません。

⑤正答です。傍線部前で、自分のような年老いた者のために宮が来訪してくれたことへのお礼と恐縮が述べられています。

問5 正答②

傍線部Cの少し前で、女房たちが宮に対して「『世にはかかる人もおはしましけり』とめでまどひあへり(『この世にも、このような人がいらっしゃったのだなぁ』と見惚れ心乱れていた)」と、「げに、姫君に並べまほしく(本当に、姫君の横に並べたくて)」から判断できます。おそらく美しい姫君の横に、美しい宮を並んで座らせたい!という、「美しい人と美しい人が横に並べば眼福」という感じですね。ここでいう「並べる」は比喩的で、結婚すると言って良いでしょう。平安時代は「(直接)会う=結婚」ですからね。

選択肢の吟味

①「普段から上質な衣装は見慣れているが」が△です。衣装の話ではなく、人の話だと思いますが、「わろきだに見ならはぬ心地なるに(まぁまぁな人でさえ見慣れていない状態であるので)」とあり、山里の庵にはあまり高貴で美しい人間が来ないことがわかります。ならば衣装も同じでしょう。

②正答です。「並ぶ」を「結婚する」としている点で惑わせてきます。

③「姫君が宮を見たらきっと驚くだろうと想像して心おどらせている」が△です。人々が姫君のことを推察している記述はありません。

④「姫君とそろって出家するように仕向けることができた」が△です。姫君が出家しようとしているのかなどは不明ですし、女房たちにそのような意図があったとは読み取れません。

⑤「このような素晴らしい宮が釣り合うはずがないとあきれている」が×です。「姫君に並べまほしく」に合いません。

問6 正答⑤

文章全体に関わる問題です。本文内容との齟齬を見つけて外していきましょう。

選択肢の吟味

①「葦垣のすきまから仏事にいそしむ美しい女性の姿を見た」が×です。本文冒頭から終わりまで、姫君は登場しておらず、宮と宰相、尼上、女房といった人々のやり取りの中で姫君の様子が伺えるまでです。

②「宰相は、兵衛督を呼んで」が×です。兵衛督は宮のお供であり、宮の伝言を宰相に伝えに行きました。

③「尼上は、宰相を通じて自分の亡き後のことを宮に頼んだ」が△です。尼上は、宮の来訪を非常に光栄なことと畏れ謹みましたが、姫君の後見の依頼といった内容は記述されていません。

④「宮はこの静かな山里で出家し、姫君とともに暮らしたいと思うようになった」が△です。何回も言ってますが、別に誰も出家したいとかさせたいとか言ってないですってば。

⑤正答です。「姫君に引き合わせてほしい」は、最後に宮が宰相に言い残した「かまへて、かひあるさまに聞こえなし給へ(しっかりと準備・根回しをして、私が今日来た意味があったようにしつらえなさってください(=姫君との今後の関係が進むように手筈してください))」からわかります。

読解後のつれづれ

宮、結構横暴な感じもありますが、はちゃめちゃにイケメンで高貴で服のセンスも良いって感じですね。当時はそれで許されます。

今回の本文は情景描写が美しくございました。雲林院の外側や葦垣からの覗き見の様子もそうですが、宮の容貌を表した「山の端より月の光のかかやき出でたるやうなる御有様」はすっげ〜褒めてますね。これも比喩の力でしょうか。

比喩表現があると、今の我々も昔の情景を(喩え先というフィルターを通して)見やすくなります。今ではイメージのつかない比喩も多いですが、なんとか積極的に捉えていきたいものです。

それでは、今回もお疲れ様でした!

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