センター試験(共通テスト)国語 2020本試[4(漢文)]解説

目次

解説

選択肢の吟味において、「×・△・?」を選択肢の該当箇所に付けていきます。×は「これはちゃうやろ」、△は「ちゃうかもしれん」、?は「びっみょ〜」って感じです。

問1

(ア) 正答

「倶」は文脈無しでも「ともに」が最初に出てきてほしい漢字です。「倶楽部(くらぶ)」は「ともにたのしむ部」ですもんね。

文脈としても、「木こりと隠者は(ともに)山にいるけれど、理由やする事は同じではない」というように通ります。傍線部Aにも関わるので、知っておきたい知識レベルの漢字です。

(イ) 正答③

これも暗記レベルの問題です。「多寡(たか)」という熟語で使うことが多い字で、「多いと少ない」です。「寡少」という熟語にすれば、「少ないと少ない」です。「僅少」とかに近いでしょうか。

問2 正答②

返り点の問題は漢文法の知識と、出来るものの文脈が通るかの両方からの検証が必要なため、私もいつも緊張します。

前半の「由来事不同」は、「同じからず」と読むか「同じうせず」と読むか以外は同じですね。これは「同」を「同じ」という形容詞として扱うか、「同じうす」という動詞として扱うかという違いですが、「同じうせず」って漢文としてあんまり見たことないな〜って思い、ここでは決めきれませんが③〜⑤は違和感、という感じです(ていうか、①も後半に「同じうせず」があるので、これで決め切ると②が残って結果的に正解になります)。

また後半ですが、漢文は(現代中国語と同じく)「主語→述語→目的語」という順番が基本です。そして、否定語(不・非など)はすぐ下のカタマリ(字・句)を否定します。この原則からして「同じからざるは(主語)一事に非ず(述語)」となっている②が最も漢文らしい構造になっています。

②で仮置きして文脈の検証をすると、本文冒頭から、「木こりと隠者はともに山にいるけれど、(山にいる)理由や(山で)する事は同じではないし、同じでないことは一つではない」となり、なんか木こりと隠者は違うよ〜って話でまとまります。

選択肢の吟味

②以外はいろいろ変な感じなので、上述のプロセス解説に代えさせていただきます。

問3 正答

割と簡単です! 合わせたい!

とりあえず、各図の違いを整理しておくと、「門の位置」「水の確保の仕方」「垣の素材」ですね。

傍線部Bは、「家を建てるにあたって土地の吉凶を占って、北の丘の麓にし、門を構えて南の川に面する。谷川を堰き止めて井戸から水を汲むのに代用し、槿(樹木)を植えて垣を連ねるのに充てる」となりますので、「門の位置」は南、「水の確保」は(井戸ではなく)谷川、「垣」は木となりまして、正答は②です。「門の位置」と「水の確保」だけでも解けますね。

選択肢の吟味

上記解説に代えさせていただきます。

問4 正答①

結構悩みましたが合ってました。観点は二つで、対句と押韻です。

対句の方がおそらく気付きやすく、「群木既羅戸」と「衆山亦対[C]」の対になっています。「木々は戸に連なり、山々はまた[C]に相対する」とかなので、「戸」に対するものになるはずで、②空、③虹、⑤月 は自然物なので外れます。

では①窓 なのか、④門 なのかという話ですが、私もここでしばらく「わかんね〜」ってなっておりました。でも内容的にこの前後と繋がってるわけでもなさそうだし、この一行で解くしかないよな〜と思ってる間は難しく、「五言詩なら押韻あんじゃね」と気づいてからは早かったです。

正直、絶句や律詩といった定型詩に比べて、今回は「五言」という定型性しかないので、どこで押韻するのかという明瞭な判断が私に合ったわけではなく、「絶句とか律詩なら大体偶数句末で押韻するから、これも大体押韻してんじゃね」っていうくらいで見てみると、傍線部Bの辺りからは「江(こう)」「墉(よう)」「峰(ほう)」「功(こう)」と、なんか「オウ」で押韻してそう!な感じがしました。笑

ということで、「オウ」で押韻できている④窓(そう)で正答でした。

選択肢の吟味

上述の解説にて割愛させていただきます。

問5 正答⑤

全体的に?となる選択肢の設問でした。「適当でないもの」を選ぶので、それ以外は適当なはずなのですが、正直①とかかなり怪しくねって思います笑 ただ⑤が確かに一番違うかな〜と思いました。

選択肢の吟味

①最終的に正答ではない(=適切である)のですが、割と無理があるな〜と思っていました。「『靡迤(びい)』という音の響きの近い語の連続」とあります(ここでいう「語」は漢字一字単位を指しています)が、「音の響きの近い語の連続」が「動作とつながる」ことで、「田園風景がどこまでも続いていることが強調」できるもんかねぇ…と思ったわけです。この点については、「⑤の方が適切でない」という理由しかないかな〜と思います。まぁ〜かなり良心的に寄せて読んであげたらそう読めないこともないわけではない……ってくらいです(えぇ……)。

②まぁ適切です。田園風景と遠くの山々の追加で、広がりのある空間をセットで見せ、広い田舎の風景を描いています。

③まぁ適切なのかな〜って感じです。①と近いですね。「迢逓(ちょうてい)として」ですが、「ちょう」と「てい」の音の響きは近いのか……という問題はありますが、なんか①とセットで外す理由に少し欠ける印象です。

④まぁ適切です。「下の田んぼ」と「高い山」ですから、垂直方向の広がりは見えやすいですね。水平方向の広がりですが、まぁ〜田んぼは広がってそうですし、それと対句に扱われることで「高峰」も遥かな感じになっているのかもしれません。おそらく。

⑤正答です(=適切ではありません)。「趨く」「瞰る」は確かに対句として構成されていますが、割と「並置」のような扱いを受けています。「田畑を耕作する営み」が「高い山々のように遠くなった」というような、主述を構成する一表現となるほどに連結されているものではありません。①〜④は、「靡迤趨下田」と「迢逓瞰高峰」が対句となり「一つの風景を複数の角度でまとまりよく活写している」というような選択肢でしたが、⑤のみ「下田(の耕作)が高山(のように遠いもの)になった」となっており、①〜④とは異質であり、かつ誤りです。

問6 正答④

この文章全体に関する性質としては、「謝霊運の五言詩」とリード文に書いてあるだけですが、問6の各選択肢から、友人たちに向けた思いも込められているんだな〜ってことがわかります。つまり、友人たちへのメッセージみたいな性質もあるのでしょう。

そのうえで、傍線部Eの前の行から直訳してみると、「ただ蔣詡のように自宅の小道(=門戸)を開き、求仲と羊仲(のような親しい友)の足跡(=来訪)をずっと思慕する。美しい風景を愛でる心を忘れてはならない。この上ない幸福を共にすることができますように」となります。誘ってるよね! なんかカッコよく言ってるけど、「良い景色だからおいでよ」って言ってますよね! ということで正答は④となります。それ以外の選択肢は、本文から読み取れない内容が含まれています。

選択肢の吟味

①「さまざまな見方を教わることがある」が?です。

②「親しい仲間と一緒に眺めても、その評価は決して一致しない」が?です。

③「その苦心が報われるもの」が?です。「我が家のことを皆に伝えてください」もよくわかりません。

④正答です。

⑤「親しい仲間と一緒に眺めないと、永遠に称賛されることはない」が△です。

読解後のつれづれ

本文がすべて漢詩ということで、最初はうわっと思った人もいたかもしれませんが、なかなか読みやすい文章だったのではないでしょうか。

漢詩は和歌と同じく、「定型」の縛りがあります。ゆえに、筆者は一字一字をかなり大切にし、自分の言いたいことを定型に収めるために腐心します。よって、普通の文章よりも、詩の方が丁寧に書かれていることが多くなります。その点で難解な場合もありますが、詩だからと言ってすぐに難解だと決めつけない方がいいかもしれませんね。

それでは、今回もお疲れ様でした!

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